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  作者: ひじきとコロッケ
六月二十三日
70/176

(1)

「この辺で休憩にしよう」


 近くにあったコンビニに入り、小さなイートインスペースで昼食にする。入ったコンビニとは違うコンビニの弁当を出して食べるというのは、なんだか悪いことをしているような感じがする。かなり大規模な事故が起きているところが数カ所にあったせいで迂回を余儀なくされ、未だ県庁所在地には入れないが、焦っても仕方ない。いざというときに疲れて動けないという事態を避けるため、時間を決めて休憩することにしていた。


「さすがにこの辺は取り尽くされてるね」

「あー、そこ。そこに自衛隊が回収しましたって貼り紙がある」

「えーと……費用の請求にも応じるって」

「この状況で請求する人がいるとは思えないけどな」

「ですよねー」


 そんなことを話しながら食べ終えて、ゴミをアイテムボックスへ。容量がデカいので困っていないが、そろそろゴミをどうにかすることも考えた方がいいか?


「ん?司ちゃん、あれ」

「え?」


 ちょうどそのコンビニの駐車場に車が五台連なって入ってきた。


「あれ、もしかして」

「モンスターを秒殺してた連中っぽいな」

「まさか、ここに入ってくる?」

「可能性は高いな。物資が残ってるか確認とか」

「どどどど……どうしましょう?!」

「落ち着いて」


 店内にいる様子は多分見えていないだろうからさっさと逃げてしまおう。敷地の構造上、車は店の正面には止まらなかったので、今のうちに動けばいい。


「あっちへ」

「うん」


 レジカウンターの向こう側、事務所スペースへ。奥に扉があり、そっと開けてみると店の裏側に出られる構造だった。


「コンビニでこう言う構造って珍しいはず」

「そうなんですか?」


 コンビニに限った話ではないが、こうした裏口は防犯の観点ではあまりよろしくない。そのため、ほとんどのコンビニにこうした裏口はないのだが、


「裏の建物、店長の自宅っぽいね」

「だから裏口があるんだな」


 運がよかった……のだろうな。豪運さん、お疲れ様です。


「とにかく裏口から逃げましょう」

「そうね……よし、表からはこっちが見えないみたい」

「よし」


 ピンポーンと自動ドアが開いたことを知らせるチャイムが聞こえた。


「急ごう」


 外に出ると、そっとドアを閉め、そのまま向かいにある民家へ。その脇を通り抜けて反対側の道路に出たら逃げよう。


「ぶべっ」

 ガシャン!

「うう……」


 生い茂っていた草のせいで大きな庭石に気付かなかった成海が転び、派手な音をさせた。その音はコンビニの中にも聞こえたらしく「裏だ!誰かいるぞ!」なんて声が聞こえた。


「マズい!」

「い、いひゃいでふ」

「起きて!」


 顔面強打して悶絶している成海を無理矢理引き起こして担ぎ上げて走る。


でひれば(出来れば)おひめひゃま(お姫様)らっこ(抱っこ)よかっふ(よかった)ぁ」

「置いてきますよ!」

「そりぇはこみゃる……」


 今日は司より成海の方が背が高く、お姫様抱っこなどしたら走れない。肩に担いでいても走りづらいが、レベルの上がったステータスのおかげで何とか走れる。


「原付出して!」

「ひゃい」


 原付に飛び乗り走り出すと……向こうでも車のエンジン音がした。アクセルを吹かして飛ばしたが、すぐにミラーに車が映る。かなり正確にこちらの位置をつかんで追っている……追跡系のスキル持ちがいる可能性が高い。成海の追跡者は対象を見る必要があるが、成海を抱えている間に見られたんだろう。


「まさか」

「ん?」

「あのサービスエリアにいた連中だったり?」

「え、まひゃか……らってそんな……」


 あのしつこい追跡がまた始まるのか……それは遠慮したい。

 成海の追跡者がレベル1のままなので検証出来ていないのだが、ネットの情報なんかを見ても追跡系のスキルは同時に一つのターゲットしか設定出来ないらしい。問題は、どちらを(・・・・)追跡しているのか?


「追跡スキル持ちが一人だとしたらどちらを追うと思う?」

「えーと、可愛い方?」

「真面目に聞いてるんですけどねぇ」

「真面目に答えてるつもりなんだけど。ほら、性的な云々(うんぬん)で」

「俺ら、姿を見られてませんよね?」

「じゃあ、遠目に体型だけ見て判断とか?」

「かなり偏った選択をしそうだな」

「司ちゃんも結構需要あると思うよ?」

「お断りします!」


 そうこうしているうちにミラーに車が映る。


「二手に分かれよう!」

「え?」

「多分、追跡スキル持ちは一人。そして追うとしたら……俺じゃないかなと」

「そっち系?」

「どっち系だよ!ってそうじゃなくて、名前!」

「あ……そうか」

「そう……追跡者のスキルは名前がわかる。そして……」

「ランキング一位」

「そう言うこと」


 ランキング一位に何か特典があるのかというと、今のところはレベルアップ時に先駆者という称号がもらえる程度。もちろんレベルアップに有利になるような効果があるのだが、それを知っているのは称号を得ている司だけ。だからその情報をつかんでいる可能性はほぼゼロ。そして、それ以外の特典があるのかというと、現時点では全くわからない。

 だが、例えば一万人が死ぬという七月一日にランキング一位に何かが与えられるとしたら?そしてそれがスキルのような物ではなく、武器や貴重品なんかだとしたら?生かさず殺さず、適度にレベルを上げさせて一位を維持させ、一位の特典だけをかすめ取る。そんなことを考えていたら?

 イヤ、そこまで考えていなくても、ランキング一位と言うだけで勝手に嫉妬したり、ライバル心をむき出しにしたりしているだけとか?

区切りが微妙になってしまうので、短めです……すみません

年末に向けて仕事が忙しくなってきているので来週からは週2回、水曜と土曜更新に変更します。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんか、危機的状況を、無理やり自分達から作っては、なんとか解決するという展開には飽きてしまいました、、、
[気になる点] 主人公が攻撃的なスキルが無いと自覚しているのに、あまり対策していないのが不自然かと。  それなりの日数経っているので、スキルの考察して対人対モンスターの攻撃方法くらい幾らか出ていそうな…
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