失くした思い出
子供の頃、私は大好きなおもちゃをなくしてしまった。探しても探しても見つからず、最後には何も得られなかった。
私は大声で泣き叫んだ。その時、白予終が必ず私の前に来て、しゃがんで私の頭を撫でてくれる。いつものように。
「よしよし、ママが魔法を見せてあげようか?」
「うぅ……」
不思議なことに、彼女が私の頭を撫でると、もう片方の手にはいつもなくしたおもちゃが現れるのだ。私は白予が何かを出現させる魔法を使えると信じていた。
「ママ、何でも出せるの?」
「何でも出せるわけじゃないのよ。もし大切なもの、たとえば素敵な思い出をなくしたら……ママでもそれは取り戻せないの。」
だからね、しろちゃん。
絶対に大切な思い出をなくしちゃいけないよ。
——
街行く人々はマフラーや手袋を身に着け始め、例年のように寒い冬をしのいでいた。道路脇の木々は、枯れ葉を落として自らの若さの証を手放していた。姜朴と私は学校から配られた冬服に袖を通し、自転車も押さず歩くことにした。
「寒いな。」
「当たり前だろ。冬が寒くないわけないじゃん。」
そんな他愛のない会話を交わしながら、白い息が吐息と共に空気に漂う。
「そういえばさ、最近お前、変わったよな。」
「なんでそう思うんだ?」
「かつてはあんなに奈音鈴を避けていた白佑が、今では一緒に昼ご飯を食べてるなんてな……」
「お前、どうして毎朝恋愛話を振ってくるんだよ?」
姜朴は苦笑し、手を振ってみせた。「お前が真面目すぎるからだろうな。今の白佑を笑顔にできるのは、奈音鈴くらいじゃないか?」
「……」
数ヶ月前の私なら、きっと彼に嫌な顔をして突き返していただろう。でも今は、何も言い返せなかった。
確かに、彼の言っていることは全くの事実とは言えない。私はこの変わらない日常の中で自分の心を隠し、大切な毎日を静かに過ごそうとしていた。このささやかな日常を守るために、交流を拒み、そこに入り込む変数を全て排除しようとしていた。
なのに、どうして奈音鈴だけは拒めないのだろう?
どうして彼女の笑顔を見ると、自然と笑ってしまうのだろう?
どうして彼女の瞳を見つめると、切なくなるのだろう?
「おい、何ぼーっとしてるんだ?」
「……考え事してた。」
「へぇ、白佑って意外と純情なんだな。」
「黙れ。」
——
教室に入ると、奈音鈴はすでに席についていた。私の足音に気づくと、彼女は振り返り、昨日渡した猫のヘアピンをつけて微笑んだ。
「おはよう、佑くん。」
正直、返事したくなかった。誰かが彼女に教えたこのあだ名のせいで。
それでも今日はやけに楽しそうだ。昨日プレゼントしたヘアピンのせいか、それとも昼の弁当を楽しみにしているのか。ただ私を見つめて笑っている彼女に、少し照れて目をそらし、自分の席に向かう。
まったく、今時の流行りはこんな意味不明な謎行動なのか?
「ねえ、佑くん。今日はお昼ご飯を多めに持ってきたから、一緒に食べに行かない?」
「まだ行くのか?」
「……ダメ?」
くそ、誰だよ、こんな技を彼女に教えたのは。
——
最近、学校で新入部員の勧誘が行われているようだった。
この学校は大きくはないが、部活はやたらと多い。他の学校なら、運動系の部活がほとんどを占めるだろう。でもここは違って、学校は生徒の興味を引き出すため、様々な部活を開設している……もっとも、私には全く関係のない話だが。どの部活も、光の差し込む机の上で午後を寝て過ごしたいと思っている草履虫を受け入れてはくれないだろうし。
そんなことを思っていた。
「みなさんに朗報です。最近、校内の部活の人数が減少していることから、進度が早いクラスに特定の部活を割り当てることが決まりました。私たちのクラスもその対象です。」
終わった。
私以外の誰かは喜び、誰かは文句を言っていたが、ここで転校を考えるほどの気持ちを抱いたのは私だけだった。
「さあ、静かにして。これから部活申込書を配りますから、全員記入すること。」担任が無情にも一枚ずつ用紙を配っていき、ついにその用紙が私の目の前に置かれた。
——
「佑くんはどの部活にしたの?」
「なんでそんなことを聞くんだ?」
「ただ、ちょっと気になって……」
昼休み、私は奈音鈴と一緒に天台へと続く階段に腰掛け、それぞれ昼食をとっていた。最近の私は経済状況が少し良くなり、普段は我慢していたベーコンサンドイッチを買ってみた。パイナップルパンもいいが、サラダと肉の味わいもまた格別だ。
