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10/24

独白

家に帰った俺は、自分のお昼の前にサクラの分を用意することにした。


新しく買ったぽりぽりタイプの餌と、チモシーという草を皿に入れる。


「ほら、サクラ。食べられるかな?」


「スンスン……フスフス……ぽりぽり……フスッ」


最初はおっかなびっくりしていたが、一度食べると勢いよく食べ進めた。

うさぎさんは個体によって好みがあると聞いていたが、これでひと安心である。


「あとはペットシーツを敷いてと……そういや、この子は賢いよなぁ」


何も言っていないが、置いた新聞紙の上でうんちやおしっこもしてくれたし。

俺の言葉にも反応するし、まだ幼いのに中々である。


「プー?」


「ごめんごめん、気にしないで食べてな」


「フスッ」


ペットシーツを置いたら、今度は自分の飯にする。

といってもただのカップラーメンだが。

お金がないので、節約生活である。


「ズズ〜……さて、どうしたもんか」


稼ぐにはアルバイトや正社員になる必要がある。

だがしかし、今の俺の状態では厳しい。

なにせ一年のブランクがあるし。

そんな中、テレビを流し見していると、とある女の子が映る。


「おっ、ハルカちゃんだ……いやはや、立派になって」


そこにはダンジョンにて、薙刀を振り回して魔物を退治している彼女がいた。

巫女さんの格好に長い黒髪をポニーテールして、鮮やかに立ち回っている。

その姿は、見るものを魅了する。


「探索者にして配信者か……相変わらず、アイドルみたいな人気だな」


今やダンジョンは、人々の生活に欠かせないものになっている。

昭和後期、世界中で経済が崩壊しそうになった時、ダンジョンは現れたとか。

そこから魔物が溢れ、さらに混乱に拍車はかかったが……。

不幸中の幸い、そのおかげで世界が一時的に協力体制になった。


「それにダンジョンには、未知の食材や水に石油なんかもあったとか」


それにより人々は飢えを凌ぐことができ、戦争も回避されたとか。

まあ、今ではその資源の取り合いで揉めてるんだけど。

それでも、問題になるのはまだまだ先らしい。


「そして、探索者が生まれたんだよなぁ。」


銃も大砲も効かない魔物を直接攻撃で倒した時、身体に力がみなぎったと。

そして、次々と倒していくと更に強くなっていったとか。

しかしそれはダンジョン内、または魔物相手だけに発揮される力だ。

人に対しては使えないし、ダンジョン外で使うには条件がある。

なので最強の探索者も、普段はただの一般人だったりする。


「それから時は過ぎて、今ではみんなの憧れ職業か」


どんな人でも一躍有名になれるし、一攫千金のチャンスもある。

政府が人を雇って頼んだり、自ら望んで足を踏み入れた者もいる。

人それぞれ、色々な理由があって探索者になったのだろう。


「そこから派生して、今では配信者か……」


人は慣れる生き物だ。

今ではダンジョンが日常化して、その危険性や魔物とかに甘くなってくる。

それを危惧した政府が、配信という形で全世界に公開することにした。

同時に高位探索者には報酬も払い、配信者達も投げ銭などで稼ぐ時代だ。

年齢や性別問わず、誰でもできるのは良い点だろう。


「……俺も、あの中にいたんだよな」


五年前までは、俺も探索者兼配信者としてやっていた。

しかし強さの限界を迎え、夢半ばで諦めてしまった。

無論、両親の介護をしなければならないという理由もあったが。

ただ、それは言い訳に過ぎない。

俺は結局、周りの人達が結果を残していくのを見るのが辛かった。

それ以来、探索者や配信者関係の映像は見られなくなったっけ。


「そういえば、今は普通に見られてるな……なんでだ? 今までは、すぐに消したりチャンネルを変えたりしてたのに」


今もテレビでは活躍してるシーンが流れているが、俺の心は穏やかだった。

もちろん羨ましいとか、なんで自分はとか思ったりはする。

ただ、今までよりはマシになっていた。


「プー!」


「おっ、食べ終わったか」


「フスフス……プスー」


とたとたとやってきて、ソファーに座っていた俺の膝に乗る。

そして、すぐに目を瞑って寝てしまった。


「……もしかしたら、サクラのおかげかもな」


この子がいると、何やら安らぎを感じる。

それが、俺の心を穏やかにしてくれたのかもしれない。


「そういえば、配信を見てた人達も癒されたとか言ってたな」


無理もないことで、今の世の中はストレス社会だ。

格差はあるし、どうしたって変えられない状況はある。

そんな中、癒しの動画とかは需要がある。


「……サクラの配信チャンネルでも作るか」


そうしたら、それを見て癒されてくれる人がいるかもしれない。

もしかしたら、俺みたいに苦しんでる人を助けることも。


「俺は元々、誰かに勇気を与えたくて探索者になった。こんな自分でも、やればできるんだって」


俺自身の力ではないけど、サクラに協力してもらったら出来るかもしれない。


「それにハルカちゃん、頑張っていたな……今のあの子が、俺を見たらなんて言うかな? 結局、連絡とかは来なかったけど」


……よし、情けないこと言ってないで行動を開始しよう。


そんなことを決心しつつ、俺はサクラの頭を撫で続けるのだった。





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