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先輩②



「なんでそんな大事な話する時に寝かせるんすか!」

「ごめんね」

「祐樹があまりにも馬鹿だったからだよ」

「誠さん!」


ようやく目を覚ました祐樹くん。

猿でもわかるような丁寧な説明を受け、じゃーラスボス倒せねーじゃーん!とひとしきり騒ぎきったあとである。


「奈々恵さん!俺にスキル使わんでくださいよ!」

「まあまあ、害はないから」

「そういう問題じゃないっす!」


ぐっすりだったよね。

騒いでても全く起きる気配がなかった。


「奈々恵さんのあのスキルすごいですね」

「あら麻酔?眠らせるだけですけどね」

「他にはどんなスキルを使うんですか?」


みんなの力…知りたい!



「せっかくだからみんなでコマンドの共有しようか。できるんでしょ?」


先輩が制服から緩い部屋着のようなものに着替えて2階から降りてきた。黒スキニーに白いシャツ。それだけでもかっこいい。

コマンドの共有ができる事はやっぱり知らなかったようで、目を覚ました祐樹くんが興奮気味に教えていた。


「いいねー!そうしよ!」

「情報共有ですね!」



シャツのボタンを緩めながら再び私の隣に座る先輩。

瀬戸口さんと奈々恵さんはそれぞれの椅子に、祐樹くんは地面にあぐらをかく。

あ、もしかして定位置があるのかな。

私が居る2人がけのソファは先輩の定位置っぽい。

なんか申し訳ないな。私も地面に座ろ。一番年下だし。


慌ててソファを立ち上がる…が

その瞬間、ぐっと先輩に腕を掴まれる。


「どこ行くの?」

「え?あ、いや…地面に座ろうかと…」

「なんで?」


な、なんでって…


「いいんだよ吉田ちゃんは。ここにいて」

「えと…じゃあ…。なんかすみません」

「吉田ちゃんの席はここね」

「あ、はい」


その光景を微笑ましく見ている奈々恵さん。

興味なさそうな祐樹くん。

ただ真顔で先輩を見ている瀬戸口さん。

先輩の隣ってちょっと緊張するな。



「じゃあ俺からね。コマンドの共有」



ーーー


名前   北条楓

種族   人間

年齢   23

スキル  〈結界破りLv.ー〉

     〈シールドLv.50〉

     《剣術Lv.68》

     《疾風Lv.24》

     《辻斬Lv.1》

アイテム 白の剣(黄)Lv80

     風の剣(紫)Lv2

     鏡

     A級ポーション10

     白軍バッジ

     白の兵服

役職   反乱軍Lv.70

弱点   不都合


ーーー



やっぱゲームによくあるやつだよね。

風の剣ってかっこいいな。ちゃんと武器って感じ。

弱点…不都合?そんなの誰でもそうじゃない?


「さすがっす北条さん!またレベル上がってる!新しいスキルも解放されてるじゃないっすか!」

「あれ、風の剣昇級したの?」


瀬戸口さんが興味津々に聞く。


「やっとね。今紫だよ」

「おー!すげぇ!」


武器の昇級…。

やっぱりレベルがカンストすると昇級するんだ。

それにスキルの解放もある…私と一緒だ。



「次俺な!」



ーーー


名前   森本祐樹

種族   人間

年齢   19

スキル  〈打撃Lv.51〉

     《鍛造Lv.40》

     《火炎放射Lv.19》

アイテム ハンマー(緑)Lv.58

     ルドルフの地図

     B級ポーション3

     鍛冶屋のエプロン

役職   反乱軍Lv.28

弱点   計算 寒さ


ーーー



ルドルフさんの地図…読めるのかな。

今度読み方教えてもらお。

っていうか弱点計算って…ぷぷっ。


「何笑ってんだよ吉田」

「別に?」


私も数学は苦手だけど…祐樹くんは弱点に書かれるほどできないのかしら。

おかわいいことっ。



「じゃあ僕の番ね」



ーーー


名前   瀬戸口誠

種族   人間

年齢   24

スキル  〈解析Lv.50〉

     〈工作Lv.45〉

     《発明Lv.21》

アイテム 工具

     自作発明品15

     最新型魔法線鏡

     B級ポーション6

     コック服

役職   反乱軍Lv.38

弱点   動物 虫


ーーー


解析、工作、発明…

すごい。博士じゃん。なんかルンバさんみたい。

戦うためのスキルではなさそうだけど…こういうのもあるんだ。

ん?最新型魔法線鏡?


「え!誠さん最新型にしたんすか!」

「まーねー」

「見せてください!」

「嫌」


祐樹くんが興奮して誠さんの腕を叩く。

鬱陶しそうに払い除けられている。

なんだかアンデとルンバさんのやりとりが連想される。



「はいはい。次は私ですよ」



ーーー


名前   近藤奈々恵

種族   人間

年齢   20

スキル  〈シールドLv.20〉

     〈回復Lv.48〉

     《治癒Lv.10》

     《麻酔Lv.9》

アイテム 救急箱

     鏡

     魔力強化ポーション5

     A級ポーション6

     看護衣

役職   反乱軍Lv.11

弱点   女の子


ーーー



ん?

弱点…女の子?


「弱点が女の子ってどういう事ですか?」

「あ…えっとぉ…」


私の質問にわかりやすく動揺する奈々恵さん。

それを見てニヤニヤする祐樹くん。呆れる瀬戸口さん。


「正確には…可愛い女の子…」


え?

