(7)
◇ ◇ ◇
ランキング一位のふじさきつかさについて語るスレ レベル十二
730 名無しさん
今日はレベルが上がってないようだな
731 名無しさん
余裕こいてんだろ
732 名無しさん
どうやったらあんなレベル上げできるんだ?
ほぼ毎日上がってるじゃねえか
733 名無しさん
>>732運営チートじゃね?
または重課金
734 名無しさん
>>733どこに課金するんだよ
ってか、多分日本人のはずだが、ネットとか見ないのか?
あのレベル上げの裏技とか教えて欲しいぜ
735 名無しさん
>>734期待するだけ無駄
ああいう奴は、何も考え無しに自分さえ良けりゃいいって自己中な奴だからな
746 名無しさん
>>735-745お前ら落ち着け
ふじさきつかさが好き好んで一位になってるわけじゃないとしたらどうする?
例えば、勝手にレベルが上がるようなスキルとか偶然手に入れていたら?
どこにいるか知らんが、レベルが高い=モンスターとの戦闘が多いって考えると、実は生き延びるのに必死なんじゃね?
747 名無しさん
>>746本人キタ
748 名無しさん
>>746チッ、IP表示付けとけばよかった
760 746
>>747-759俺じゃねえよ!
761 名無しさん
>>746=760本人はみんなそう言うんだ
762 名無しさん
>>761そうだそうだ
763 名無しさん
オラッ!出てこい!>>746
AA略
831 名無しさん
お前らに聞きたいことがあるんだが
もしも、もしもだぞ
このふじさきつかさが実はロリ美少女で、「ふええ、モンスターこわいよお」とか言って転びそうになりながら逃げ回っていて、必死に魔法スキルで戦っている、としたらどうする?
832 名無しさん
>>831お前何言ってるんだ
そんなわけ……
で、どこにいるんだ?
833 名無しさん
>>831お前馬鹿か?そんなのがいるわけが
ちょっと町内見て回ってくるわ
◇ ◇ ◇
外が暗くなってきた頃、ベッドに横になり、今日見た物を思い出す。
大勢の人が並んでいた。残りの物資も乏しくなってきたのだろうが、あのガチャでいい物を引けなかった者が、いい物を引いた者に従う。それはまあ、わかる。司も★5の確率上昇の説明文を読まなかったら今頃どうなっていたかわからない。だが、それでも。あんな理不尽な扱いは無いんじゃないか?
もし、自分にもう少し戦うスキルがあったら、あそこに乗り込んで全員叩きのめすことも出来たかも知れないが現状では難しい。成長に有利なスキルを得て、レベルを一気に上げ、ステータスによって常人を超えている。だが、ランキング一位だからと言って、全知全能の神ではないし、目の前で起こることで精一杯だ。
「ふう」
ため息をついたところで、廊下を走ってくる足音がする。十中八九成海だが、あんなに慌ててどうしたのだろうか?
バン!とドアを開けて成海が飛び込んできた。
全裸で。
タオルは巻いていたが。
「司ちゃん大変!」
「どした?」
「冷たいの!」
「は?」
「だから!お風呂が冷たいの!温泉なのにお湯じゃないの!」
天然温泉掛け流しと言っても、ポンプなんかで汲み上げたあとにお湯の温度を調整する所も多い。このホテルは加温の表示が無いから源泉のままでも充分暖かいのだろうが、二週間もポンプは止まったまま。大きな湯船に入っていたお湯は全て水になっているのは当然だ。
「つーか、二週間以上そのままだぞ。いきなり入るなよ」
「だってぇ」
「だってじゃねえよ!」
栓を抜いて水を抜き、裏に回ってポンプを動かしたらお湯が出始めた。
「おお~、では改めて」
成海の言葉を聞くやいなや司はクルリと反対を向く。
「いきなりタオルを取るな!」
「見てもいいのよ?」
「遠慮します」
「私と司ちゃんの仲じゃない」
「親しき仲にも、です」
「ちぇ」
ぶーたれてる成海をそのままに部屋に戻る。
何だかんだで成海は一時間ほど温泉を堪能してきた。まあ、湯船にお湯がたまるまで時間がかかったというのもあるのだが。
「じゃ、次は俺が」
「たっぷり私の出汁が出てるから、味わって「飲まないっての!」
成海が入浴している間に男湯の方を準備しておいたのでそちらに入ったのは内緒だ。勿論、事前に館内の見取り図で男湯の方が狭いのがわかっていたので湯を張る時間は短くて済んだ。
そして、この温泉がいい感じだったので、夜の間にお湯を回収しておいた。量は限られているが、ある程度自由に温泉が堪能できるのはいいだろう。
◇ ◇ ◇
「やっと着いたな」
幸いモンスターに遭遇することもなく、三人は無事に自宅まで辿り着いたが、時刻は既に深夜。道がふさがっている箇所が多く、予想以上に時間がかかってしまった。
「家は特に問題なしと」
「そうね」
人がいなければゴブリンも出てこない。その程度の理由だろうが、家は特に傷つけられてもおらず、誰かが盗みに入ったような痕跡もない。
ただ、同時に近所にも人の気配が無い。逃げたのか、それとも……は判断出来ない。
碧が玄関を開けると中の熱気が漏れ出してくるが、それもまた、家が無事だった証拠だ。
「ああ……言うつもり無かったけど言わせてもらうわ」
「なんだい?」
「やっぱり、家が一番ね」
「あははっ」
旅行から帰ってきたお母さんの台詞あるあるを口にしながら碧が中に入り、
「ただいま」
「おかえり」
何気ない日常の一言がこんなにも素晴らしいとは知らなかった。
「さて、のんびりしたいところだが。ちょいと署に顔出してくる」
「そうね。気をつけて」
「おう。とりあえず状況確認したら連絡するから」
「行ってらっしゃい」
本来ならとっくに旅行を終えているはずのところ、帰ってくることもままならなかった分、小言の一つも仕方ないかと典明は着替えて消防署へ向かった。
「アレコレ言われてもどうしようも無い事態だが、それで気が紛れるなら聞き役になってやるさ」
自分に言い聞かせながら、歩いて二十分の距離。普段なら何てことの無い距離だが、長く感じる。
「でも、色々言われるんだろうなぁ」
だが、消防署に着いたところ、避難所を開設して全員そこへ向かうとの書き置きが有り、無人だった。
「署に誰も残っていない……普通は無いよな」
書き置きに書かれていた避難所となっている小学校は来る途中で通ってきたが、真っ暗で誰もいなかったと言うことは、さらにそこから移動したのだろうか?
とりあえず誰か出るだろうと、無線を入れて消防車を呼び出すと、しばらくの呼び出し音の後に応答があった。
「はい、こちら――」
「藤咲です」
「ふじさ……藤咲さん?!」
◇ ◇ ◇
「明日、朝イチでここ出るぞ」
「「「は?」」」
斉藤の一言に、数名が「唐突に何言ってんだコイツ」という声を上げる。
「食いもんが残り少なくなったんだよ」
「え?」
「マジ?」
元々がサービスエリアというかなり限定された範囲での物資調達で、偶然駐車場に止まっていたトラックの中身もごっそり回収していたのだが、やはり少ない。
「そもそもここにいる奴らに俺らがなにかしてやる必要、あるか?」
全員が首を振る。斉藤に限らず、自分たちも手に入れたスキルをフルに使っているのに、それを使って助けるのがさも当然だと言わんばかりの連中の相手はこれ以上何もしたくない。
「じゃ、そういうことで」




