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二人はようやく出会う

思い出したくない……アレは我ながら酷かった。


結局、泣きながら武器を振り回して、とてもじゃないがヒーローなんかではなかった。


それでも、彼女は感謝してくれたけどね……それからもずっと。


どんな事情があるにしろ、それを裏切ったのは俺だ。


あの子にまで失望されたら、俺はもう立ち直れない。


だから、何も言わずに逃げ出したんだ。


「………あっ、えっ、あれ?」


「………いらっしゃいませ」


動揺を堪えて、どうにか言葉を絞り出す。


「あれ? アンタ……さっきの男じゃないか」


「……ん? あれ? 貴女は……天野さんと一緒にいた水無月カレンさんでしたっけ?」


「ああ、そうだよ。ハルカ、知っててきたのかい? 普段は真っ直ぐ帰るのに」


「ち、違います! 本当に知らなくて……ただ、今日はラーメンが食べたいなって」


その声を聞き、表情を見て、俺の頭に電撃が走る。

それは、俺が最近会った女の子にそっくりだったから。


「もしかして……天野さん?」


「ふえっ!? ち、違いますっ!」


「いや、もう遅いでしょ。というか、面倒だからバラしちゃいな」


「もう! カレンさんは黙ってて!」


……なんだ? 何がどうなってる?

天野さんはハルカちゃんで、ハルカちゃんは俺が助けた女の子。

つまり、天野さんは……あの時の女の子ってこと?


「あぁー、探索者の方々。とりあえず、席についてくれますかね? ほら、カズマも着替えてこい。もう、店も閉めるからよ」


「えっ? いや、まだ閉店には早いんじゃ……」


「今日は元々早く閉めるつもりだったから平気だ。なっ、あかり?」


「ええ、そうね。こいつってば、アンタと飲みに行こうとか言ってたから」


「あっ、そうだったんですか」


「まあ、それはいつでも良いし。とりあえず、着替えてきて飯でも食っていけ。探索者の方々も、それでいいかい?」


その言葉に、天野さん? と水無月さんが頷く。

俺は淳さんに背中を押され、強引に裏に連れて行かれる。


「おい、平気か? そのまま帰るか? ああは言ったが、無理そうなら俺から………」


「い、いえ、平気です。お気遣いありがとうございます……ただ、少しびっくりしたんです」


「そりゃ、こっちのセリフだ。よく事情はわからないが、あのアイドル探索者ハルカと知り合いとは……探索者の時にか?」


「はい、そうです。淳さんには、後日改めて説明しますね」


「わかった。んじゃ、俺は今日はただの店主に徹するぜ。その話も含めて、今度こそ飲みにいくぞ?」


「ええ、もちろんです」


いや、強引に裏に連れていかれて良かった。

おかげで、少し落ち着いた。

要はあの子は天野さんで、ハルカちゃんってわけだ。




気持ちを切り替え、着替えを済ませたら店の表に戻る。


「おっ、きたな。とりあえず、あそこの四人席に座んな。もう店は閉めたから遠慮しないでいい」


「すいません、淳さん」


「だからいいっての。ほら、ささっといけ。後、注文はいつものでいいか?」


「はい、ありがとうございます」


俺は奥の四人席に座っている二人に近づき、その対面に座る。

そして、改めてハルカちゃんを見て……気づかないのも無理はないかなと思った。

同じく美少女だけど、髪型も服装も雰囲気だって違う。

例えるなら天野さんは文化部で、ハルカちゃんは運動部って感じだ。


「こんばんは」


「こ、こんばんはです……」


「なんだい、ここはお見合い会場かい?」


「お、お見合い!?」


「はいはい、落ち着きなって。とりあえず、約束通り私は黙ってるから自分で言ったら?」


「は、はいっ」


そこでようやく、ハルカちゃん……いや、天野さんと目が合う。

眼鏡もしてないしポニーテールだが、間違いなく今日会っていた彼女だ。


「改めてまして、吉野和馬です。さっきぶりでいいかな?」


「ご、ご無沙汰……じゃなくて。はいっ、先程はどうも……えっと、すみませんでしたっ!」


「ん? 何か謝ることあった? むしろ、気付かなかった俺が悪い気がする」


「い、いえ! 私が変装なんかしないで、最初から名乗ってたらややこしい事にならなかったのに……つい、出来心で」


「いやいや、当然でしょ。天野さんは人気者でファンも多いし」


はっきり言って、そこらのアイドルより人気だ。

容姿、性格、武力、それだけ揃っていれば当然の話だね。


「いえいえ、私なんて。それじゃあ……怒ってないですか?」


「うん、怒る理由もないし」


「……えへへ、やっぱり優しいですっ」


「そいつはどうも」


いかん、照れくさいぞ。

小学生に言われるのと、十八歳の女の子に言われるでは話が違う。


「えっと、改めてありがとうございました。カズマさんのおかげで、私は生き残ることができました」


「いや、情けなかったよね……」


「そんなことないですっ! 泣きながら震えながらも、私のことを守ってくれましたっ! あれがあったから、私はこうして生きているんです。そして、夢だった探索者になったんですから」


「……そっか、ありがと」


その言葉が、俺の心に響く。


後悔ばかりで何も残ってないと思ってた。


それでも、俺のやってきたことに意味はあったんだと。







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