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妄想の帝国

妄想の帝国 その58  “普通の国”審査結果

作者: 天城冴
掲載日:2021/11/24

普通の国になったので、改憲して軍隊をーと意気込むニホン政府とメイジの党にミンコク党。国際機関カッコクレンの”普通の国”審査を受けた、その結果は…

秋も終わりに近づき、キリスト教国でもないのにメリークリスマスと浮かれているニホン国。国会の一室でも、浮かれている方々がいた。

「つ、ついに我が国も改憲して、軍隊をもてる」

「や、やっと“普通の国”になれまっせ、キジダダ総理」

「ありがとう、メイジの党、マツイダ党首、それにミンコク党のタマキンさんも。あなた方今回の選挙で票を伸ばした野党が改憲に賛成ってことで、なんとか体裁も保てる」

「いやあ、あの策、選挙のとき野党第一党ミンミン党と同じ略称を届け出て、票をかすめとるという案がなければ、難しかったですよ。あれがなければ、おそらくわが党の議員は増えなかったでしょう」

「うちだって、与党ジコウ党ソンカ派の人たちとひそかに選挙協力して票の食い合いを減らすことをしなければ無理やった。オオキニですわ」

と、総理および野党の皮をかぶった衛星政党の党首たちがウキウキと話していると

バン!

総理補佐官が慌てたように部屋に入ってきた。

「総理、で、でました“普通の国”審査の結果が!」

「やった!こ、これで改憲ができる!」

「世界が、カッコクレンが我が国を認めてくれたのか!」

「表向き国会やら国民投票やらの手続きがいるが、実は国際機関カッコクレンに認められなければ、軍隊をもつことは不可能。敵国条項もあるし」

「なんたって中国、ロシアが何をいってくるか、わかりまへんからな」

と三人の党首たちが喜んでいたが、総理補佐官は沈痛な面持ちで

「だ、だめだったんです!し、失格と」

「なんでだー!」

異口同音に叫ぶ三党首。

「そ、その、いくつか理由がありまして…。まず人権問題。ブラック企業が横行し、その筆頭のワダミの会長がジコウ党の議員だったこととか」

「そ、それは、その仕方がないじゃないかー、立候補したら当選したんだしー」

「それ以前に、与党ジコウ党から出馬が問題で。労働基準法というりっきとした国の法律に反し、開き直る企業のトップに対し制裁を加えるどころか、法の制定に関与する立場になることを後押しするとは、なんたることか、それでも民主主義国家の政府与党かと。また、準強姦罪にとわれた人間を現職総理の友人だったからと、かくまうような真似をしたうえ、御用学者、マスコミ動員して被害者叩きとは、どこの独裁国家かと」

「あ、あれは前の前のアベノさんがー」

「そのアベノさんは身を引くどころか、堂々と派閥の長になるーとかやってますし。他にも広告会社便通のパワハラの件も、しかもそういう会社にいまだに政府が仕事を発注するなどと正気かと」

「それは、私がやったことじゃないのにい」

「どの総理がやったかは問題ではなく、ニホン政府がやってきたことを審査しているので。総理ご自身も、発言をすぐ撤回して、あいまいにするだの、質問にきちんと答えなくなってきたなどといわれていますが。他にも現代の奴隷制度ともいえる技能実習生問題ですとか、“だいたいアジアの市民を低賃金で使いたいだけだろー、市民権ももたせてくれないだろ”“いないと農家がつぶれるって、それは技能実習ではなくて、労働者が必要なだけでしょ、だいたい土地も栽培法も違うのに何を教えてくれるの?ネット販売とかなら中国とかの方が上ですよ”とか、現地でも帰国した連中から実態がバレバレでして。ついに改善を訴えられたと東南アジアのカッコクレン代表たちから突き上げられまして」

と、補佐官が総理に述べていると

「そりゃ、政府のことでしょ。ワイら野党も改憲に賛成ということで、何とかならんかいな」

「その、マツイダさん、メイジの党はさらに言われてまして」

「な、何がー問題なんじゃ」

「その、ハシゲンさんのときの民間導入といいながら、看護学校を減らし、統合の名のもとに病院を減らしたとか、女子高生に因縁つけたとか、そういうこともさることながら」

「ながら?」

「“その雨合羽でウイルスが防げるとか、口内消毒液が体内のウイルスを殺すとかそういった、メイジの党の首長の発言をみるに彼らに科学的知見はゼロどころかマイナス。こんな輩が改憲し、軍隊をもつなんて危険極まりない。強力な兵器をもたせたら、誤って使いかねない。間違えて味方に発射、勇み足で他国を攻撃して第三次世界大戦を引き起こすことも考えられる。味方につけることすら危険だ”との指摘が」

