表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/69

20 魔石と魔力

 騎士さんたちの剣術大会の前に、タンポポ組の競技の障害物競走があった。私はやっぱりビリになったけど、リョウ君は大活躍したよ。障害物? どこそれ? みたいな顔をしてオリンピック選手のような走りを見せてくれた。ほんとにもう、うちの弟って人類最強になれるんじゃない?


 疲れてテントに帰ると、オスカー様が気の毒そうな顔をして、私にアイスクリームを渡してくれた。


「保護者会で出される冷たいクリームだよ。今年は氷の魔石がたくさん手に入ったから、子供の分もあるって持ってきてくれたよ。これでも食べて元気出して」


「ありがとう」


 甘いミルク味のアイスクリームは、すさんだ心を慰めてくれる。


 あ、これを冷やした氷の魔石は、この前私が魔力を補充したやつだね。


「ねえオスカー様、契約獣が手に入ったら何ができるの?」


 3口でアイスクリームを食べ終えたリョウ君が、テーブルに置かれた黒い馬のぬいぐるみを手に取りながら、オスカー様に聞いた。


「契約獣は魔力を安定させるんだ。俺たち子供は魔力が不安定だから、まだ使っちゃだめだけど。契約獣が魔力量を調整してくれるようになると、安全に魔力が使えるようになるんだ」


 ん?


「契約獣がいないと、魔力を使っちゃダメなの? 魔石に補充できないの?」


「できなくはないけど、かなり危険だよ。魔力を使いすぎると命にかかわるから。子供のうちは魔力量の調整ができない。それで、平民の子供で、お金のために魔石に魔力を補充して、死んじゃった子もいるみたいだよ」


 なんですと?


 母様は私に、3歳の時から魔力補充させてるけど……。


「え? それじゃ、姉さまは?」


 目を見開いて驚いているリョウ君に、私は自分の唇に人差し指を当てた。


 そういえば、母様はリョウ君には魔石の魔力補充させてないよね。


「どっちにしろ、まだ俺たちは何の魔力を持ってるかもわからないからね。卒園後に魔力鑑定を行って初めて、適性が分かるんだ。そしたら、貴族の務めとして、結界の魔道具に魔力補充できるようになる。誉れあることだよ」


 魔力鑑定……。家にある魔道具で3歳の時に母様にやられたな。そういえば、リョウ君はまだ鑑定してない。


 嫌な考えが頭に浮かんだけど、気にしないように首を振った。


「姉さま……」


 心配するリョウ君に私はにこりと笑った。


「あ、ほら、騎士さんが戦うよ!」



 剣術トーナメントは、途中までは辺境騎士の圧勝だった。

 近衛騎士が出てくるまでは。


「今の騎士さんの動きは変だったよ」


 剣を取り落として負けを宣言した騎士さんに、リョウ君はがっかりして不満を漏らした。


「ああ、そうだね」


 オスカー様は、ものすごく苦いものを口に入れてるように顔をゆがめた。


 そっか、そういうことか。


 王家の用意した近衛騎士には、勝ったらだめなんだね。

 オスカー様がそう命令してたんだ。


 後ろで観戦していた騎士さんたちも、悔しそうに肩を落とした。


「さあ、優勝者が決定しました! 皆さんの予想通り、王太子ビクトル様の護衛騎士! 近衛騎士副隊長のアーサー様です! 素晴らしい剣技でした。皆さま、拍手を!!」


 アナウンスの声で、わぁーっと歓声が響く。


 王太子が指令台に上って、優勝旗を近衛騎士に渡した。近衛騎士は恭しく受け取った。


 その隣で、対戦相手の辺境伯の騎士さんは、地面を見ていた。



 納得できない競技がいっぱいあったけど、運動会はこうして終わった。最後に指令台の上に国王が立って、閉会の言葉を唱えた。


「終わったね」

「うん、タンポポ組は負けちゃったけどね」


 勝ち負けがあるなんて知らなかった。国王がいきなり、「勝者、薔薇組!」って宣言した時は、びっくりしたよ。

 なんでタンポポ組の負けなの? 訳わかんないよ。


 不満はあふれるほどあったけど、でも、楽しかった。

 タンポポ組のみんなはとてもいい子だ。みんなが一緒になって一生懸命やり切ったよ。みんな、声を枯らして応援したよ。

 絆が強くなったね。


「ぼくね、タンポポ組でよかった」


「うん、姉さまも」


 私達は手をつないで家に帰った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