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トランプを教えてしまいました

俺の目の前には、何か考え事をしているマリオさんの姿があった。


「うーむ……」

「マリオさん。難しそうな顔をしてどうかしたんですか?」

「オセロとたこ焼きのおかげで、食堂にお客が増えたのは良い事なんだが、最近オセロ目的で来たのに、人気すぎて遊べなくてがっかりして帰るお客さんがいてな」

「なるほど。アルトと真剣勝負をしたい人、オセロをやってみたい人とか友達同士で対戦したい人とか、いろいろいますもんね」

「わざわざ立地の悪いうちの店まで来てくれたのに、帰ってしまうのも気の毒だ」

「まあそうですね……」

「オセロは素晴らしいゲームだ。年齢性別に関係がなく、誰とでも楽しめる。ルールが簡単なのに奥深い。ただ中にはオセロは強い者が勝ち続けるし、単純すぎてつまらないと考える人もいてな。そんな人たちも楽しめて、大人数で遊べる面白いげえむなんて他にないだろう」

「まあ……。ありますけど……」

「あるのか!?本当か!?」

「トランプとか」

「トランプ?一体なんだ、それは!?」

「作るには紙が必要なんですけど、柔らかすぎず硬すぎない素材でできた紙が欲しいですね。シャッフルができるように。それと印刷もできるといいですね」

「シャッフル?何だ?まあとにかく、いろいろな硬さの紙を持ってくればいいんだな?」

「ええ、まあその中から使えそうなのがあればそれで作れます」

「よし、わかった。集めてくる。それから印刷は問題ない」

「そうですか。分かりました」


印刷の技術はあるのか……。

って事は、本とかはあるのかな?

伝説の魔導書とかあったりしてな。


数日後、マリオさんがいろいろな硬さの紙を持ってきた。

「ヒカル、いろいろな紙を集めてきた。どうだ?使えそうなのはあるか?」

「そうですねぇ……」


ぐにゃぐにゃとマリオさんが集めてきた紙のサンプルを軽く曲げてみたり、触り心地を確認する。


「あっ……。これちょうどいいかも。マリオさん。これは高価で珍しい紙なんですか?」

「いや、その辺の店で売ってる。子供の小遣いでも買えるような安い紙だ」

「そうですか。ならこれでいきましょう」


俺はペンを使って、57ミリ×89ミリくらいのサイズになるように紙を切った。


「うん。まあこれくらいかな。マリオさん。この紙の片面しか使わないので、裏面は好きな柄にしてデザインを楽しめるのってのもトランプの特徴なんですけど、どんな柄にしましょうか?何でも良いですよ。何か好きな物とか」