「じゃあ、どの部活にしたんだ?」
「え? えっと……書、書道部……」
私はほっと一息ついた。どうやら自分の選択は正しかったらしい。
授業中、担任はホワイトボードに各部活の名前と人数を列挙していた。そして私はというと、部活活動の内容と人数を踏まえ、最も楽で人数が少ない部活——文芸部を選び出したのだ。文芸部は現在部員が二人しかおらず、廃部の危機にあるという情報を得て、最も深刻な時期に加入を決めた。多少の自己利益もあるが、世のため人のために役立ったとも言えるだろう。
慈悲深く、功徳を積んだってものだ。
「もし、私が佑くんと同じ部活に入ってたとしたら、どうする?」
「何を馬鹿なことを言ってるんだ?」私は笑いながら言ったが、心の中は穏やかだった。「申込書は一度提出したら変更できないのを知らないのか?」
「そ、そうだよね。ははは……」
天台の外から冷たい風が吹き込み、その時、私は天台の鉄の扉が開いていることに気づいた。奈音鈴が興味津々で立ち上がり、まるで初めて見るように門の外を覗き込んでいた。
この扉は安全のために普段は閉じられているが、時折、職員が鍵を掛け忘れることがあり、そのおかげで外の景色を楽しむことができるのだ。
広い空には小さな太陽が輝き、冷たく光を放っていた。私はざらついたコンクリートの床を歩き、長く手入れされていない鉄柵に寄りかかり、遠くの町や山を見つめていた。
高層ビルも車の渋滞もなく、そこにはただ、まばらな人影と笑い声が広がっていた。
「たまには、こういうのも悪くないな。」
奈音鈴も私の隣に寄りかかってきたが、私は気にせず、錆びついた手すりに手を触れた。長い間、人が寄りついていないのか、薄く埃が積もっていた。
「ねえ、佑くん……」
バキン――
その瞬間、私は目を見開いた。
彼女が寄りかかっていた手すりの下部が突然、折れてしまった。そこは五階の高さだった。すべてがスローモーションのように感じられ、奈音鈴が私を見つめ、体が下に傾いていくのが見えた。私はとっさに手を伸ばし、彼女の手首を掴み、全力で彼女を引き上げた。しかし、力が入りすぎたのか、彼女は私の方へ倒れ込んできた。
「くそっ!」
次の瞬間、私たちは同時にコンクリートの床に倒れた。私は下敷きになり、奈音鈴が上に乗っていた。遠くから手すりの落ちる音と、下からの悲鳴が聞こえてきた。彼女が私の上で震えている感触と、後頭部の痛みが伝わってきた。
「……危なかった……」
「だな。ってか、お前、いつまで私の上に座ってんだ?手が痛いんだが。」
「あっ、ごめんなさい!」
彼女は慌てて私の上から立ち上がり、手首を握りしめ、まだ動揺しているようだった。手すりは落ちてしまい、すぐに誰かが上がってくるだろう。もしさっきの状況のままなら、言い訳もできなくなるところだった。
しばらくして、私は上体を起こしたが、後頭部の痛みはまだ残っていた。大したことはなさそうだが、立ち上がって歩こうとした瞬間、両足が震えてしまった。
やばい、何かおかしい。
そう思った瞬間、口を開く間もなく私は……。
……
——
見知らぬ天井。
目を開けると、見慣れない白い壁とカーテンが見えた。隣には奈音鈴と、白衣を着た先生が座っていた。
「佑くん!やっと目を覚ました……私が悪かった……ごめんなさい……」
この子、私が目を覚ました途端に泣き出した。まるで私が目を覚ますのが彼女には悲しいことだったかのように。
私は体を起こし、周囲を見渡した。ここはどこだ?病院?学校?それとも保健室?私は白いベッドに横たわり、状況がまるで掴めなかった。先生は私の困惑した顔を見て、察したように説明してくれた。
「君は校舎の天台で倒れて、もう二時間が経っている。」
「え、そんなに重症だったのか?」
先生は何か言おうとしたが、その瞬間、奈音鈴が私に飛びついて泣き出した。
「おいおい、俺を窒息死させる気かよ……」
「おい、この生徒さん。彼は病人なんですよ。抱きつくのは保健室を出てからにしてください!?」
「あ……すみません……」
先生までが突っ込んでしまうほどだった。
私はため息をつき、左手で体を支えてベッドから下りようとしたその時、突然激痛が走った。
「動かないで、左腕が捻挫してるから。」
「捻挫……?」
私は茫然と尋ねたが、自分でも何を聞いているのか分からなかった。腕を伸ばそうとするたびに、激しい痛みが頭にまで響いて、思考さえできないほどだった。多分、あの時に奈音鈴を引き戻した際に無理がかかったのだろう。
