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64 私のお友達〜ルビアナ〜

魔法学校1年1学期の出来事です。

※※※※※※※※※※


 私はルビアナ・サザストンですわ。魔法学校に通う1年生よ。お父様は子爵だけど、帝国と貿易してるから、うちはどの貴族よりもお金持ちなの。下級貴族だけど、魔法学校ではみんなが仲良くしてくれるのよ。


 私のお友達はアニータちゃん。貴族学園時代からの付き合いですわ。男爵令嬢だけど、しっかり者で、お金目当てに近づいてくる子たちとは全然違って、本当のお友達よ。


 それから、もう一人。手紙を送り合う大切なお友達がいるの。レティシアちゃんよ。明るくて、大人びているようで、ちょっとうっかりさん。でも、双子の弟のリョウ君が亡くなってから、変わってしまったの。今はゴールドウィン公爵令嬢として、王太子様の婚約者候補になってしまったわ。


 久しぶりに魔法学校で会った時は、驚きましたわ。意地悪な上級貴族は、「綺麗だけど地味な怠け者の婚約者候補」って陰口をたたいてたけど、そんな噂とは全然違う。

 子供の頃と変わらず、キラキラした金色の髪に濃い紫の瞳で、静謐な美しさをもった美少女になってたの! まるで、聖女リシア様みたい。あ、もちろん描き直される以前の肖像画の、本物の聖女リシア様の方ね。


 それにね、成績も良くなってるの! 何があったんですの?! あんなに、さぼり魔だったレティシアちゃんが! ええ、もちろん、勉強をするのは素晴らしいことですわよ。でも、……無理してない? 将来は平民になるって笑ってたレティシアちゃんが、ちょっと恋しいですわ。


 私の家でも、いろいろあったんですの。最近まで帝国が王位争いをしていたでしょう? その間、貿易がやりづらい時があったの。お店の経営が危ぶまれて大変だったわ。


 でも、ようやくそれも落ち着いて、新しく皇太子になった第三皇子様が、サザストン商会を今まで通り優遇してくれることになったの。これでお母様の機嫌も一安心だわ。


 それで、今日は、なんと、その帝国の皇太子妃様に、お母様と私が秘密裏に招待されているの。帝国の皇宮に! 

 どうして? なぜ、私まで? 


 皇太子になった第三皇子様は、女好きでハーレムに大勢の美女を集めてた方でしょう?! もしかして、私のことを……。そう考えて怯えていたら、お母様がすぐに否定してくれたわ。

 以前は女の人をたくさん両手にぶら下げてたけど、今では、唯一人のお妃様をとても大切にしてるんですって。

 ああ良かった。

 でも、それじゃあ、何のために私を?



 そんなことを考えていたら、謁見の時間になってしまいましたわ。


「挨拶はいいから楽にしてちょうだい」


 皇太子妃様のお部屋に入ったら、あまりの豪華さにびっくりしましたわ。黄金尽くしの家具に、いたるところに宝石が埋め込まれた壁紙。それに、あのカーテンは最高品質の魔物貝の糸を使っているのじゃないかしら? 


 でも、何よりも豪華なのは、きらびやかなドレスを着こなす皇太子妃様ご自身だわ。

 ああ、美の女神のようなお方。


 キラキラした黄金の髪に鮮やかな紫の瞳。そして、完璧な女性らしい体つき。どんなに捜しても、どこにも欠点がない。

 お母様と一緒にぼうっと見とれてしまいましたわ。

 側にいた侍女にうながされて、あわてて挨拶しましたの。


「サザストン商会のミレーヌとその娘のラビアナです。本日は、美しい皇太子妃様にお目通りがかないま」


「挨拶は良いって言ってるでしょ! もうっ、はやく教えてちょうだい。あまり時間はないのよ。さあ、座って、座って。お友達ちゃん」


 お母様の言葉をさえぎり、皇太子妃様はいきなり私の手をつかんで椅子に座らせたの。びっくりしていると、皇太子妃様自身も前の席に座って、テーブルに身を乗り出して、


「で、あの子はどんな子なの? あなたは友達なんでしょう? 聞かせて。かわいい? そりゃあ、かわいいのは当然でしょうけど、それから、好きなのは何かしら? お兄様はお金が好きって言ってたけど、女の子なんだから、宝石をもらうとうれしいわよね」


 え? ええ?


 質問攻めにされたけど、どうしていいのか分からない。

 隣に座ったお母様が、小声で言うの。


「お友達のレティシアちゃんの話をしなさい」


 え? なぜ、レティシアちゃんの……? 


 ! あ、そうか。

 皇太子妃様の綺麗な黄金の髪と紫の瞳を見て気がついたわ。レティシアちゃんと同じ!


 ああ、そうだわ。この方は。

 有名な芝居の「悪女オリヴィア」ですのね。


 お芝居のオリヴィア役は、醜くて太った年寄りの女の人が演じていたけれど、実際は美の化身のような方。そうお母様が言ってたわ。


「え、あ、あの、レティシア様は、とても、かわいらしくて、優しくて、それに、大人びてますけど、少し抜けてるところもあって、あっ! 抜けてるなんて言いましたけど、そこが、よりかわいらしい感じで、その、」


 私のたどたどしい説明を皇太子妃様は、少しも聞き漏らさないように真剣にうなずきながら聞いていた。


「うんうん、そうね。やっぱりかわいいでしょうね。勉強は? あら、文字を読むのが苦手? ……そこは似なくていいのに……。でも、算数は得意なのね。え? なんですって、魔法学校の授業免除?! さすが私のむ……弟の娘ね。そう、私の姪よね」


「はい! それに、レティシアちゃんの契約獣はとても綺麗な白猫なんです!」


「まあ! 白猫ですって! 私のパールと同じよ! 出ておいでパール!」


 皇太子妃様は契約獣を呼び出しましたの。

 それは、猫ではなくて、真っ白で美しい巨大なユキヒョウ。初めて見た私たちは、その大きさに驚いて言葉を失ってしまいましたわ。契約獣は魔力が多いほど巨大化するって言われてますもの。この方の魔力はどんなに豊富なのかしら。



「あなた、気に入ったわ! これからも帝国との貿易は、サザストン商会に独占させてあげる。レティシアをよろしくね」


 忙しい皇太子妃様との謁見の時間は、あっという間だったけど、良い成果を出せたみたい。お母様は帰りには、にこにことご機嫌になって、たくさんお買い物させてくれたわ。やっぱり、帝国のお洋服はどれも素敵ですわね。


 ああ、そうそう、あとね、皇太子妃様にはオスカー様のことをたくさん聞かれたわ。

 レティシアちゃんとオスカー様は想い合ってるけど、王太子様の婚約者候補になってるから我慢してるって言ってしまいましたの。


 本当のことだから、別にいいですわよね?



※※※※※※

この後、オリヴィアは「紫の姫と黒の騎士」の演劇を作らせて流行らせます。

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