ボソリと言った言葉に耳を疑う。


「私…私……」


俯いた奈々恵さんがジリジリと寄ってくる。

え…な、なに。


「可愛い女の子に滅法弱いのォォ!」

「うわっ!」


ソファに座る私の腰に抱きつく奈々恵さん。

私の足をスリスリと撫で回してくる。

ゾワリとして思わず身体を固める。


「ごめんなさいー!我慢してたんだけどっ吉田ちゃんみたいな可愛い女の子が大好きでぇ!たまに制御効かなくなるのっ!もう本当キュートアグレッションッ!」

「なっ奈々恵さん!?」

「あー可愛いっ!吉田ちゃん超可愛い。茶色い長い髪も白いモチ肌も透き通るようなお目目も素敵ですぅぅっ」


お目目!?



「はいはい。離れようね奈々恵ちゃん」


苦笑いした先輩が私の足元に縋る奈々恵さんの顔を押し返す。


「す、すみません…吉田ちゃん…なるべく私に近寄らないでね…こうなるから」


う、うす…。

心した。



「お待たせ。次は吉田ちゃんだよ」


先輩がにっこり笑いかけてくる。

他のみんなにはさっき見せたけどね。


「はい。コマンドの共有」



ーーー


名前   

種族   不明

年齢   18

スキル  〈掃除Lv95〉

     〈整頓Lv73〉

     《一掃Lv.32》

アイテム 箒(銀)Lv15

     帰還石

     ゾネルビンの酸20

     魔力増加ポーション1

     ニアの葉のミサンガ1

     黒の加護

     作業着

役職   清掃アルバイターLv32

弱点   川 海


ーーー



「わお…レベル高いね」

「まあ、半年もいれば」


目を丸くする先輩と、さっきも見たはずなのにマジマジと食い入るように見つめる瀬戸口さん。


「弱点…川と海?」

「あ、私泳げないんです」

「だっせー」


煽ってくる祐樹くん。

計算よりはマシじゃない…?



「…ん?黒の加護?これはなに?」


先輩が私のコマンドを指差す。


「あー…色々ありまして」

「誰かに加護をつけるって…王族しか使えない能力だよね。小説で主人公がシプトピアの王子にもらってたやつ」


瀬戸口さんが上擦った声で言う。

まあ…その王族につけていただきましたので…


「私、ブラトフォリスの第二王子様がお友達で…その方にいただきました」

「ええっ悪魔族の王子!?」


誰よりもでかい声で驚く瀬戸口さん。

目をキラキラさせている。


「…吉田ちゃんって何者」


先輩も目を丸くして私を見る。


「あ、いや本当に偶然なんです。たまたまキロルくん…あ、第二王子様に会って…それでまあ…」

「いきなり仲良くなったの?」


んーいや…



「実は、小説には書いてなかったので知らないと思うんですけど…悪魔族の王族には鑑定眼というスキルがあるんです」

「鑑定眼?」

「はい。簡単に言うと他人のコマンドを見ることができる能力です」

「何それずる。個人情報筒抜けじゃん」


チート級だよね。

でも最強種族だし、キロルくんのあのおおらかな性格を考えると納得のスキル。


「ご覧の通り私のコマンドはこの世界の人間ではあり得ない情報ばかりです。それで外界人であることがバレてしまったんです」

「外界人?」


私の開きっぱなしのコマンドをもう一度見る先輩。


「種族が不明になってるでしょう?これは外界人ということらしいんです。本当は私も皆さんと同じ転生者なので『人間』表記のはずなんですが…何故か私は不明、つまり外界人と同じなんです」


何故私がみんなと違って『外界人』の表記になっているのかはわからない。キロルくんも転生者が外界人扱いにならないということは知らなかったみたいだし…。

でもとにかく私が普通の人間でないことはこれを見れば一発でわかる。


「それでまあ…なんで外界人がいるの?って感じで話していくうちに…」


いつのまにかこんなに仲良くなってました。



「悪魔族…」

「あ、そう北条さん。吉田が最初に転生した場所ブラトフォリスらしいっすよ」

「ブラトフォリス…」

「はい。だからまあ…ブラトフォリストークで盛り上がったと言いますか…」

「でも仲良くなったってだけで加護つけるかな」


瀬戸口さんが腕を組みながら言う。

まあ…出会ったその日に共闘したからねぇ。

とは言ってもキロルくんの考えていることは私にもよくわからない。



先輩が私のコマンドをじっと見つめ、その視線を私に移す。


「…どうして吉田ちゃんだけ種族が不明なんだろうね」

「それは…どうしてでしょう。私にもさっぱり」


考えること放棄したんだよそれ。

わかるわけないし。



「…外界人か。確かにイーデアでは外界人は見つかり次第極刑。メラオニアの戦争で降伏して、正式にどこかの国民にならないと無断入国扱いになる。割と最近できた法律らしいけどね」


やっぱそうなんだ。

イーデアの兵士さんが言ってるんだからガチ情報だなこれ。


「吉田ちゃんがなんで外界人扱いなのかはわからないけど…確かにこれは誰かにバレるとまずいね」


先輩一応兵士だから今の私思っきしアウトなんだけどね。



「その黒の王子にはバレてるんだよね?大丈夫なの?」

「はい。キロルくんは味方です。私に色々教えてくれましたし、仕事場の人にもバレないように手を貸してくれてます」


この世界の人間はレベルが上がらないことやスキルが使えない事を教えてくれた。

小説にもこの事は書いてあったからここにいるみんなは上手く隠してると思うけど。

私は知らなかったからキロルくんに教えてもらえなければ危なかった。



「キロル…って言うの?」


先輩が低い声でその名を言う。


「はい。キロル・ブラックビル。黒の王族、第二王子です」


「……キロル・ブラックビル」



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