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  作者: ひじきとコロッケ
六月九日
39/176

(1)

しばらくの間、火木土更新にします。

「ん……」


 薄らと明るくなった車内で目を覚ます。時刻はいつも起きているのと同じくらいか。

 ゆっくりと体を起こす。えーと……キャンピングカーの中……うん、何事も無く夜が明けたか。

 横を見……慌てて目をそらす。色々はだけていて……ちょっと目のやり場に困る。

 色々元気になってしまっているのを手っ取り早く鎮めるには……これからどうするかという悩みが追加されたことに気付いた。自然に治まるのを待つしか無いか。

 そっとベッドを出ると、カーテンをくぐり運転席へ。

 キーを軽く回し、ラジオを点ける。「ニュースの時間ですが番組内容を変更し……」とか言いながら、ここ数ヶ月で話題になっている曲が流れるだけ。BGMとしてはちょうど良いか?




 運転席から見える道路上には相変わらず何台も車が放置されており、数台はゴブリンが暴れ続けているのか、時折揺れている。あとでぶっ飛ばそう。

 そう言えば、成海さんはどうやって移動するんだ?俺は原付メインで移動するけど……自転車で着いてくるのか?ま、いいか。アイテムボックスに原付も大量に入っているからそれを使えば。

 そう思っていたら後ろの方で物音がし始め、こちらへ歩いてくる足音が聞こえてきた。


「おはようございます。すみません、寝坊しちゃって」


 カーテンをくぐって成海が出てきた。慌てて目をそらす。


「色々刺激的な感じなので、身支度してきてくれませんか?」

「あ、ごめん~」




 その後、シャンとしたところで、朝食――サンドイッチに缶コーヒーという簡単なものだが――を済ませると、真面目なお話しタイムだ。


「昨日の続き、俺のユニークスキルについて」

「は、はい」

「スキルの名前は性別転換。その名の通り、性別が変わる。で、ステータスが少し増える」

「せ、性別が……って司くんって、司ちゃんだったり?」

「いや、元々男だよ」

「えーと……?」

「一日おきに男女を入れ替えられる。で、入れ替える度にステータスが少し増える。入れ替えないと増えたステータスはリセットされる」

「な……なるほど」

「実際に見た方が早いから、昨日言うのは止めたんだ」

「そうね……聞いた今でも、嘘でしょ?って思ってるし」

「と言うことで、スキル使います。心の準備はOK?」

「い、いいわ」

「では……性別転換」


 一瞬体が光り、女になる。


「とまあ、こんな感じ」

「ひ……」

「ひ?」

「ひゃあああああ!」

「うわあ!」

「か、かわいい!」

「ちょっ!」


 いきなり抱きつかれた。


「何で?!何でこんなにかわいくなるの?!」

「ちょ……待て……おい、離れろ!」

「うわあ……ほっぺが柔らかくてぇ……」

「おい、待て。どこを触って」

「んふふふ……ここも、ここも……うわあ」

「てぃっ」

「うがっ」


 デコピン一発。こんな(なり)だが、ステータスは正直だ。




「落ち着いた?」

「はい、すみません。想像していたのと全然違ったので取り乱しました」


 顔かたちはほぼそのままで体の一部分だけが変わるくらいだと思っていたらしい。


「んで?」

「もう二度と……いきなり(・・・・)抱きついたりしません」

「よろしい」

「でもでも!いきなりでなく、許可をもらえば?!」

「却下」

「そんなぁ……」


 そんなにかわいいか?と近くの鏡に映る姿を見る。客観的に見て……まあ、かわいいのだろうけど、あの姉と同じ姿なんだよな。

 いや待て……と言うことは、だ。このまま実家に向かって姉と合流したらどうなるんだ?考えないようにしていたが、姉に対して今のと同じようなことが起こる?で、姉が色々ぶっ飛んだことを言う?




 頭痛の種が増えた。




 やはりおかしい。豪運が仕事していない。




「さて、出発ですけど……どうします?」

「どうって?」

「俺は原付ですけど」


 キャンピングカーを片付けて原付にまたがる。まあ、状況的に自転車でもたいした違いはなさそうだけど。


「あー、えーと……こうですね!」


 後ろに座って抱きついてきたので、小突いて落とす。


「ひどくないですか?」

「重量オーバーで走れません」

「さらにひどいっ?!」


 全く、この人は……


「はい、どうぞ」


 キー付きの原付を一台出して、ヘルメットも渡す。


「ありがとうございます!」


 少々の紆余曲折はあったが、移動開始だ。




  ◇  ◇  ◇




「む……」


 寿が空中で一旦止まる。


「司ちゃんに何かあったような気がする」


 クルリと振り返るが、その視線の先にはぼんやりと霞んで海と山が見えるだけである。


「気のせいかな?」


 コテンと首を傾げる。


「気のせいだよね、司ちゃんに限って、お姉ちゃんを裏切ったりしないよね!」


 気を取り直して移動を再開する。まだ先は長い。




  ◇  ◇  ◇




「ハイ停止」


 車がかなり密集している手前で止め、原付を降りる。


「車が邪魔なので徒歩で」

「ついでにゴブリン退治ですねっ」


 成海も原付を片付けると、金属バットを手にする。


「行くぜ!」

「はいっ!」


 さすがに一週間以上閉じ込められていたゴブリンはかなり衰弱していて、ドアを開けても飛び出してこない。そろそろこのボーナスゲームも終わりかな?

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 読み直してて気がつきました。 え!?まだラジオやってる!? しかもニュースだの音楽だの普通だ! もうちょっとこう、 世間の状況を鑑みた内容でもいいのでは?
[一言] めちゃ面白くていっきに見ちゃいました笑 特に厨二病の下りの日本刀と銃構えるシーンで声出して笑ってました 次の話も楽しに待ってます!
[一言] 端から見たら豪運めっちゃ仕事してると思います! 据え膳も食べない主人公にはそれが分かっとらんのです 食べたら食べたで姉にばれた時刺されそうだけど
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