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バズりと効果の片鱗

 どうにも照れくさくなり、俺は天野さんから距離をとる。

 いかんいかん、良い匂いがしたとか思ってはいかん。

 あの人(水無月さん)にも言われたではないか。


「コホン……そういえばお昼とかはどうするのかな?」


「ふぇ? え、えっと、お邪魔でしょうか?」


「いや、そういう意味じゃないよ。今日は夕方まで予定ないし。ただ、いるなら何か買ってこようかなって」


「あっ、あの……私……」


「どうかした?」


 すると、何やらもじもじとしだす。

 その姿に、何やら既視感を覚える。

 前にも、こんなことがあったような……小さい女の子が俺に何かを——。


「私、料理を作っても良いですか!?」


「へっ? ……え、えっと?」


「じ、実は、ここにくる前に買い物をしてきて……」


「そういや、何か袋を持ってたね」


「はいっ、なので作らせてくれないかなって」


「いや、悪いよ」


「悪くないです! お礼に作らせてください!」


 その目はキラキラ輝いていて、とても断れるような状態じゃない。

 なので、ひとまず受け入れることにした。


「わ、わかったよ。ただ、お礼ってなんだろ? 俺がお礼をするならわかるけど」


「あっ……サ、サクラちゃんを撫でさせてくれるお礼ですっ!」


「いや、それならサクラにお礼をって話に……」


「い、良いんですっ! 作らせてくださいっ!」


「わかった、わかったから落ち着こう、ねっ? ここ、一応アパートだから」


 おじさん、通報されたら困っちゃうので……いやまじで。

 最近は色々と物騒な世の中だし。

 ダンジョンや魔物のせいにして、犯罪を犯したりする者もいるくらいだ。


「す、すいません……じゃあ、作りますねっ」


「わかった、ありがたく頂くよ。台所にあるのは好きに使って良いから。調味料と包丁と、適当な野菜しかないけど」


「大丈夫です、色々と買ってきましたから。それじゃあ、お借りしますね」


 そういい、ご機嫌な様子で台所に立つ。

 まあ、台所といっても玄関前の通路と一体化しているタイプだが。


「……俺の部屋で女の子が料理してら」


「カズマさん? 何か言いましたかー?」


「い、いや、なんでもない!」


「そうですか。何か食べられない物はあります?」


「ううん、特にはないかな」


「了解です、それなら安心かなぁ……慣れてないけどがんばろっと」


 そして、彼女がおもむろに髪を後ろで縛ってポニーテールにする。

 その姿が、最近見た誰かと重なって見えた。


「……何処だ? どこで見た?」


「フンフン……」


 考え事に集中していて、サクラの接近に気づかなかった。

 まあ、後で考えるとしよう。


「おっ、サクラ。お部屋は気に入ったか?」


「フスッ」


「そうかそうか、そいつは良かった。きちんと、天野さんにお礼をしないとな? ほんと、良い子だよ」


「フンスッ!」


 どうやら、サクラも天野さんが気に入ったらしい。


「そういや……昨日上げた動画はどうなってるかな」


「プー?」


「ほら、昨日の夜に投稿したやつだよ。とりあえず、確認するか」


 自分のパソコンを立ち上げ、自分のyoutubeを開くと……。


「……はっ?」


 そこには、登録者数一万五千超えと、再生回数七万超えという文字があった。


「い、いやいや、昨日は五千だったじゃん……えっ? 三倍になってるのだが?」


 ひとまず、震える手でコメント欄を見てみる。


『待ってましたっ! ツンツンしてるぅぅ!』

『キャァァァ! 可愛いっ! もふもふしてます!』

『何これ!? 疲れが取れていくんだけど!?』

『あぁ、ありがたや……これで、明日からも生きていけます』

『ァァァァ! 可愛いィィ!! とてとてしてたまらん!』

『足が動くようになりました! ありがとうございます!』


 とてもじゃないが読みきれないけど、大体そんな感じの文章が多い印象だ。

 まさか、こんなに反響があるとは思っていなかった。


「可愛いはわかるが疲れが取れるか……いや、俺も実際取れてるな。ただ、最後とかはアニマルセラピーとかいうレベルを超えているような気もするが。えっと、Twitterの方は……うげぇ」


 ついこの間までフォロワー数が数百だったのに、七千人に到達していた。


「これは、大変なことになってきたぞ……」


 無論、何十万といるインフルエンサー達にとっては大したことのない数字だろう。

 ただ、つい最近まで数百人だった俺からしたらえらいことである。


「プー?」


「サクラ……思ったより、時代は癒しを求めているようだぞ」


「フンスッ」


 まるで『そんなのしーらないっ』とでもいうように、俺の膝に乗る。


 俺は心を落ち着かせるため、サクラの毛並みを撫でるのだった。






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