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  作者: ひじきとコロッケ
六月一日
8/176

(6)

「お客様、その……」

「まともに歩けるのは私くらいしかいないみたいよ?」

「そう……ですか」


 そっと近寄り、機長の様子を見る。かろうじてこちらに視線を向けてくるがその瞳の光はとても弱い。


「あの……これ、どうにか出来そうですか?」


 小倉が力なく首を振る。そりゃそうだろう。

 だが、だからと言って、ただ指をくわえてみているわけにはいかない。今は何とか飛んでいる飛行機もいずれは燃料切れで落ちる。

 必死で生き残った十数人なんだ、最後の最後まで足掻(あが)いてみようじゃないか。


「失礼します……よいしょっと」


 一礼し、副操縦士を抱え上げる。

 成人男性の体重を抱え上げるのは大変だが、ガチャで手に入れた能力のおかげか、なんとか抱え上げて客室まで運んで寝かせる。通路で申し訳ないと一礼してコックピットに戻る。


「小倉さん、私……まだ死にたくないんです」

「それは……私も同じです」

「頑張りましょう!手伝って下さい!」


 そう言って副操縦席に座り、ヘッドセットを付ける。血がべっとりとついてくるが気にしていられない。


「あー、えーと、聞こえますか。あれ?どうすればいいんだ?」


 通信をオンにしていないので、誰が答えるでもなかった。すぐ横で「これを」と、小倉がスイッチを指さす。


「これ?あ、これで通信をオンにするんですね……あー、あー、聞こえますか?えーとこちらは……何便でしたっけ?」

「2231便です」

「2231便です。誰か聞いてたら答えてください。あ、私は乗客です」


 無線通信の手順など一切無視だがそこは勘弁いただこう。この状況で文句を言われる筋合いはない。


「こちら新千歳空港、管制官の中川です。2231便の乗客(・・)と仰いましたが、どういうことでしょうか?どうぞ」


 どうやら柔軟に対応してくれたようだ。


「えーと、信じられないかも知れませんが、なんか人型のモンスター?がたくさん出てきて大暴れ。死者多数で、その……副操縦士さんは亡くなりました。機長さんは重傷で動けません。まともに動けるのは私だけでして」


 返事を待つ……アレ?


「どうぞ、を最後に付けてください」


 小倉さんのフォローが入った。仕方ないでしょ、そういうの知らないんだから。


「あ、はいはい。そういう状況です。どうぞ」

「わかりました。もう少し詳しい状況を確認させてください。まずあなたのお名前を。どうぞ」

2021/9/14 会社名を消して便名だけに修正

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― 新着の感想 ―
[気になる点] みんなロボットなのかな…
[一言] 「わかりました。もう少し詳しい状況を確認させてください。まずあなたのお名前を。どうぞ」 墜落しそうなときにも、相手の名前を聞いてくるんや。余裕ですね。
[気になる点] 実在企業の名を使用されていますが、仮想名に変えられたほうが良いかと思います。 [一言] 作者様が読まれているかは不明ですが、許諾を受けていません企業名の使用は控えられた方がよろしいかと…
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