動画を撮る
夕方まで時間があったので、早速配信をしてみることした。
部屋に掃除機をかけ、カーテンなどを閉める。
「おっと、その前に本人に許可を取らないと。サクラ、ちょっと良いかな?」
「プー?」
俺が声をかけると、ダンボールから出てトタトタと寄ってくる。
「実は、サクラのことを配信したいんだ。言ってもわからないとは思うけど……そしたら、みんな癒されるかなって」
「フンスッ!」
その表情は『仕方ないわねっ!』と言っているように見える。
俺の思い込みかもしれないが、多分合っているような気がした。
「ありがとな。それじゃあ、早速撮っていこう」
「フスッ」
カメラを設置して、その前でサクラを膝の上で抱っこする。
「さて、俺のyoutubeチャンネルはどうなって……はっ?」
動画を撮る前に確認しようと思ったら、そのチャンネル登録数が五千人を超えていた。
視聴回数も、軽く三万回を超えている。
いわゆる、アマチュアYouTuberの仲間入りである。
「いやいや、一昨日まで数百人だったじゃん! ……ハルカちゃんの影響が、ここまで凄いとは」
「プー?」
「……いや、もちろんハルカちゃんの影響は大きい。でも、それだけじゃない。認知度は高くしてくれたけど、チャンネル登録までしてくれたってことは、サクラ自体に興味があるってことだ」
「フンスッ」
「あらら、得意げな表情だな? でも、凄いことだ。よしよし、これならやる意義もありそうだな」
そんな中、Twitterの方も確認してみると……フォロワー数が跳ね上がっていた。
これも、ハルカちゃんの影響だろう。
「うわぁ……迂闊なことを呟けないぞ。とりあえず、うさぎさんを飼うことにしたことを伝えて……配信をすることを決めたと」
もちろん、今のところ収益化はしない方向ということも書いた。
あくまでも個人的な意見だが、動物で収益化をしたくはない。
もちろん、そういった方々を否定するつもりはない。
愛情がない訳じゃないし、編集作業だって楽ではないし。
ただ、今回の俺の目的はそれじゃない。
「確かにお金はないけど、それとこれとは話が別だ……よし、これでいいか。サクラ、動画を撮っていくぞ?」
「プー!」
多分、許可が出たのでボタンを押す。
「えー、皆さん、こんにちは。前回はご協力を頂きありがとうございました。どうやら、飼い主はいないようなので私自身が飼うことにしました。そんな中、配信をして欲しいという要望が多数きました。なので、少しずつ配信をしていこうと思います。もし気になった方は、ご覧ください」
別に無理にチャンネル登録してもらうつもりはないので、簡単な挨拶で済ませた。
そして、サクラを膝から降ろし、部屋んぽをさせる。
「スンスン……トタトタ」
あちこちを嗅いでは、ほこほこと部屋の中を歩く。
その姿を見るだけで、なにやら心が洗われるようだ。
「サクラ、ボールはどうかな?」
サクラに向かって、テニスボールを転がすと……。
「プー!」
「おおっ、激しいな」
ほりほりと掘ってはボールが転がり、それを追いかけてほりほりする。
まさしく、いたちごっこの状態である。
「楽しいか?」
「フンスッ!」
どうやら、本人的には満足らしい。
その証拠に、部屋の中でジャンピングを始めた。
確か、ご機嫌な時にジャンプをすると書いてあったな。
「なるほど、ボール遊びは可と……さて、次はおやつをあげるか」
昨日ペットショップで買った齧り木を取り出す。
すると、物凄い勢いでサクラが突撃してくる!
そして、俺の足元をぐるぐる回りだす。
「フンフン! ……フンスッ!」
「わ、わかったから、 少し落ち着けって」
この木は、うさぎさんが好きな匂いを発するらしい。
だから、興奮しているのだろう。
そのまま、カメラの位置まで誘導して……直接、手から齧らせる。
すると、凄い勢いで齧っていく。
「カリカリカリ! ……カリカリ!」
「……おお〜凄いな。サクラさん、歯が見えてますよ?」
「フンフン!」
そんなことは御構い無しに、次々と木に齧りつく。
どうやら、相当気に入ったらしい。
「さて、初回はこんなもんかな」
「プー?」
「ああ、大丈夫だよ。気がすむまで遊んでなさい」
「フンスッ!」
木に夢中になってるのを横目に、撮った動画を確認する。
そして、面接の時間まで編集作業をするのだった。




