(6)
◇ ◇ ◇
「結構降ってきちゃったな」
ミニバンを出し、中で体を拭いて着替えた。さすがに外で堂々と着替えるほどの神経は持ち合わせていない。中古車屋で投げ売り価格で晒されていただけあって後部の窓はフルスモーク。前席に日よけを立てれば外から見られずに着替えが出来る。
「さてと……どうしようかな」
せっかく体を拭いたのに雨の中を歩くのはナンセンス。せっかく文明の利器があるんだからと、運転席に座るとエンジンキーを回した。
ブルンと音をさせてエンジンが掛かるとゆっくりとアクセルを踏み込んだ。
取り付けられたナビはデータが古そうだが、ちゃんと淡路島の地図を表示している。主要道路はそうそう変わらないから多分大丈夫だろう。
「これで島の反対側を目指そう!」
雨に濡れずに移動できるのが自動車の強みなのだから、それを存分に活かす。
「あ、初心者マーク貼ってないや」
免許取り立てだから貼る義務があるが……
「ま、いいか」
この状況で、寿以外に車を運転している者が淡路島にいるだろうか?そして、わざわざ警察官が呼び止めて免許証を確認するだろうか?
「ま、その時はごめんなさいしよう」
カー用品店でも物資を回収しているから初心者マークはたくさんあるが、この雨の中外に出るのは面倒なのである。
「んー、あとちょっとだけど、島の外……海の上だねぇ」
高速道路で淡路島の西側に抜け、とりあえず探知の示す方向に一番近そうなパーキングまで来たが、それでもまだ西方向約三十キロ。どう見ても海の上だ。方角的に小豆島の可能性もあるのだが、そこまでの距離では無いし、途中に小島も無さそうなのでやはり海の上なのだろう。
ウィーン……と目のレンズを調整し、拡大。機械の体ってこういうときに便利だ。
「えーと……あ、アレかな?」
この距離でもかなりの大きさだとわかる船を一隻見つけた。方角、距離ともに探知と一致しているようだ。
「船かあ……」
見たところ、豪華客船っぽい。子供が進学して家を出たのに合わせて旅行に出た?あり得ない話では無いか。
「雨が止むまではここで足止めね」
モンスターが出ないことを祈りながら車の中でコロンと横になる。ここまで来る間、人の姿を見ていない。淡路島には十万人以上が暮らしていたはずなのだが、全く見ないというのは……全滅したのだろうか?
「ま、考えても仕方ないよね」
鍵がかかっていることを確認するとそのまま目を閉じる。いい夢を見られますように。
2021/9/12 車を止めた位置を少し正確に…




