(3)
原付を止めると、とりあえず試しにやってみる。
「アイテムボックス、収納」
目の前に「アイテムボックス」と書かれた半透明の板が現れて、スッと原付が消えると、「原動機付き自転車」と表示された。タップすると原付の写真と所有者が藤咲司であると書かれた説明も出てくる。
「よし、狙い通り。行くか!」
ヘルメットは被ったままで、金属バットを片手に歩き始める。
色々と確認すべき事が山ほどあるが、まずはアイテムボックスへの物資格納。この状況では食料品を始めとするあらゆる物資が文字通りの生命線になるはずだ。
そこらをうろついているゴブリンがこちらに向かってくるのを金属バットで撃退しながら進み、本来なら会員証を提示しなければ通れないゲートをくぐる。会員証をチェックする店員はゴブリンたちの手によって原形を留めていないが、気にしている余裕がない。何しろ次から次へとゴブリンが出てくるのだ。
「多分、世界中の人間全員の前に一匹ずつゴブリンが出たんだろうな」
七十億以上のゴブリン。正直勘弁願いたい。
店内に入っても商品を悠長に眺める余裕はない。平日の昼間だからそれほど客はいなかっただろうが、駐車場の様子から数十人はいたはずであり、それだけの数のゴブリンを相手にしなければならない。だが、金属バットで倒せるとわかったから、複数に囲まれないようにさえ気をつければ落ち着いて対処出来るハズだ。
たっぷり一時間ほどかけて店内のゴブリンを全て倒し終え、改めて棚の前に立つ。
「アイテムボックス、収納」
棚に置かれていたペットボトル飲料の段ボールがごっそり消える。
「ここまでは狙い通り。あとはバラで取り出せるか……」
そっとアイテムボックスの画面をタッチ……
「取り出し……お、一本だけ取り出せた」
収納した単位でしか取り出せない、という制限があったりしたら不便だったろうが、そのあたりがレベル十と言うことなのだろう。最低限の確認が出来たところで原付を取り出すと店内を走り、片っ端から収納していく。
「まさか全部収納出来るとはね……」
一応アイテムボックスに「収納量」という表示があるのだが、一%から変化しない。勢い余って棚まで収納したのに。
「もっと行くかな……」
とりあえずすぐ近くにホームセンターとショッピングモールがあるので行ってみよう。あとは業務スーパーもあったはずだ。