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◇ ◇ ◇
「こちらに名前を書いてください」
「これ……名前に住所、電話番号……携帯でいいですか?」
「ええ……まあ……この辺、繋がりませんけど」
「はは……」
アパートから歩いて十分ほどの小学校が避難所になっていたのを知らず、近くを通ってしまったら周囲を警戒している警察官に捕まり――逮捕じゃないぞ?――そのまま避難所の受付に通された。
「それで、申し訳ないんですが、現在人が一杯で、寝る場所はなくて……」
「いいですよ。アパートが近くだから帰ります」
「申し訳ないです。あ、これどうぞ」
ペットボトルの水とおにぎりを二個くれた。
んー、結構厳しい状況であるが、特に困っていないんだが……
「ちょっと中の様子、見せてもらっていいですか?知り合いがいるかも知れないので」
「あ、どうぞ」
小学校の中は体育館は勿論、各教室も全て片付けられて寝泊まり出来るスペースとなっていた。さすがに人数分の毛布などはないが、夜も暑いこの季節なら大丈夫……なのか?一応職員室はここのスタッフの事務作業スペースなので近づかないように言われたが、その他は特に何も言われていない。当たり前だがどこに何があるかわからないので少し迷いながらも目的の場所をどうにか発見。
この学校は給食がセンター一括調理のようで、ただの配膳室になっていたが、デカい冷蔵庫があったので、肉と魚を投入。そして家庭科調理室。隣の部屋に食材が山積みになっていたので、野菜や米を投入。「配膳室の冷蔵庫を見てください」と書き置きを残したから大丈夫だろう。一宿一飯の一宿は無かったけど、このくらいはしてもいいか。在庫管理しているスタッフは大わらわになりそうだけど、頑張ってください。
「ふぃー、疲れた」
夕方六時に帰宅。結構放出したが、回収もかなりしたので、物資は昨日の二倍以上になったと思う。収納量の表示は相変わらず一%のままだからよくわからんけど。容量無限の可能性があるな。
「さてと……何か情報はあるかな……」
いつゴブリンが出てくるかわからないので、外でスマホポチポチは危険すぎるので使えない。手っ取り早く情報を集めるため、テレビとPCの電源を入れる。
「テレビは……相変わらずだな」
昨日と同じく、「未だに助けは来ません」とか「局内の物資も乏しくなってきており」とか言ってるし、政府の対応を批判しているだけだ。なんの役にも立たない情報源と化している辺りが日本のマスコミの限界だろう……海外の情報が全く入ってこないのでもしかしたらどこも同じかも知れないが。
そう言えば、政府、というか警察や消防が動いていないな。警察署なんかをあえて迂回してるので、もしかしたら大活躍しているのか?明日は近くに行ってみようか。
ネットは……お、レベル二になったという報告があるな。
生存報告スレ 四十二人目
72 名無しさん
レベル二になったぞ
疲れた
78 名無しさん
>>72乙
すげーな
84 名無しさん
>>78同意
>>72よく頑張った
89 名無しさん
>>72だけど、一言だけ言わせてくれ
感情が消えるほどゴブリン狩った
97 名無しさん
>>72マジか
俺、まだ経験値が二桁なんだが、キツそうだな
114 名無しさん
>>97俺もさっきレベル二になったから>>72の言いたいことはわかる
なんかもう、作業ゲーどころじゃ無い
金属バットとバールのような物を使っているんだけど、手に残る感触がな
119 名無しさん
>>114生々しい報告だな
ところでレベルが上がったらステはどうなった?
131 名無しさん
>>72だけどHPが一増えた
あとは変化無し
147 名無しさん
>>114だけど、>>72と同じで変化無し
あ、スキルポイントってのが一になったか
155 名無しさん
あとはレベル三になるのに必要な経験値がな……二千
159 名無しさん
>>155マジか!
193 名無しさん
>>159-179マジ
心が折れそう
「ふう」
コンビニ弁当をお茶で流し込んで夕飯終了。
レベルアップした結果の報告は、新たな絶望の始まりを告げていた。俺も細かく見ていなかったけど、数レベル上がらないとステータスは変化しなかったような気がする。HPはわずかに増えていったけど、一レベル程度では上がったなぁと言う実感は無い。
つくづく成長促進というユニークスキルに感謝。あと先駆者にも。
今のステータスは、
藤咲司 レベル23 (211/230)
HP 41/41
MP 34/34
力: 27(+2)
魔力: 16(+2)
素早さ: 24(+2)
頑丈: 21(+2)
運:MAX
スキルポイント:15
称号
先駆者★★★
スキル
豪運
成長促進
アイテムボックス レベル10
性別転換
ガチャ
偽装 レベル4
レベル二十になったときにまた先駆者が増えたので★が三個に。これ、集まったらどうなるんだろうか?
まだ使える電気水道ガスに感謝しながら風呂に入り、ベッドに飛び込んだ。明日は水の確保をしようか。