「好きな柄か……。そうだな……。花とかどうだ?」

「花柄のトランプは良いですね。どんな花にしますか?」

「レインの花がいいな」

「レインさんと同じ名前の花があるんですね。レインの花は、どこで見られますか?」

「1階の店のカウンターの所に花瓶に入った黄色い花が飾ってあるだろう?あれがレインの花だ」

「ああ、あの黄色の花ですね。奇麗な花ですよね。レインさんの店にレインの花が飾ってあるってなんかいいですね。じゃあ俺がレインの花の絵を描きます」

「ああ」


1階で花瓶に入ったレインの花を見て模写してきて、レインの花の絵が完成した。


「こんな感じでどうですか?」

「良いじゃないか。それで次はどうするんだ?」

「このレインの花の絵柄が入った全く同じ大きさの紙を54枚印刷してください」

「54枚?半端な数だな。まあよく分からんが、おまえさんの言うとおりにするよ」

「お願いします」


翌日、レイン柄が入った面と何も描いてない面がある54枚の紙をマリオさんから渡され、俺はスペード、クローバー、ダイヤ、ハート13枚とジョーカー2枚の絵を描いた。

なかなかうまくできたのではないだろうか。


「マリオさん。できました。レインの花柄トランプの完成です」

「おお、これがトランプか。数字と何かの絵が描いてあるな。それでこれをどうするんだ?」

「せっかくなので、レインさんとアルトを呼んで、店が終わったら今夜4人で遊んでみましょう」

「おお、楽しみだ」


夜になり、店が閉まった後、4人でテーブルを囲んで椅子に座った。


「じゃあトランプの説明しますね。これがカードの種類です」


俺は54枚のカードを全部テーブルの上に並べて見せた。


「ちょ、ちょっと待って!こんなにたくさんの種類があるの!?とても覚えられないわ」

「そ、そうだ!これは無理だ!」

「大丈夫ですよ。落ち着いてください。すごく簡単ですから。まずはマークを見てください。黒色がスペード、クローバー。赤色がダイヤ、ハート。どうですか?」

「ま、まあそれくらいなら・・・」

「それで次。それぞれのマークの数字が1~13まであります。どうですか?」

「うん、理解できた」

「11をジャック。12をクイーン。13をキングと呼びます。で、残り2枚はジョーカーです。これだけです」

「まあなんとなくは分かったが……」

「トランプに慣れるため、まずは簡単なババ抜きからやりましょう」

「ババ抜き?」

「まずこのジョーカーを一枚だけ抜きます。で、カードをシャッフル」

「なんだそれは!?」

「ああ、これは……。ヒンズーシャッフルですね。カードをバラバラにしたい時にする一番定番のやり方です。トランプをするなら、これができた方がいいですね。後でやり方を教えるので、ヒンズーシャッフルの練習してください」

「ああ……。なんだか難しそうだな……」

「他にもシャッフルのやり方はあるんですけど、まあこれは無理に覚えなくてもいいです。ちなみにこれがリフルシャッフルです」

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ!?なんだ今のは!?」

「すごい!ヒカル、もう一回やって!」

「何が起こったの……!?」

「これがヒンズーシャッフル。こっちがリフルシャッフル」


三人とも目が点になって固まっている。

中学の時、マジシャンに憧れて練習したけど、リフルシャッフルまでしかマスターできなかったんだよな。

まあトランプの手品なんて簡単なやつ少ししかできないけど……。


「これでカードがシャッフルできたので、カードを配っていきます。相手に見えないように裏面のレイン柄の方しか見えないように配ります。誰にも自分の手の内を見せたらダメですよ」

「それで次はどうするんだ?」

「マークはどの組み合わせでもいいので、同じ数字が2枚あったらテーブルの上に置いてください。ハートの6とスペードの6、スペードの2とダイヤの2。こんな感じです」

「えっと……。これでいいのかしら?」

「そうそう。そんな感じです」


皆、きごちない動作だけど場に少しずつカードが出されていく。


「全部出し終わりましたか?」

「僕、終わったよ」

「私も終わったわ」

「俺も」

「じゃあこれで全員が終わりましたね。まずは誰からにしようかな」

「僕がやるー!」

「じゃあアルトからにしようか。アルト、レインさんのカードから好きなの1枚引いて」

「これにする」

「今、引いたカードと自分の持ってるカードで、同じ数字になったのある?」

「ある」

「じゃあ2枚テーブルの上に出して」

「うん」

「じゃあ次は、アルトのカードをマリオさんが1枚引いてください」

「わかった」

「同じ数字のカードはありますか?」

「……ないな」

「じゃあマリオさんは、それをそのまま持っててください。次は俺がマリオさんのカードを引きます」

「ありました。ペアのカードをテーブルに置きます。次はレインさんが俺のカードを」

「じゃあ……これにしようかしら。あっ、そろったわ。テーブルに置くのね?」

「で、またレインさんのカードをアルトが引く。この流れを繰り返していって、最後にジョーカーを持ってた人が負けというゲームです」

「つまりあれか。この中の一人だけが負けるって事か」

「そういう事です」


その瞬間、明らかにマリオさんの表情が曇ったのを俺は見逃さなかった。

……絶対、ジョーカーを持ってるな。


「じゃあ次は俺が引く番ですね。どれにしようかな」


マリオさん……。視線が右から2番目のカードばかり見てる。

あれ絶対ジョーカーだろ……。左にしよっと……。

ハート7。そろったな。


「僕、カードなくなったよー!」

「アルト、おめでとう。最初に抜けたね。アルトが1番だ」

「やったー」


次に抜けたのは俺だった。


「はい、俺、二番。後はレインさんとマリオさんの勝負ですよ。さあどっちが勝つか」


レインさんがマリオさんのカードを引いた。

あっ、ジョーカーがレインさんに渡ったな。

マリオさんの表情が明らかにホッとしてる。分かりやすいな。

レインさんが見えないようにカードの位置を変える。

マリオさんがレインさんのカードを引いた。

マリオさんの表情が明らかに歪んでいる。

またジョーカーを引いたのか。

安心したのは一瞬だけか。

レインさんが笑いをこらえている。

そして最終的に、この世界で初めてババ抜きで最下位になったのは、マリオさんだった。

「と、まあこんな感じです。これがババ抜きです。オセロより多くの人と同時に遊べます。どうですか?面白かったですか?」

「もう一回やらないか?今度は負けないから」

「もう一回やりたいー」

「面白かったわ」


どうやらマリオさん一家は、完全にババ抜きにハマったみたいだ。

他にもいろいろな遊び方がある事を知ったら、きっとまた喜ぶだろうな。

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