寝落ちの合図
──寝たら即死のバトルロワイヤル。
毎晩、数百人が「夢のバトルロワイヤル」に強制参加。
死ねば現実でも死。
クリアすれば強制的な目覚め。
──寝るのが怖い、毎日のサバイバル。
――ピピピピ。
目覚ましを止める。
俺は霧島 零。
夢喰いロワイヤル、参加歴半年の男だ。
時計は23:47。
今日は早めに寝ることにした。
なぜって?
寝落ちしたら即スタートだからだ。
「ふぅ……」
ベッドに入り、スマホを開く。
累計クリア数:182回
生存率:99.8%
倒した敵:943体
――目を閉じる。
意識が落ちる。
夢のバトルフィールドへ。
目の前は、廃墟と化したショッピングモール。
時間の感覚は現実と無関係。
何時間戦っても、現実ではアラームと同時に目覚める。
【システムログ】
本日の参加者:487名
本日のクエスト:担当エリア「中央広場」の蜘蛛の群れを全滅させろ
クリア条件:最後の1体を倒す
失敗条件:死
報酬:強制目覚め
「また蜘蛛か……」
参加者数は毎回変動する。
死んだ奴らと、新規が混ざってるんだろう。
蜘蛛の弱点は複眼。
1発で潰せば即死。
【システムメッセージ】
スキルスロット:3/3(フル解放)
・戦闘記憶(予測率80%)
・血の刻印(詳細不明)
・影刃生成
「よし、いくか」
中央広場に、蜘蛛の群れが出現。
大小合わせて50体。
俺の担当エリアだ。
――来た。
1体が跳躍。
俺は横に滑る。
同時に、影刃で複眼を貫く。
1キル。
背後から2体。
振り返らずに後ろ手で斬る。
2キル。
「次……」
10体、20体、30体。
戦闘記憶が頭に浮かぶ。
過去の蜘蛛の動きが線のように見える。
その線を外して斬る。
40キル。
【システムログ】
残敵:10
夢喰い接近:残り5分
――だが。
【警告】
異常個体検出
名称:夢喰いの使徒
特徴:人間型、蜘蛛の下半身
モールの天井が割れ、人影が降ってきた。
白い髪。黒い瞳。
下半身は蜘蛛の8本脚。
「お前が……霧島 零か」
声は、無機質だ。
「累計182回クリア。
生存率99.8%。
……記録、更新してやる」
使徒の手に、黒い糸が無数に広がる。
戦闘記憶が、エラーを吐く。
「予測不能……」
――まずい。
糸が、俺の足を縛る。
蜘蛛の群れが、一斉に襲いかかる。
俺は糸を影刃で切断。
蜘蛛の攻撃を紙一重でかわす。
使徒の複眼を捉える。
「そこだ」
俺は全速力で突進。
使徒の複眼に、影刃を突き刺す。
使徒が悲鳴を上げる。
「ぐっ……やるな」
残りの蜘蛛が最後の連携。
俺は一気に距離を詰め、
回転しながら影刃を振る。
複眼をまとめて潰す。
最後の攻撃は危なかったな……
新人の頃の俺なら死んでたってとこか。
【システムアナウンス】
『クエストクリア。
担当エリア「中央広場」全滅確認。
強制目覚めを開始します』
世界が白く染まる。
――ピピピピ。
アラームと同時に目が覚める。
時計は06:30。
設定した時間ピッタリ。
夢での戦闘が何時間続いたか、わからない。
スマホを握ると、地図アプリが自動起動。
広大な夢の世界地図。
担当された各エリアが、クリアごとに赤く塗りつぶされていく。
「いずれにせよ、今回で……ようやく半分か」
半年で182エリア。
まだ残りは山ほど。
このバトロワの目的は不明だ。
ただ、地図を埋め尽くすまで、続くんだろう。
第1話いかがでしたか?
半年で182回クリア。
担当エリアの地図は半分。
今宵も目的分からず戦い続ける。