「あ、あれは、そのお…。こ、これから勉強しまっせ、これで、ええんやろ」

「そのニホン側識者もそのようにいったんですが“メイジの党は国から支給された金を返したくないばかりに自分たちの団体に寄付し、自分で自分に領収書を切るという会計システムを破壊するようなところだ、そんなところは信用できない。あの党の幹部が首長をやっているオーサカン府やオーサカン市、もしくは関連の会社、支持者の会社との取引も見直すべきかも”などといわれまして。こ、国際貿易にも支障がでかねないことに」

「で、では、わが党ミンコク党は、ど、どうなんだ」

「その、支持母体、連合が労働者組合のフリをした労働者搾取団体ではないかと疑われてます。女性がトップに就いたものの、いうことは経営者サイドすぎ。ニホン特有の正社員終身雇用制度のせいで、正社員が会社の奴隷、従業員ならぬ従僕と化している実態が指摘されまして」

「そ、そうはいっても、正社員も労働者で、その」

「とはいえ、終身雇用、長期雇用をたてに会社に従属するよう教育がされ、投票などの政治活動も経営者有利に行われているのではないかと。春闘などをみれば、なれ合いぶりがよくわかると。立場の弱い非正規をいかに虐げているのかも。そのような非正規社員がついに労働者の半分近く、しかも女性と若者といった弱者が大半。そのうえ、教育格差から正社員なりにくい状況やらも明らかになってます」

「そ、それは、これから改善すれば」

「ほかにも女性の人権問題、ミンコク党は女性議員が多いとは言えず、性別による格差是正への取り組みも弱すぎます。女性議員の比率が一番多いのは共産ニッポンで、そういった問題に取り組んでいるのも、共産ニッポンだろうと。ニホンでは、女性が育児、家事、介護のほとんどを負担したうえに共働きで、その負担はかなり重い。男性に比べて賃金格差に教育格差もあり、実質的に中世並み、いやそれ以下の差別をうけているのではないかと。成績優秀であろうとも女性だからと落とされた医科大の不正入試問題までやり玉にあがり、“こんな有様では、ニホンで女性が生きていくのは攻略が不可能なゲーム、すなわち無理ゲーだといわれても仕方がない。これでは先進国どころか、G20もあやうい”と」

「で、でもさあ、それでいいとか、いう女性もさあ」

「“そうやってアホなオッサンに擦り寄って持ち上げないと上に上がれないんだ、差別に抗議すれば辞めさせられるから無理やりに同調したふりしないと生活できない、とか言う主張も見受けられる。ニホンの発展は女性や弱者を犠牲にして、それに甘んじた男性が一人前の国際人ぶることで成し遂げられたのではないかという疑問もわいてきた。これは再調査し、今後の動向を見守るべきだ、との結論です」

「くうう、中国とロシアと半島の陰謀だー」

と、自国の問題点も反省せず、他国のせいにする三党首に、補佐官は呆れたように

「その三国、とういうか四国は、ニホンが“普通の国”として改憲して軍隊をもつのに賛成でしたけどね。“どうせ、ニホンは変わらんのなら、やらせてやれ。また同じような無茶をやるんだから、そのとき皆で徹底的につぶせばいいんだし、第一、あのジコウ党改憲案はツッコミどころが満載だ。改正した途端、敵国条項を発令できるし、そうすればほぼ、無傷でニホンが手に入りそうだ。ロシアとかといまからどう分割するか協議しなければ、アメリカにも声をかけるか”と、中国高官が話してるのが聞こえましたし」

「そ、そんなに舐められとんのかー!ここは一発うちらの地域で開発したロケットを中国にいー」

「マツイダさん、それは兵器じゃなくて探査用で目的が違いますよ」

ブチ切れて無茶苦茶を言うマツイダを補佐官がたしなめるが、

「半島の北はそう言って打ち上げとるやないかー!」

マツイダは耳を貸さない。他の党首たちもマツイダを止めるどころか

「そうだ、マツイダさんの言う通りだ」

「こ、これは府が勝手に、いや、民間が勝手にやったことで、ニホン政府は関係ないことにすればいいな、たぶん」

他国の国際上の言い訳を本気にして自分らもやっていいもんねーと呑気に考え、好き勝手なことをいいまくる三党首をみて

“ニホンが”普通の国“となるのは、まだまだ先だ、夜明けどころか、つぎのハレー彗星がくるころだろうか”

と頭を抱える総理補佐官であった。


この物語はフィクションなんで、どこぞの国の党首方はさすがに、これほどのバ〇ではないと思いたいのですが…。簡単な算数の計算で、まちがった数字をどうどうとツィートしてしまう与党議員とかいるとちょっと心配になりますねえ(検算するとか、誰かに確認するとかもしないというのが、成人として不味いような気がします)

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