「それなら、休みを取って家に帰った方が……」奈音鈴が俯き、申し訳なさそうに言った。
「右手じゃないから、担任が許してくれるか怪しいな。」
残念だが、これが現実だ。
「それに、午後は残り一時間だけの部活活動だし、初回から欠席したら、さすがに罪悪感があるかもな。」
口ではそう言ってみたものの、本当は少し楽しみだったりもする。もちろん、一時間じっくり窓辺で日向ぼっこをするつもりだが。
そんなことを考えていると。
「でも……実は私、文芸部に入ってるの……」
終。わった。
「お前、書道部に入ったって言ったじゃないか!」
私はベッドから跳び起き、彼女の肩を掴んで揺さぶりながら、ほとんど絶望的に問い詰めた。
「ごめんなさい……あれは嘘で……あなたがどの部活に入ったか知ってから申込書を出したの……」
時々、自分がこのままベッドで永遠に眠ってしまえばいいのにと思うことがある。
——
「佑くん、本当に部活行かないの?」
私は学校の門を目指して歩いていたが、奈音鈴が後ろから追いかけてきた。
「骨折してるから無理だ。」
もう二度と、部活なんて信じない。
「私が悪いのはわかってるけど……でも初回から欠席するのはやっぱり良くないと思うの……」
「だから行けないって言ってるだろ!!」
私は振り返り、思わず声を荒げた。奈音鈴は怯えたように立ちすくみ、ぼんやりと私を見つめた。その時になって、自分がまた面倒なことをしてしまったと気づいた。
「……ごめん……」
彼女は下を向き、すすり泣き始めた。私はため息をつき、彼女の頭を撫で、無理やり笑顔を浮かべて慰めた。「いいんだよ、一緒に部活に行くからさ、だからもう泣くなよ、な?」
「……本当に?」
「現金よりも確かだ。」
私は今後、幽霊部員として私の心の傷を癒すと心に決めた。
——
文芸部の部室は少し目立たない場所にあり、校舎三階の廃教室の隣にある。私一人が加入したのであれば、ひっそりとしたサボり場ができたと喜べたかもしれない。
夕日の光が階段を照らし、私と奈音鈴はその温もりのない光を受けながら文芸部に向かって歩いていた。部室の前に着くと、奈音鈴は手を伸ばしてノックしようとしたが、ためらったように動きを止めた。
「どうしたんだ?」
「その……佑くんがノックしてくれない?ちょっと緊張しちゃって……」
私は少し近づいて、右手でドアをノックし、中の人が出てくるのを静かに待った。しかししばらく待っても、落ちる本の音以外、足音一つ聞こえなかった。
「誰かいませんか?」
仕方なく、もう一度ノックをした瞬間……
突然、ドアが「バタン」と勢いよく開かれ、私より背の低い眼鏡をかけた女の子が姿を現した。
「あなたたち、提出してくれた新入部員の方たちですか?」
「え……あ、はい。」
新入部員?何を言っているんだ。私たちは中二だぞ。
「ど、どうぞ、入って……わあ!」
その女の子はドアを入った途端、足元にあった分厚い辞典につまずいて転んでしまった。私はそこでようやく部室の中に目を向けた。
散らかり放題。棚に置かれた本はバラバラで、床には様々なものが置かれていた。本だけでなく、急須、飲み物、ひっくり返った椅子、そして大量の紙くず。奈音鈴が私の横を通り過ぎ、その女の子を何とか支え起こした。
「あ、ありがとうございます……」
彼女は椅子を元に戻して腰かけ、私たちに座るよう勧めた。
「わ、私は韵岚、文、文芸部の部長です。あなたたちのおかげで、文芸部は廃部の危機を逃れました……本当に、ありがとう!」
彼女はそう言うと、真剣な表情で深々とお辞儀をした。たどたどしい言葉だったが、思いを伝えようとするその強い意志はぶれることがない。これもまた一つの才能なのかもしれない。
「いえ、ただ文芸部に興味があっただけです。これからよろしくお願いします、韵岚さん!」
「えっと……よ、よろしく。ところで、私は部員が二人いるって聞いてたんだけど。」
「そ、それが……」韵岚は少し言いにくそうに頭を下げた。「実、実は……その人は幽霊部員で……」
バタン——
突然、ドアが荒々しく開けられた。
「幽霊部員、それは僕のことだ!」
振り返ると、姜朴がドアにもたれかかり、にやにやしながら私を見ていた。彼の顔を見た瞬間、私の心は打ち砕かれた。
「……部長、退部させてください。」




