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反乱軍②



赤の城とは反対の方向にある戦場。そこから少し逸れた場所にある、申し訳程度の森…というか林。

通称、赤の森


その中を進んで行くこと少し。木が晴れた場所にちょっとボロボロの小屋のようなものが見えてきた。


「…え、まさかアレ?」

「そうだけど」

「あんな思いっきりあるの?」


メラオニアって外界の敵が潜んでたりするんでしょ?捜索とかされないの?流石に不用心では?基地とか言ってんのに。



「赤の森には結界が張ってあるんだ」

「へぇ…優秀」

「俺らが張ったわけじゃない。元からだ。外界の奴らが森を抜けてメラオニア内に侵入するのを防いでるらしい。だから誰も入れないよう強力な結界が張られてるんだって」

「でも私達普通に入ってきちゃったけど」

「うちのリーダーが結界に穴を空けたんだよ」


え、穴空いたの?

それ結界としての役割全然果たしてなくない?


「転生者の力。リーダーには結界破りのスキルがある。当然他の種族で使える奴はいない」


えぇ…すご。

強力な結界って言ってたよね。そんなのも簡単に破れるの?


「チートじゃん」

「転生者の能力はみんなチート級だよ。吉田の技だってえげつない破壊力だっただろ」


ああ…確かに。

キロルくんも私の一掃のスキルは確実にA級程度じゃないって言ってた。

転生者にはこの世界の『普通』が通用しないって。


「俺達は強いんだよ。あり得ないレベルでね」

「…そうだね」



足場の悪い森の中を進み、やっとのことで小屋の前に辿り着く。


「じゃあここには転生者以外入れないってことね」

「そゆことー。だから基地」


にしても…ちゃっちい小屋だな。


「ちゃっちい小屋とか思ってんだろ」

「失敬な。微塵も思ってないよ」

「中は案外広いから」


茶色の壁に黒い屋根。二階建てみたいだ。確かに広そう。

虫も鳥も何もいない、やけに静かな森の中にある人工物はかなり浮いている。


「あの小屋が最初からあったってこと?」

「おう」

「誰も入れない場所なのに?」

「まあな」

「なんで?」

「知るかそんなの。都合だろ」

「都合?なんの…」

「ほら行くぞ」


あ、待ってよ。

ズンズン進む森本くんに続いた。



古い作りの小屋。

キキっといかにもな音を立てて扉が開く。


「戻りましたー」


中からオレンジ色の光が漏れた。人の気配がする。

木の床、木の壁。入ってすぐの所にアンティークなマットのようなものがあり、そこで靴を脱ぐ森本くん。久しぶりに見た靴を脱ぐという行為。さすが日本人。

同じように靴を脱ぎ、森本くんの背中に隠れながら恐る恐る足を進める。


…同胞。

私と同じようにこの世界に飛ばされた同じ境遇の仲間達。

一体どんな人なんだろう。

不安と緊張と期待で鼓動が早まった。



「お帰りなさーい」

「連れてきたー?」


奥から聞き慣れない声がした。

部屋の中は紫色のカーペットが敷いてあり、ソファやタンス、冷蔵庫やカウンターなど最低限の家具が置いてあるがらんとした空間だった。

あまり外観からは想像のできない内観。思ったよりも広い。


「連れてきた」


その無駄に広い空間に2人の影。

森本くんの背後から少し顔を出してその影を確認した。



「っ!」

「わお」


バチリと目が合う2人の人物。

1人は女性。少しふっくらした体型で肩までの短い黒髪に赤い眼鏡が特徴的な優しそうな雰囲気の人。

もう1人は小柄な男性。栗色の癖毛とまん丸の目、白い肌にそばかすがついている可愛らしい人。


2人とも日本人のようだ。

2人の目が私を凝視して大きく見開かれている。


しんとする空間。

平然と立っている森本くんと目をまん丸にしている2人の同胞。

居た堪れなくなり上擦った声を出す。


「あ、えっと…吉田です。日本人です」

「……」

「……」


…か、帰りたくなってきた!



「お…っ女の子だぁ!!」


えっ?

そう興奮気味に声を上げたのはふっくらした女性。

私を見る目が輝いている。


「えっ可愛い。外国人かと思った」


続けて小柄の男性も呟いた。



「やったぁ!!やったやった!女の子!嬉しい!」

「あれ?俺言ってなかったっけ」

「聞いてないです!あーもう最っ高!超可愛いっ!」


ふっくらした女の人が、人より大きな体でピョンピョン跳ねながら近づいてくる。

そして私の手をひしっと握った。


「初めまして!私、近藤奈々恵って言います!会えて嬉しいです!今まで1人で辛かったでしょう?こんなか弱くて可愛い女の子が…」


優しい笑みを浮かべている柔らかい雰囲気の人だが私の手を握る力が尋常じゃねぇ…


「あっお腹空いてますか!?簡単なものでよければ作ります!ホットミルク飲みますよね!何か欲しいものあります?ぬいぐるみとか!」


え、子供だと思われてる?

