ヒロイン視点
ふぅ、今日も疲れたなぁ。
ダンジョン攻略を終えた私は、自分の家に戻って一息つく。
自分で選んだ道だけど、たまに息が詰まりそうなる。
戦うのは良いけど、アイドル扱いには少しうんざりしていた。
流石に、変な人達に絡まれるのは嫌だし。
「こんな時は、癒しの動画を見るに限るよね」
スエットの上下に着替え、冷蔵庫からジュースを取り出す。
そしてソファーの上でゴロゴロしながらスマホをいじる。
見る内容は、フォローしている動物を飼っている人達だ。
これが、私の日々の癒しとなっている……おばさんくさいかな?
「でも、仕方ないよね。好きでやってることだけど、どうしたって嫌なことはあるし。私だって、ストレス解消しないと」
誰も聞いていないのに、そんな言い訳をしつつ動物の動画を見ていると……。
「あれ? この通知……うそっ!? カズマさん!?」
フォロワー数に対して、私がフォローしている人は少ない。
それこそ数百人程度だし、通知オンにしている人はさらに少ない。
流石に全部を確認してたら、それだけで一日が終わっちゃうし。
しかし、そんな中でも……カズマさんだけは特別だ。
ずっとフォローをし続けていたし、投稿がなくても通知をオンにしていた。
「何年振りだろ? 私が小学六年生だったから、五年振りの投稿? 良かった、無事だったんだ……本当に良かった」
ずっと、心配していた。
決して有名ではなかったけど、探索者として頑張っていたあの人を応援していた。
ても、ある日突然いなくなってしまい、それから行方が分からなくなってしまったから。
あの人に助けてもらった私は、いつか会えると信じて探索者になる決意をしたんだよね。
「えっと、なんの投稿だろ? 配信……あっ、可愛い! ふわふわだぁ……お目目黒くて可愛い……迷子……あっ、とりあえず拡散しないと」
嬉しいやら、癒されたやら感情がぐちゃぐちゃになりつつも拡散を始める。
自分で言うのも何だけど、私のフォロワー数は多い。
多分、探索者の中ではトップクラスと言って良いかも。
その数字は気にしてなかったけど、これでカズマさんの役に立てるならやっておいて良かった。
「これでよしと……うんうん、次々と拡散されていってるね……あれ? アルミラージ?」
見ていたコメントの中に、そんな文字を見つける。
それは探索者にとって、伝説の生き物と言われている。
見つけた者には幸運が訪れるとか、最強の力を手に入れるとか。
ダンジョンが現れてから三十年、目撃情報は数件しかないらしい。
「まさかね……こんなところにいるわけがないよね。それより、カズマさんに会いたいなぁ。このうさぎさんも可愛いし……あれ? カズマさんがうさぎを拾った場所ってここから近くない?」
動画を見てると、カズマさんが拾った場所を説明していた。
そこは私の家から、三十分程度で行ける距離だった。
「もしかしたら、そこに行けば会えたり……?」
いやいや、そんなストーカーみたいなこと。
自分だって動画から住所を特定されて大変だったのに。
……でも、お礼を言うくらいは良いかな?
「そ、そうと決まったらこんなダラダラしてる場合じゃない! まだ昼過ぎだから間に合うよね? 急いで美容院の予約して、髪を切ってもらって……お洋服も買わないと」
なにせ前に会った時は、私は小学四年生の時だった。
その時に、探索者だったカズマさんに助けてもらって一目惚れをしたんだけど……。
当たり前な話だけど、相手にもされなかった……というか、されたら困るよね。
「で、でも、今なら……高校生だけど、十八歳になってるし」
改めて鏡の前で自分の体を確認する。
「おっぱいもDカップあるし、腰のくびれもあってスタイルは悪くないはず……」
男子に見られて嫌なこともあったけど、今回はカズマさんに意識してもらわないと。
……少しは大人っぽくなったって思われたいもん。