(1)
朝食後、出発前に
「ガチャ実行」
今日は注意書き無しの★4カプセルが出てきた。
開けてみると
「密封された缶……なんだコレ?」
「えーと、コピラ……コピ・ルアク?!」
「え?」
「司くん、大変だよ!」
「な、何が?!」
「コピ・ルアク!最高級のコーヒーよ!」
「コーヒー?」
「天然物なら百gで万単位」
「マジで?!……って、本当に微妙だな」
「ですねぇ……」
二人ともコーヒーなんてインスタントとドリップコーヒーの違いがわかるかどうかすら怪しいレベル。高級コーヒーと言われてもピンとこない。
「飲んで違いがわかったとしても」
「嬉しいかと言われたら微妙ですねぇ」
またアイテムボックスの死蔵品が増えた。
高級品とか高価な物とか出てきても、扱いに困るんだよな。
「雨が降っている時って、レインコート系必須と思っていたら、アイテムボックスで解決しちゃった件について」
路面が濡れているとかはどうにもならないが、体が濡れるのはアイテムボックスを頭上に出して「雨を回収」してみたらいい感じになった。
「アイテムボックスって活用の幅が広いですね」
「こういう使い方は想定していないと思うけどな……」
だが、いくら雨には濡れないと言っても、道路状況は悪く、スピードが出せない。程々に進んで休めそうな建物を探す。
キャンピングカーを出してもいいが、万一、司を追ってる連中が近くにいた場合、目立ちすぎるから使えない。逆にオフィスビルのような所は窓から顔を出さない限り、外から見つかる心配は無いと考えて、周囲の見通しのよい場所に建っている五階建てのビルに入った。
◇ ◇ ◇
「誰か入ってきた」
「え?マジで?」
「ほら、これ」
「ヘルメットで顔がわからないけど、男女二人かな?」
ビルに元々設置されていた防犯カメラにPCを接続して監視しているのは五人の男女。声を潜めて様子を窺う。
「二人ともヘルメットを脱がないな」
「頭の防具としちゃ手軽で優秀だもんな」
「かなり警戒してるけど、こっちまで来るかな」
「隠れる準備をしよう」
少し周囲に散らばっている荷物をまとめると、そっと監視用の部屋の外を窺う。
「よし、今のうちに」
「おう」
全員が足音に気をつけながら奥の部屋へ通じるドアへ。ドアを閉めたあとにゆっくり慎重にワイヤーを引っ張ると、ドアの向こう側でキャスター付きの小型キャビネットがススッと動いてドアを塞ぐ。これで「このドアの向こうには誰もいませんよ」アピールになるだろう。
「どうだ?」
「ちょっと待ってくれ……よし、繋がった。あの二人は……階段に向かったな」
「階段の監視カメラは?」
「えーと、ダメだな。動いていないのばっかりだ」
「しゃーない。どの階に入るか他のカメラで確認だな」




