表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/16

止まった世界で、最初に動いたもの

世界が止まった——その事実に慣れるには、数分どころか一生かかる気がした。

僕は自分の手を見つめる。指先は震えているのに、心臓は不思議なほど冷静だった。


窓の外では、小学生が自転車で立ちこぎをしたまま宙に浮いている。犬は吠える途中で口を開いたまま、風はカーテンを揺らした姿勢で固まっている。

その静寂は、不気味なのに、どこか心地よかった。


「……本当に、俺だけなのか?」


思わず口にした声は、今度はちゃんと耳に届いた。

その瞬間——背後で何かがカチリと動く音がした。


振り返ると、地下室の奥にあったはずの古い時計が、止まった世界の中でただひとつ、針を進めていた。

チ、チ、チ……

まるで僕の存在を数えているかのように。


そして、時計の文字盤に赤い光が走る。

浮かび上がった文字はこう告げていた。


「時間を動かす者には、必ず対となる“監視者”が現れる」


呼吸が詰まる。監視者? 誰だ?

僕の足音だけが地下室に響く。


そのとき、止まっているはずの玄関のドアがコン、コンと叩かれた。

「……え?」


世界が止まっているのに、誰かが——動いている?

心臓が一気に跳ね上がる。


僕は鍵を握りしめ、恐る恐る階段を上がった。

そしてドアを開けた瞬間、目に飛び込んできたのは——


時間が止まった世界で、唯一動いている“もうひとり”の存在だった。



---

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