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デート?

そのまま、サクラを撫でつつぼんやりと過ごす。


しかし、ふと気づく……隣に若い女の子がいるということに。


しまった、話してないでぼんやりしてしまった。


「ごめん、退屈だよね」


「えっ? そんなことないです! すっごく楽しいですっ!」


そういい両手を握りしめて、身を寄せてくる。

ふと女性特有の甘い香りがして、年甲斐も無く動揺してしまう。

……十代の子を相手に何をしてんだ、俺は。


「そう? それなら良いけど……」


「プー?」


「ご、ごめんなさい、大きな声出して……でも、こうしてゆっくり過ごすなんて久しぶりなんです。だから、楽しいです」


「そっか……ただ、ここでじっとしててもアレか。この子を飼うなら、色々と準備をしないと」


「はい、餌とかお部屋とか用意しないとですね」


「んじゃ、買い物に行くとするか。それじゃあ、色々とありがとね」


張り紙等を貼らないなら、この子の用事は終わったはず。

これ以上、俺みたいな男に付き合わせるわけにはいかない。

いくら、相手が成人しているとはいえ。


「えっ? あっ、そ、そうなっちゃうんだ……どうしよう?」


「ん? まだ何か用があったのかな?」


「えっと……私、餌とかお部屋探し手伝いたいかなって。カズマさん、そういうのわからないと思うんですっ」


「まあ、確かに。ただ、悪いよ。きっと忙しいだろうし」


「暇なんでやらせてください!」


「わ、わかったよ」


あれ? さっきこんなにゆっくりできるのは久々とか……最近の女の子は分からん。




とにかく助かるのは事実なので、ご好意に甘えさせてもらう。


俺は天野さんに案内されるままに、すぐ近くあるペットショップに入る。


「へぇ、こんなところにあったのか。ここなら、家からも近いし良いな」


「意外と、自分が用がなかったりすると見落としたりしちゃいますよね」


「ああ、そういうのはあるかも。いざ服を買おうと思って遠出したら、意外と近くにあったり」


「ふふ、わかります。それじゃあ、まずはお部屋から見ましょう。確か、こっちにあります」


腕の中でスヤスヤ寝ているサクラを抱きつつ、天野さんについていく。

すると、そこには多種多様なケージが置いてあった。

それこそ、大型犬も入るくらいのやつとか。


「うーん、こいつの成長率がわからないしなぁ」


「フスフス……ピスー」


「ふふ、よく寝てますね。でも、見た目はネザーランドですよ? だから、そこまで大きくならないと思います」


「あっ、そうなんだ? いや、君にきてもらって良かったよ」


「え、えへへ……やった、褒められちゃった。それになんだか……デートみたい」


「ん? どうかした?」


「い、いえ! なんでもないですっ!」


「そう? それにしても……高いな」


大きくならないとはいえ、どのケージも値段は安くはない。

最低でも、きちんとしたやつは一万から二万円はする。

ここから餌代とかって考えると……稼がないといけないか。


「結構しますよね……急に来ちゃいましたけど、カズマさんって手持ちあるんですか?」


「いや、恥ずかしながらあんまりないんだ。うーん、どうしたものか」


「……その、良かったら私の使ってたケージを使いますか?」


「えっ? い、いや、それは流石に……」


「別に使ってないから平気ですよ。そしたら、あとは餌だけで良いですし。実は、うさぎさんって餌代はそんなにしないんです」


……ぐぬぬ、どうする?

いくらヒキニートとはいえ、こんな若い子にたかるのはどうかと思う。

しかし、現時点でお金がないのは事実だ。

……そうなると、あとで借りを返す形にすれば良いか。


「わかった、ありがたく使わせてもらうね。その代わり、何かお礼がしたいんだけど……」


「い、いえ、私にしてもらったことに比べ……あ、あの、何でも良いですか?」


「まあ、俺にできることなら」


「それじゃあ、カズマさんの連絡先を教えてください!」


なんでも言うから身構えていたが……よくわからない願い事を言われた。

でもケージをもらうなら、連絡先は交換しておいた方がいいか。


「えっ? あ、ああ、そんなことなら」


「や、やったぁ!」


「えっと……何がそんなに嬉しいんだい?」


「あっ……い、いえ、その……サクラちゃんのファンになったんです! 見てたらすごく癒されるっていうか……だから、カズマさんと連絡先を交換したらいつでも撫でに行けるかなって……」


「ああ、そういうことね。じゃあ、撫でたくなったらいつでも言って。タイミングさえ合えば、散歩に出かけるし」


「わかりました! 絶対に行きますっ!」


「おいおい、サクラよ。はやくもファンができたみたいだぞ?」


「フスフス……」


俺は寝ているサクラの頭を撫でる。


すると、心がすうっと軽くなる気がした。


多分、天野さんも似たような感じなのかもしれない。





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