高尾明日香編エピローグ
目を開けたら、そこは、あの横断歩道だった。
慌ててスマホで時間を確認する。
やっぱり……。あの時から、時間が全く経ってない。
夢、だったの?いや、妄想?
その時、バッグの中で、なにかがピコンと鳴いた。ゲーム機だった。
『鈴(*>ω<*)さんから、フレンド申請が来ました』
これ……リンの……。夢じゃない?だとしたら……。
後ろを振り返った。たった今(?)出てきたばかりの路地が見える。
今行けば、間に合うかもしれない……!来た道を走って引き返した。
もう銃声が聞こえない。もう終わったの?
ドンッ
「……あっ」
路地の奥から飛び出してきた人と、ぶつかった。
「……あれ?さっきの人?」
「え?」
見ると、横断歩道でぶつかった人だった。
「あぁ……」
「この先に用事?なにもないけど?」
「し、知り合いが……」
「誰もいないよ。ここ危ないから、外出よう」
誰もいない……?そんなわけ……っ!
「お願い、通して!」
「もしかして、君、“あの人”を知ってるの?」
「え?」
「……そんなわけないか。ごめん」
あの人……って、澤山和馬のことだよね?
「パラレルワールド体験型プログラム」
「……っ!」
そう言うと、目の前の人が反応を示した。
「君も、被験者……?」
「えっ、『も』ってことは、あなたも?!」
「まぁ、うん。この先にいる人のこと、知ってるんだ」
「うん……知り合いの……婚約者さん……」
「東郷紗奈の」
やっぱり、そうなんだ……。
「死んでるよ」
「……っ!」
遅かった……。
「仕方ないよ。行こう。俺らが誰かに見つかるわけにはいかない」
「そ、そうだね……」
「ところでさ」
男の人は、わたしが、ぶつかった時に落としたものを拾った。
「これ、君の?」
「あ、うん」
「俺もやってるよ」
「ほんと?!……あ」
「ん?」
「えっと……被験者なら、わかる、かな?長谷川リン」
「あ、うん。あの天然みたいな子」
「そう!彼女、なんでかわかんなけど、このゲーム始めたの。それで……これ、リンなの」
ゲームの画面を見せた。もちろん、“鈴(*>ω<*)”というアカウントを。
「へぇ……。なぁ、この後、時間ある?」
「ま、まぁ……」
「よかったらさ、どっかカフェで話さない?」
「ぜひ!」