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◇ ◇ ◇
「ランキングか……」
「このままでは我々も危ないですな」
「うーむ」
対策室にいる大臣・長官はだいたいSP等に護られていたため、獲得している経験値はゼロ。一万人以上が経験値ゼロだった場合、どうなるかが示されていない以上、何らかの対策を打たないと人生が今月いっぱいまでになる可能性が高い。
「このランキング一位だが……どうだ?」
「普通に考えて日本人だろうな」
「該当は数十人いるようです」
「そんなにいるのか?」
「名字も名前も特別珍しくないですからね」
「藤崎つかさ……か」
「それなんですが」
「うん?」
「漢字が違う可能性が」
「あと名前がひらがなで無い可能性も」
「そうだよな」
マスコミがただ単に騒ぎ立てるだけに比べ、冷静に判断している。
「避難所にはいないのか?」
「避難住民の名簿が届いていないところも多く、何とも。今のところは該当無しのようです」
「そうか」
政府としてはこの「ふじさきつかさ」に連絡を取り、この状況についての情報開示を求めたいと考えていた。
マスコミの言うように、この人物がこの事態を引き起こしたとは考えていないが、レベル上げという点において、完全に独走状態と言うことは何らかのコツ、あるいは裏技のような手段があるのか。あるいは全く世間に知られていなかったが、極めて高い戦闘能力を有しているのか。
政府として交渉材料に使えそうな物は無いが、この事態が終息し、元の暮らしに戻ったときの事に色々便宜を図るくらいならば安い物だと考えている。
「他は?」
「こう言った類いの現象を扱った小説がネットの投稿サイトには多数ありまして、その作者と連絡が取れそうだと」
「何だそりゃ」
「ネットの投稿小説ですが……」
「そういう物があるのは知っている」
「こういう現実世界にファンタジーが出てくると言った物もジャンルとしてあるそうです」
「らしいな。読んだことはないが」
「そういった投稿小説の運営会社がこれによく似た題材を扱っている作者と連絡を取っていると」
「……それ、役に立つのか?」
「気晴らし程度には」
何の役にも立たない情報ではあるが、ずっと緊張が続いていた室内の空気が少しだけ穏やかになった。「だからなんなんだよ」という空気感ではあるが。




