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うさぎさんを拾う

植え込みに転がるように飛び込んだ俺は、改めてその生き物を確認する。


暗闇でよく見えないが、ふわふわした触り心地がして気持ちいい。


「大丈夫か? 生きてるか?」


「プー」


「……よかった、生きてたか。それにしても可愛らしい鳴き声だったな」


「プスー」


ひとまず、明るいところに行き、その姿を確かめる。

すると、その生き物は……黄金色の可愛いうさぎさんだった。

その大きさは両手に乗るサイズと小さく、まだ幼体に違いない。


「お前、母親からはぐれちゃったのか? 流石に、ペットショップから逃げ出すことはないし……もしくは迷子かな? まさか、誰かが捨てたとか?」


「プー」


すると丸いお目目をくりっとして、俺に視線を向ける。

その姿に、俺の胸がときめく……可愛い。

えっ? うさぎって、こんなに可愛いの?

今まで間近で接したり、見たりしてこなかったけど。


「まあ……とりあえず、うちで保護するか」


誰か探しているなら、後日この辺りで張り紙とかあるだろう。

そうじゃなかったら……どうするかね?



二階建てのアパートに着いた俺は、こっそりと部屋へと戻る。

なるべく、他の住民にはバレたくないからだ。

一応、ペットは禁止になってるし。

もちろん、ハムスターくらいなら良いとは言ってたけど。


「ただ、うさぎはわからないし……それに、まだ飼うと決まった訳じゃないし」


「プー?」


「うっ、そんな可愛い瞳で見ないでくれ……」


「フスフス」


「ぐぉぉぉ……」


俺の体の匂いを嗅いで、何やらフスフス言ってる!

何これ!? めちゃくちゃ可愛いんですけど!?


「と、とりあえず、まずは洗うか」


風呂場に行き、シャワーで全体を洗い流していく。


「あれ? そういや、洗って良いのか?」


「フスー」


その様子は気持ち良さそうで、嫌がっている感じには見えない。

だが、流石に洗剤系を使うのはやめておこう。

洗い終えたら、洗面台の横のスペースに置いてタオルで拭く。


「よく拭いて……ドライヤーして。どうだ? 熱くないか?」


「プー」


ブォーという音と共に、よく乾かしてやる。

相当賢いのか気持ちいいのかわからないが、大人しくされるがままになっていた。


「よし、乾いたな」


「フスッ」


「このまま、ここで待てるか?」


「フンスッ」


少し元気が出たのか、その顔は得意げな表情に見える。

そんなはずはないが『ふんっ、当たり前じゃない』とでも言っているかのようだ。

うさぎには声帯がないから、確か鼻を鳴らして意思表示をするとか。


「良い子だ。それじゃあ、お前の寝床を用意しないと」


部屋に戻った俺は、ひとまずダンボールの中に毛布を入れる。

一緒に皿に入れた水を入れ、常温で置いてある人参を用意しておく。

用意を終えたので、うさぎを抱っこして、そのダンボールの中に入れる。


「フンフン……」


「おっ、お部屋確認か?」


顔を段ボールにスリスリして、しきりに辺りを見回している。

そういや、うさぎは縄張り意識が強いとか聞いたことあったな。

なるべく、多頭飼いをしないほうがいいとか。

すると、満足したのかこちらに顔を向けてくる。


「フンスッ」


「おっ、気に入ったかな? さて、ご飯は食べれるか?」


ダンボールの中に、直接人参を持った手を入れると……食べ始めた。


「シャクシャク……シャクシャクシャク!」


「おおっ、勢いがいいな。よしよし、食べられるなら良かった」


それにしても食べている姿も可愛い。

何か、心が洗われるようだ。

そのまま眺めていると、あっという間に1本分の人参を食べきる。


「足りたかな?」


「フンスッ!」


「足りたみたいだな……ふぁ……安心したら眠くなってきたな。まだ夜の十時半だが、ひとまず寝ることにするか」


俺はダンボールの上に、少しだけ隙間を開けて毛布をかぶせる。


確か水は警戒心があると飲まないと聞いたことあるし、彼らは暗い方が落ち着くらしい。


部屋の電気を消し、俺も布団の中に入る。


すると、いつもと違い……すぐに気持ちいい眠気がやってくる……。


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