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  作者: ひじきとコロッケ
六月三十日
84/176

(1)

珍しく前書き注意

1.本作に限らず作者の作品は基本的に脳天気展開が多いのですが、本章はやや重めになります。

2.本章は作中でちょうど1ヶ月の節目となり、色々な情報が出てきますが、ご想像通り曖昧です。何がどうなるのかwktkしながらお待ちいただけると幸いです

3.さらに言うと、場面転換多めです。色々な人が色々と考えてるんだな、と言うことで。

「「TKG!TKG!」」


 二人でテンションを上げながら炊飯器の蓋を開ける。同時に立ち上るアツアツご飯の湯気。


「卵、良し!」

「醤油、良し!」


 パンと、手を合わせる。


「「いただきます!」」


 一心不乱にかきこんだ。


「これが日本でしか食べられないなんて信じられないわ!」

「日本人に生まれて良かったと感じる一つだな!」


 アツアツご飯に生卵をかける。タダそれだけなのに何といううまさ。

 ちなみに司はアツアツご飯よりやや冷ましたご飯で卵の食感を楽しむタイプ、成海はアツアツご飯で少し卵が固まるのを楽しむタイプ。二人とも「先に溶いてからかける流」の「醤油原理主義」であるが、「ご飯の温度は人それぞれ派」という穏健派なので戦争には発展しない。

 豆腐にわかめというスタンダードな味噌汁に小ぶりのアジの開きという実に日本人的な朝食を終えると、キチンと片付けをする。ゴミはアイテムボックスへ、洗い終えた食器類もアイテムボックスへ。便利だな、アイテムボックスは。

 時刻は八時半を回ったところ。


「あと少しで九時か」

「協定世界時だっけ?……七月一日の〇時ってのが明日の九時。つまり二十四時間後」

「そして多分……予告してくると思う。根拠は無いけど」


 妙にそう言うところにキッチリしているからきっと。

 お知らせ(・・・・)の可能性を考慮し、事務所にそのまま残って待つ。モンスターが出る可能性もあるので金属バットは握っておく。


「あと三十秒……」


 そして、時間と同時に()が聞こえてきた。


『今からあと二十四時間後、先日予告しました協定世界時の七月一日午前〇時となります』


「やはり来たな」

「ええ」


『予告しましたとおり、ランキング表示が赤の方は下位一万人に該当し、死んでいただきますのでご注意ください。なお、これから二十四時間の間、新たにモンスターは出現しませんので、下位一万人に該当しない方はごゆっくりお過ごし下さい』


「「何だって?!」」


 モンスターが出てこないというのはありがたいと言えばありがたいが……今日一日でどうにかしようと思っていた人はこれで詰みじゃないか。


『また、ステータスに説明を追加いたしました。七月一日からの変更点(・・・)を記載しております。説明を熟読の上、これからの生活に向けて入念に準備することをお勧めします』


「何……だと?」

「司くん、ステータスに説明ってボタンが付いてる」

「おお」


 ご丁寧に『New!!』なんてマークも付いている。この()のこれまでのパターンから言わせてもらえば、すぐにでも見ておくべき情報が満載だろう。


「入念に準備とか言ってるし、早めに確認しよう」

「そうね」


 そう言って手を伸ばしたところに声が続く。


『なお、下位一万人の方がどうなるか、気になる方も多いかと思います。「自分がどうなってしまうんだろう」とか「死ぬっていきなり言われても実感が湧かないよ」という方もいるでしょう。参考までにお見せします』


「「え?」」


 二人ともステータスに追加された説明を見ようとしたが、ステータスウィンドウが消え、代わりに半透明の板が現れ何かを映し出す。体育館かホールのような広く薄暗い場所。毛布にくるまった男性が眠っている。顔のしわが多いことから、高齢と思われるが、薄暗くてよくわからない。そして周囲にも同じように眠っている人がいるようで、毛布が並んでいるが、暗くてよく見えない。


「外国……だよな?」

「どこだろう?」


 二人とも日本生まれの日本育ち。いきなり見せられた人物がどこの国の人かなんて区別は付かないが、アジア系っぽくはないようだ。そして、少しだけ映っている周囲の様子から推測するに、日本にもあるような避難所だろうか。


『この男性は現時点で該当します。少し気が早い(・・・・・・)ですが、どのようになるかご覧下さい』


 声と同時に男性がピクッと震え、目を覚ます。だが、すぐにブルブルと震え始め、その震えと共に顔や手が不自然な形に膨らみ始める。


『ガッ……グッ……グアッ……』


「何これ……」

「まさか……」


『グアアアアアアアッ!』


 雄叫びを上げて飛び起きたその姿は悪夢としか表現しようがなかった。

 全身の筋肉が不自然に膨れ上がり、大きく見開かれた血走った目に耳まで裂けるほどに開かれた口。大きな牙と手足の爪に全身を覆う真っ黒で堅そうな毛。安っぽい映画に出てくる狼男の両腕の爪がデカい版といえばわかりやすいだろうか?


「おいおい、なんだこれ」

「ちょっと……これって……」


 成海が懸念するのは……この元男性(・・・)の周囲に大勢の眠っている人の姿があったこと。避難所みたいな場所で皆が身を寄せ合って眠っていたところで、こんなことが起こったらどうなるか。

 映像の中では周囲の毛布がモゾモゾと動き、大きな声に目を覚ました人たちが何ごとかと起き上がりはじめていた。見たところ、高齢者が多いようだ。日本の避難所の状況はよくわからないが、この映像の国?地域?では高齢者だけを集めているのだろうか?

 そして、薄暗いながらもその姿を見たであろう周囲の人々が悲鳴を上げると同時に元男性がすぐそばに向けて、鋭い爪の生えた腕を振り上げた。


『ここから先は見る必要ないですね』


 声と同時に映像が唐突に消えた。


『それでは皆さん、頑張って生き延びてください』

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 避難所なら近くで同じ映像を見てる人間が多いし声あげてるからすぐ倒されるだろうね
[一言] 本章は重くなります、からのTKGで笑ってしまった
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