熱中症の出会いとか、どう思う?
2年前のTwitter(現X)での万年青二三歳および及川さん共催の #覆面BLSS企画参加作品です。
外に出た途端生温かい空気が、体を包んだ。
湿度が高すぎて、空気がベタついている。最近寝不足だったこともあり、体のだるさが一気に増した。
「真夏日かよ。せめてカラッとしてくれよ」
少し歩いただけで、額から汗が噴き出し、頬を伝った。
しかし近くのコンビニまで行かねばならない。プリンターのインクが切れたのだ。
(ネットプリントを確認したら、提出できる)
ふらふらと俺は、1番近いコンビニに向かった……はずだった。
「おにーさん、おにーさん。起きて」
トントンと背中を叩かれる。
「うちの前でしゃがみこまないで。顔真っ赤だよー?大丈夫?」
(おかまいなく)
そう言ったつもりがなんだか、うまく口が動かない。なんだ?
ひどい頭痛がする。
「熱中症ってやつじゃない?とりあえずうちに入んなよ」
見知らぬ若者に腕を取られ、ズルズルとひきづられる。俺よりも小柄で、髪を茶色に染めている彼に体重のほとんどを預けて俺は移動した。
一軒家のたたきに座らされて、すぐにコップが口に当てられた。
天上の甘露かというぐらい至福の味がする。
夢中で飲み干した後に、麦茶だと気づいた。
「もう一杯飲む?スポドリがいい?熱中症なら救急車呼ぶ?」
彼の声がだんだん遠のく。猛烈に眠い。俺は意識を失った。
(冷たいな)
気づくと、浴槽の中にいた。
水に浸かっていたのだ。
「あ、起きた?びっくりしたよ?」
俺はぼんやりと彼を見る。
頭痛は続いている。
しかしなぜ人様の家で、裸に?
「飲んで。熱中症はぬるめのお湯に入って、お湯を冷やしていくのがいいって」
スポドリの入ったコップが唇に寄せられる。全裸の理由を聞きながら、飲み干した。
「ネットで水風呂に入れろって出てきたから」
この時は、いい人に助けてもらって助かったと思った。
これが縁で、やがて付き合うことになった。
そして。
彼が救急車も呼ばず、水風呂に入れた理由を知るのは、しばらくたってからだった。
「好みだったから裸にむいちゃった」
覆面企画という、作者をあてる企画への参加作品だったので、画像一枚に収めるために必死で約800字に抑えたことを覚えています。そのためずいぶん説明をカットしてますが、それも企画の味かなと思って加筆せずに載せました。
この時期真夏にコロナが流行っていて、リモートワークで家で仕事をする人も多かったし、救急車を呼んでもこないとニュースになってた時期なんですよ。ずいぶん世相が入っていますね。ええ。だから彼は119番に電話したけどつながらなかったんですよ、きっと。