私の手を取ってソファに連れていく近藤さん。

問答無用で座らされるとそそくさとカウンターに向かう。



「奈々恵ちゃん可愛い女の子に目がないんだよ。気にしないで」

「えっあ、はいっ」

「はは、そんなに畏まらないでよ。仲間なんだから。僕は瀬戸口誠。よろしくね」


ソファでぽかんとしていた私の隣に腰掛けた小柄な男性。

にっこり笑うとその大きな瞳が綺麗に三日月になりとても可愛らしい。年下かな。でも見た目の割には落ち着いている。


「祐樹に聞いたけど半年もここにいるんだって?長い間1人だったんでしょ?よく生きてこれたね」

「あ、運良く親切な方に出会えたので」

「へぇ。イーデアで働いてるんでしょ?イーデアの人達ってちょっと堅苦しくない?」

「そうですかね…」

「僕なんて弱小種族な上に小柄だからすごい馬鹿にされたよ」


まあライルさんも弱小種族めがー!って口うるさく言ってるけど。


「はいはい、そういう話はもう少し後で。とりあえず吉田に色々説明してあげないと」


森本くんがパンパンと手を叩く。

そうしてケロ。




近藤七菜香さんと瀬戸口誠さん。そして森本祐樹くん。

私と同じ転生者。

なんだか良い人そうでよかった。この人達もいきなり異世界に飛ばされて大変だったんだろうな…。あの時の私と同じように。


あ、でも転生者は私を含めて5人って言ってたよね。あと1人足りない。その人が夕方に来るのかな。

慣れない空間で居心地悪く辺りを見回している私の前に改めて3人が並ぶ。


「改めて、まあまだ1人いないんだけど先に自己紹介するね。

俺は森本祐樹。19歳。東京生まれ東京育ちの大学一年生。ここに来てからは1ヶ月半くらいかな。今はメラオニアの鍛冶屋で働いてる」


森本くんが淡々と言った。

黒髪の短髪に少しだけ陽に焼けた肌。

吊り目が特徴的な都会人。年上だったのか。



「近藤奈々恵です。今20歳で医療大学に通ってます。怪我したら言ってくださいね。この世界に来てからもうすぐ1ヶ月です。最近やっと慣れてきました。この前やっとシプトピアの病院でバイトとして雇ってもらえました。今はそれで生計を立ててます」


近藤さんがふわりと笑う。

20歳かぁ。もっと大人に見えた。

メガネがよく似合うお姉様って感じ。



「瀬戸口誠でーす。今24歳。現実世界では機械系エンジニアやってまーす。この世界に来たのは2ヶ月前。今はシプトピアのレストランで働いてる」


24歳!?年下だと思ってたのに…。

機械系エンジニアって…想像つかないや。エリートっぽい。

そばかすの目立つ白い肌をクシャッとさせて笑う。



あ、次は私か。


「初めまして吉田です。今18歳で高校三年生です。この世界に来て半年くらいです。今はイーデアの清掃会社で働いています。よろしくお願いします」


深々と頭を下げる。


「うわーJKだー!」


瀬戸口さんが両手を小さく上げる。


「ちょっと誠さん変なことしないでくださいよ」

「できないよー最近のJK怖いもん。てか…奈々恵ちゃんもね?」

「う…わ、分かってますよ」

「それにしても半年って…僕らより全然長いね」

「北条さんより長いですね」


北条さん?


「あと1人の転生者。超イケメン。仕事が忙しいから夕方にしか来れないんだ」


私の心を読んだかのように森本くんが教えてくれた。イケメンだってよ。ライルさんより?



「ねぇヨッシー。半年も居たら流石に慣れる?」


またヨッシーかい。まあいいけど。

瀬戸口さんが可愛く首を傾げて聞いてくる。


「そうですね。だいぶ居心地良く感じるようになりました」

「へぇー高校生なのにすごいね」

「色んな方にたくさんお世話になりましたから」

「健気だねぇ。祐樹はこんな可愛い女子高生にボロボロに負けたんだねぇ」


あーこの前の…。

瀬戸口さんが揶揄うように森本くんを見る。


「一言多いんすよ誠さんは」

「吉田ちゃんは半年も生活してるんですよ?レベルだって上がりますよね」


そっか。みんなも転生者だからレベルを上げられるんだ。



「祐樹なんてまだ1ヶ月ちょっとのくせに、自分はメラオニアを生活拠点にしてるんでめっちゃ強いっすよーって言い張ってたんだよ」

「やめてくださいよ誠さん。俺が弱かったんじゃなくて吉田が強すぎたんですー」

「イーデアの生活ってそんなにレベル上がるの?」


イーデアと言うより…第五通路でモンスターを倒してたのが一番大きいと思う。

ブラトフォリスで1ヶ月近く生活していた私には不備魔力に多少の耐性がついている。だから第五通路でモンスター退治をするのが可能だった。

あれだけ経験値を積んでいればレベルも相応に上がるだろう。


「ブラトフォリスにいたからだと思います。不備魔力に耐性がついているので、仕事で不備魔力が実体化して産まれたモンスターと戦ったりしていたんです。多分それじゃないかな」


私の言葉に分かりやすく3人の顔色が変わった。


「え…ブラトフォリス?」

「はい。私最初に転生した先がブラトフォリスだったんです。そこで少しの間生活していたので」


「「……」」


…?



「どうかしたんですか?」


森本くんと瀬戸口さんが近藤さんを見る。

なんだか神妙な顔つきだ…。

近藤さんはメガネをクイっと押しあげた。


「やっぱり…シナリオが違いますね」


…シナリオ?

なにそれ…。



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