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ポチグラ

 後日、契約の首輪とポチグラに荷物を乗せるための道具を買った。外で待っていたポチグラにショコラは首輪をつける。


「いい? 今日から名前はポチグラだよ?」

「ワフッ!」


 ディルは言った。


「嬢ちゃん。切り替え早いな。先日こいつの仲間をリーダー含めて殺しったってのによ」

「うっっっっ!」


「あはは、悪い悪い。だが気にすんな。人間と狼は違う。人間の感情で語るのはくだらねーってもんだ。


 グランは群れをなしてリーダーについていくがそれは本能でしかない。思い入れなどないさ。自分のパートナーくらいのもんだ。子供だって独り立ちさせるために噛みつくくらいだからな。そうなればもはや別のグラン。

 いつか違う群れ同士で戦えば殺し合う仲だ。リーダーを殺すこともある」



「わっわたしも……殺されちゃう?」

「そうならない為の首輪だ。ボスと手下の関係を主人と下僕の関係に変えるんだよ」


 その後、ポチグラの腕に荷物を乗せるための道具を通していく。リュックサックのような形になっていた。


「どう? 重くない?」

「わふっ」

挿絵(By みてみん)

「んー、どっち?」

「わふっ、ワンッ!」


 ポチグラは走り回った後、舌を出しながらショコラを見つめる。



「かわいいいいい!」


 ポチグラに抱きつくショコラ。ディルはショコラに言った。


「かわいがるだけじゃだめだ。ちゃんと躾し、訓練させることで関係はより強固となる。そして狩りにも参加してもらう。

 と言っても俺も訓練はしたことねーから見よう見まねだな」


 ディルがどうするかと考えている時、門の外に受付のお姉さんが走ってくる。


「おーい」

「なんだあんた。どうした」


「どうしたじゃないわよ。約束したでしょ? ご飯おごれって言ったのはあなたじゃないディル」

「ま、まぁそうだけどよ。今か?」


「そうよ。探したんだから。ショコラちゃんも来る?」

「いえっ! 私はお邪魔なので!」


「ふふ、変な気使っちゃだめよ。そんなんじゃないんだから」

「うっ……あはは。私はポチグラと一緒にいるので」


「そう? 行きましょ」

「あ、ああ。えーと」


「なに?」

「名前、なんだったか」


「そういえば……結構長いのに教えてなかったわね。ミリヤ。それが名前よ。

 フルネーム教えたほうがいい?」


「いや、いい。行こうミリヤ。安い所で構わねーからよ」

「はーい。好きなとこ入りましょ」


「お、おう」



 二人を見送ったショコラはドキドキしていた。


「どうかな。どうなるのかな! 楽しみだねポチグラ!

 でも、そういうのじゃないって言ってたし、名前も今更……

 ねぇ! みるくはどう……」


 振り向いても誰もいない。


「……いないんだった。まだ慣れないなー。早く見つけないと。ペット飼ったんだよって自慢するんだ」


 みるくの声真似をしながらショコラは言う。

「面倒は見れるのかショコラ。犬ってのは飼うだけじゃないんだぞ。

 ――って」


「ワウン?」

「なんでもないよ。私の、パートナーの話。今度紹介するからね」


「ワンッ!」



 ――その頃、ディルとミリヤは少し高めの店に座っていた。


「な、なぁ。ここ高いんじゃねーか?」

「いいのよ。対してお金の使い道もないのに溜まっていくんだから。こういう所で使っていかないとね」


「なんか場違いっつーか。冒険者なんかがきていいのかよ」


「誇り持ちなさいよ。冒険者も立派な社会の歯車でしょ。バカにされる筋合いなんてないはずよ。ほら好きなだけ頼みなさい。遠慮しないこと」



「あ、ああ。じゃあこれで」

「終わり?」


 ミリヤは机をトントンッと人差し指で叩く。するとウェイターがやってきた。


「これとこれとこれ。あー、それとこれも頂戴」

「お前、随分と食べるんだな」


「鈍感ねー……一品以外あなたの分よ」

「た、頼んでないぞ!」


「しっ、静かに。場違いでもマナーは守りなさい」

「あ、ああ」


「あなたが大食漢なことくらい知ってるわよ。何年一緒だと思ってるの。いつもギルドの食堂で皿いっぱいの肉を頬張ってるじゃない。

 あ、ちゃんと味わってよね。ちょっと高いんだから」


「お前……」

「ミリヤ」


「あ、あー……ミリヤ、ありがとな」



「どういたしまして。食べる姿勢で照明して頂戴」


 運ばれてきた料理を次々と口に運ぶ。ディル。それを楽しそうにみているミリヤ。


「気持ちよく食べてくれるじゃない。奢りがいがあるってものね。仕事外だから敬語使わなくていいのも楽。

 ショコラちゃんはどう?」


 ディルは一旦食事の手を止める。


「いい感じだ。強さに問題はない。あるとすれば心の部分だ。年相応の純粋さがな。多少命に対する耐性はあるがありゃ何かトラウマ抱えてんな。

 戦えなくなった兵士に近いものを感じる。だがグランを手なづけたことでその壁は越えられると感じている。

 ただ、躾の仕方が分からなくてな」


「私分かるわよ?」

「そうなのか。それなら話がはや……え?」


「言ってなかった? 両親は畜産業。その時にグランをしつけて管理に使ってたの」

「聞いてねー! っと静かにだったな。

 ……教えてくれねーか」


「いいわよ。どうせ当分はこうやって食事を繰り返すわけだし」

「ッッ、そうだな」


 後日、ディルはミリヤに教わった躾の仕方を今度はショコラに教えていく。


「そう、合図と共に戻ってくるようにするんだ。

 戻ってきたらうんと褒めてやれ。褒美も忘れずにな」


「はい! ポチグラ! 戻って!

 ――よしよしよし!」


「わしゃわしゃしすぎて毛並みが大変な事になっているがヨシ! ある程度の命令をこなせるようになったら実践に入るからな」


「わっかりましたぁー! っと、その前にミリアさんとはどうなってますか!」

「……仲は良くなった。お前のおかげでな。ふっとばされた甲斐があったってもんだ」


「告白は?」

「そんな勇気でねーよ」


「じゃあ、私が独り立ちする前にしよ!」

「はぁ?!」


「覚悟してるって言ったじゃん! いつか私、この街を出て探さなきゃいけない人がいるんだ。だから……その前に知りたい」



「……分かったよ。努力してみる」

「うん。見た目に似合わず奥手なんだからがんばってね!」


「言いやがったな? 忘れるなよ俺が無給なこと」

「うっ、それはほら、結果良ければ全てよしってことで……」


「都合いいな全く。ほら次!」

「はーい。行くよポチグラ!」


「わふっ!」

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