(2)
急いでガチャを回す。ガチャの演出がもどかしい。これは間に合うのか?
ガコン、とカプセルが出てくる。残り三十秒。カプセルがブルッと震え、パカッと開く。残り十秒。
念のため、昨日考えておいたいくつかのパターンへの対策として金属バットを振り上げておく。
カプセルから紙が出てくる。残り五秒。
ゆっくりと開かれていくと同時に残り時間がゼロになった。
同時に目の前に醜悪な顔つきでやや暗い緑色の肌をした人型のモンスターが現れた。ある程度予想していたパターンだと判断するより早く金属バットを思い切り振り下ろした。
「最初のモンスター討伐を確認しました。称号『先駆者』を獲得しました」
頭の中に声が響く。
「……最後のガチャの結果がわからん」
紙が開かれたと思ったらガチャの画面が消え、目の前にモンスターだったので見えなかった。一体何が出たのだろうか?
袖を捲り上げながら周囲を見渡す。思わず金属バットを振り下ろしてしまったが、多分これはゴブリンとか言う奴だろう。日本人が思い描くファンタジーの出現だ。
昨日のうちに想定していたパターンは大きく三つ。地球の人間が全員異世界に飛ばされる、ダンジョンが出現しモンスターが出てくる、いきなり世界中にモンスターが現れる、の三つだ。
「パターン三かな。で、ガチャの結果的には結構良い感じだったから……」
このパターンなら次の行動もある程度決めているので、原付にまたがりエンジンをかけて走り出す。目的地はすぐ目と鼻の先。原付なら一分もかからない。
幹線道路に出ると、そこら中で車が追突事故を起こしていた。運転している最中に車内にゴブリンが現れ、なすすべ無く殺されたのだろう。幸いなことにゴブリンはドアを開けるほどの知能が無いらしく、車内でギャアギャアと暴れている。街中にゴブリンが溢れているとかそう言うのは困るのでこれは助かる。
「アレの対応は後回し。今は……ここだ」
到着したのは巨大な倉庫型店舗。アメリカからやって来たこのチェーン店は会員制で、アパートからも遠いので気にしたことはなかったが、今のこの状況では最優先でここに来るべきと判断した。
「パターン3、いきなりモンスターが現れる。そして、その分岐パターン。アイテムボックスとかそう言うスキルを手に入れている。ここに来ない理由が無いな」
2021/8/14 冒頭部分が少しおかしかったので直しました。