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  作者: ひじきとコロッケ
六月十四日
43/176

(1)

「うわあ……」

「すごいことになってますね」


 高速道路を下りると気付くことも多い。

 そこら中で車が事故を起こしたままになっているのは同じだが、一般道だと突っ込んだ先が電柱で、倒れた電柱により電線が引きちぎられているところも多い。


「これ、通信ケーブルっぽいですね」


 司が指さす先には通信会社大手のロゴが描かれていた。


「え、これって……え?」

「スマホが繋がるところ、繋がらないところがある理由、これっぽいですね」


 基地局の機械が生きていても、その基地局の電気が切れたり、通信ケーブルが切れてしまえばただの箱。主要幹線道路となっているところほど、事故の規模も大きく、電気、通信の寸断が多発しやすいと言えそうだ。


「これが全国どころか世界中で起こっている……か」

「これからどうなっちゃうんでしょうね」


 成海の問いに答えられる者はいるのだろうか?




  ◇  ◇  ◇




 寿は少し早く起きて移動を開始。淡路島までは約五十キロ。現在の飛行速度なら一時間と少しで到着できるが、途中でガソリンの補給が必要なのでペットボトルを最初から用意してアイテムボックスに収めておく。

 近づくにつれてどんどん探知の精度が上がっていくが、やはり両親の位置は淡路島の向こう側、海上だ。

 島の向こう側が少しでも早く見えるように高度を上げようとしたが、


「う……」


 雨が降ってきた。


「マズいなぁ」


 水に濡れたところで体が錆びたりはしないのだが、雨が降るとジェットの出力がなぜか低下する。飛行スキルと機械化体の相性なのだろうか?それとも飛行スキルのレベルが上がれば解決されるのだろうか?どちらにしても、今は解決出来ない。


「島でちょっと休憩かな」


 下を見ると、遊園地っぽいものが見える。屋根の有るベンチがあったのでそのそばに降りて雨宿りしよう。探知には何も反応はないし、少し休憩するにはちょうど良い。

 そう思って着地した瞬間、すぐ近くがぐにゃりと歪んで見えた。


「ん?」


 何だろう、と思った瞬間、そこに巨大な人型のモンスターが現れた。


「えええええ?!」


 世界中で発生しているモンスター出現の瞬間にたまたま居合わせただけだが、今まで空を移動していたため、モンスターの出現イコール墜落死。ゴブリン以外のモンスターを見るのも初めてで動揺してしまい、コテンと尻餅をついてしまった。


「あうあう」


 慌てて起き上がろうとしたが、焦ってしまってうまく立てない。仕方ないので四つん這いになって逃げ出そうとしたら、


「ガッ」


 右足をグイッと掴まれた。


「ひええええ!」


 ブンッと上に振り上げられ、


「きゃああああ!」


 ドゴンッとアスファルトの地面に叩き付けられた。さらにもう一度振り上げ、叩き付けられる。さらにもう一度。叩き付けられる度にアスファルトが砕かれ、破片が飛び散る。


「痛いじゃないの!」


 グイッと体を起こしつつ、掴まれていない足で思い切り腕を蹴ると、メキッと堅い物がぐにゃりとなる感触。


「ギャッ」

「うわわわわっと」


 蹴り一発で腕の骨を折られたモンスターが手を離したために、そのまま放り投げられる。突然のことに再び慌ててしまい、ゴキンと音をさせて頭から地面に落下した。


「いてて……」


 ダメージらしいダメージは無いが、痛い、と言う感覚はある。


「うう……頭から叩き付けられてアスファルトが砕けるなんて……乙女的にはNGよね」


 司が聞いたら「どこに乙女要素があるんだよ」と突っ込みそうな独り言を呟きながら立ち上がる。掴まれていた右足はミシミシ言っていたが、特にダメージを受けた様子は無い。ステータスは正直なようである。


「よーし、行くよっ!」


 シャキンッと右手を刃物に変えて構えると同時にモンスターがこちらに向けて飛びかかってきた。


「引きつけて……カウンター!」


 ギリギリの所をかわし、首筋を切り裂きながら飛び越える。


「ギャオッ!」


 短い悲鳴と緑色の血を吹き出しながらモンスターが崩れ落ちる。さすがにこれは致命傷のハズ。そう思って着地して振り向いたそこに裏拳が飛んできて、地面に叩き付けられた。


「ぐぬぬ……ていっ!」


 叩きつけられて地面が陥没し、体がめり込んだがダメージらしいダメージは無い。力任せに腕を跳ね上げてすぐに起き上がり、後ろに飛び退きながら距離をとる。


「ウガァ……」

「なんでっ?!」


 確かに首を切った。切断までは行かなかったが、かなりの深さまで切ったから致命傷のハズなのに……その切った所には大量の血が付いているものの、肉が盛り上がってきており、ほとんど傷が塞がっている。ついでに言うならさっきの裏拳は、蹴り折った方の腕。たしかに折れて曲がっていたはずなのに既に元通りになっている。


 あり得ない回復力。


 ただ怪力を振るうだけのモンスターでは無いのがこのトロールというモンスターの一番厄介なところである。


「ガアッ!」


 雄叫びを上げると、こちらへ向けてズンズンと重い足音を響かせながら向かってくる。探知の表示は『トロール』と出ているが、寿の知識でトロールと言えば、ムー○ンくらいである。


「こんなのどうやって倒せばいいのよ?!」

おかしい、この作品で初めてのまともな戦闘シーンのハズなのに緊張感が感じられない……

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 一応まだ飛べるんだし一旦逃げようってならん?
[一言] 初めてのまともな戦闘シーンのハズなのに緊張感が感じられない そりゃあ『殴られてもノーダメージ』と『ダメージ食らっても超回復』の戦いとか泥仕合確定ですし
[一言] 寿でこれなら、一気に人口が0.1%になりそうですね。 閑話の政治家酸とか全滅?
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