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27 二学期

「おはよう! リョウ君!」

「リョウ君! 聞いてくれよ。おれさ、」

「リョウ君! どうだった?」


 貴族学園に登園すると、人気者のリョウ君はクラスメイトに囲まれた。二か月ぶりに見た子供たちは、みんな少し背が伸びたみたい。

 私? あんまり成長してない。クラスで一番背が低い。


「みなさん、元気でよろしいこと。さあ、席について、宿題を提出してくださいね。今日は、久しぶりの学園だから、テストをしましょう!」


 マーガレット先生の意地悪そうな笑顔に、クラスメイト全員がブーイングした。久しぶりなので、みんなちょっと羽目を外してる。


「な! あなたたち! 夏休みの間に貴族としての礼儀を忘れたのですか?! いいですか、今日はテストの後、礼儀作法もみっちり仕込みますからね!」


 あーあ。これがなかったら、学園は楽しいのにな。私って、前世14歳なんて忘れて、最近すっかり本物の園児になってきた。




 今日もいい天気だなぁ。と、休憩コーナーで水を飲みながら、走っているリョウ君を眺めている。


 運動会は終わったけど、訓練は終わらない。契約獣ダンジョンに行くために必要なのだ。上級貴族は護衛役を6人連れて行けるけど、私達下級貴族は3人だけだから。運動会と一緒だ。私たちは自力で身を守らないといけない。


 でも、1学期と違い、2学期はタンポポ組の耐久走に、薔薇組の園児が数人混ざっている。

 運動会終了後、自分たちも訓練がしたいと言い出した子がいたのだ。貴族として、自分の足で契約獣を探したいと。


 リョウ君に並んで薔薇組のオスカー様が走っている。その少し後ろを薔薇組のロレンス様。それから、ポール君、アニータちゃんと続く。



「あの二人、とってもかっこいいですわ」


 私の隣に座ったルビアナちゃんが言った。私はうなずいて、もう一度挑戦するために椅子から立ち上がった。

 休憩は終わり。わたしもがんばらなきゃ。少しでも体力をつけて、勇者の遺産を探すのよ。


 目標を見つけた私は、貴族学園生活を前向きに送ることにした。


 体育の時間、そして、いつもの勉強、2学期の行事のお遊戯会の歌と劇の練習で、私達の貴族学園生活は充実して過ぎて行った。





「光の女神は〜叶えてくれた〜♪ 聖女の願い〜勇者を呼んで〜♪」


 休み時間もタンポポ組は、お遊戯会で披露する合唱の練習をしている。


「聖女リシア〜心優しく〜かしこくきれいな〜♪」


 楽譜どおりに歌っていると、ルビアナちゃんが「待って」と止めた。


「その部分、ほんとうは、『聖女リシア〜 金色の髪に〜 紫の瞳〜』なんですって、お母様が言ってたわ」


「あ、それ、ぼくの母上も言ってた。歌詞が変わってるって」


「今の王様が変えさせたんだって。ほら、王女様は桃色の瞳だから」


「あ……」


 部屋に微妙な空気が流れた。王室にとって紫の瞳は禁句らしい。


 アニータちゃんが、私の方をちらっと見て手を叩いた。


「さあ、もう一度練習よ。本番では、うちのパパも見に来てくれるんだから、失敗は許さないわよ!」


「聖女リシア〜 心優しく〜」


 みんなで練習を再開した。


 王族は勇者の予言によって守られている。

 王家の血筋に聖女リシアが生まれかわるという予言だ。

 その血筋を守るために、光の精霊王はこの国に結界を張ってくれた。人々が魔物におびえず安全に暮らせるのは、世界でもこの国だけだ。国王だけが結界の契約を破棄することができる。どんな暴君であろうとも、国王はその契約により守られる。この国では国王の権力はとても強い。


 聖女リシアの生まれ変わりを誕生させるという契約を忘れないために、王宮には聖女リシアの肖像画が飾ってある。

 でも、その絵は、今の国王が王妃と結婚した後、描き直された。王妃フローラをモデルにして。

 それまで飾ってあったのは、美しくも醜くもない国王によく似た金髪に紫の瞳の聖女リシアだったらしい。

 でも、新しく描かれたのは、王妃フローラそっくりの美女。ピンク色の髪と目をしたフローラ妃に影響されて、聖女リシアの金髪は赤みが強く、瞳は赤紫に彩色されたそうだ。


 ちなみにその新しい絵は、今年4歳になる王女にもよく似ている。

 王宮の侍女たちは、王女を「聖女リシアにそっくり」と言って甘やかしているそうだ。


 ってなことを、後でルビアナちゃんから教えてもらった。

 ルビアナちゃんのお母様の商会は、王宮によく出入りしてるんだって。


「歌は何とかなるとしても、問題は演劇ね」


 アニータちゃんは芸術分野が好きなのか、すっかりクラスを仕切ってる。


「タンポポ組の出番はこれだけよ。まずは、魔王。そして殺される村人の役ね。それから、勇者パーティを見送る町の人の役。最後に、王子と結婚する聖女リシアに歓声を送る城下町の人の役」


 アニータちゃんの後ろで、ルビアナちゃんが綺麗な蔦文字を白板に書いた。


「ぼく、魔王の役をやりたい」

「俺も!」

「ずるい! 僕もやる!」


 魔王役は大人気らしい。


「姉さまは何の役がいい?」


 リョウ君が聞くから答える。


「城下町の人の役かな。笑顔で拍手するだけでいいんでしょ。セリフもないし。衣装も普段着でいいから」


 やる気はぜんぜんないかな。

 だって、勇者とか、聖女とか、女魔法使いも女剣士の役も全部、薔薇組がするって決まってるんだもん。つまらないよね。タンポポ組にはセリフのある役はない。

 魔王でさえ、「うぉー」しか言わないし、殺される村人は「うわー」で終わる。


 この勇者の劇と歌を発表するお遊戯会が、来月開催される。


 あんまり興味はないんだけど、こうやってタンポポ組のみんなと一緒にやるのは、楽しいね。

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