高尾明日香編③
「紗奈様」
「早かったのね、リン。ちょうどよかったわ。明日香、一緒に来て」
「えっ、わたし?!」
「えぇ」
なにが起こったの?
連れてこられたのは、町外れの大きな門の前だった。
「ここは?」
東郷紗奈だけじゃない。黒滝紅蓮、そしてゲームマスターの男がいる。
「……明日香、残念だけど、ゲームは終了よ」
「なんで?」
この様子じゃ、クリアした感じじゃない。
「あなたは頭がいいから、教えるわ。でも、今から話すことは、全部誰にも言わないと約束して」
「わかった」
…………
「……わかった。わたしはあっちの世界に帰ればいいのね」
「そういうこと。理解してくれて、助かったわ。あとは、この男が全部やってくれる」
「そう」
今聞いたこと……全部、簡単に理解できるものじゃなかったけど、いや、だからこそか。
誰かに軽々しく言っていいものじゃないこともわかった。
「行きましょうか」
ゲームマスターと、少し進んだ。
「……ねぇ」
「なにか?」
後ろを向いて、まだそこにいた彼女を見る。
「東郷紗奈、わたしがもう1度ここに来ることはできる?」
「普通にしてれば無理」
「じゃあ、どうすれば?このゲームを続けていればいいの?」
「それは……言ったでしょう。彼も元はあなたたちと同じ、被験者よ。だから、彼と同じ立場になればいいわ。どうしたらそうなれるかは、帰る途中で、彼に聞きなさい」
ゲームマスターが教えてくれるかどうか、わからないけど。
「そう。じゃあ、それまでは来れないのね」
「このプログラムがこれからどうなるか、わからないわ。ただ、もし存続ということになっても、同じ被験者を選出すれば、ここの全てが知られるようになる可能性も高くなる。全てを隠してあちらの政府に協力するというのが、こちらの計画だから」
「……東郷紗奈。わたしは、また必ずここに来る。それまでにいなくなっていたら、許さないから」
「いなくなる?バカじゃない?わたしたちの“一族”は、あなたたちよりも長生きなのよ?」
大丈夫、なのかな?でも……婚約者を失ったわけだし……。
あ、東郷紗奈の家からすると、別に恋愛感情がなくても成立していたかもしれない。
わからない。
「それと、もう一つお願いしてもいい?」
「なに?」
「長谷川リン。彼女に、伝えてほしいの」
「……いいわ」