表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: ひじきとコロッケ
六月二日
21/176

(4)

  ◇  ◇  ◇




「全く人を見ないな……」


 ゴブリンがいると言うことはそこにいた人が殺されたと言うこと。

 これは予想だが、地球上のあらゆる地域が「人間がいるところ」「ゴブリンがいるところ」で分けられたんじゃないか?

 原付ですれ違いざまにゴブリンを殴り倒しながら大学へ向かう。テレビ局であれだけ生き残っていたのなら大学もそれなりに人が生き残っているだろう。テレビやネットでは無く、直接会って情報収集というのも大事だろう。

 大学の近くで原付を降りて収納。徒歩で大学へ向かう。「原付か、便利そうだから貸せ」と言われるのもイヤだし、アイテムボックスに収納するのを見られるのも何かとマズい。

 やがて大学の門が見えてきた。ここも机や棚を積み上げてバリケードにしているようだ。あとは長い棒の先に刃物を付けたのを持った人が数名。見張りか。気にしなくて良いだろう。俺はここの学生なんだからな。


「止まれ」

「誰だお前?」


 っと、ヘルメット被ったままじゃ怪しいのも当然か。慌ててヘルメットを脱ぐ。


「スマン、防具代わりに被ってたんだ」

「そうか。何の用だ?」

「入っていいか?俺、ここの学生なんだけど」


 学生証をチラリと見せると、警戒を解いてくれたので門を乗り越えて中に入る。


「お、フジじゃん」

「え?古田か」

「おう」

「無事だったんだな」

「お前もな」


 大学で出来た友人、古田が見張りの中にいたので周りからの警戒も解かれた。フルネームは忘れたが、向こうも俺のことを「フジ」と呼ぶからおあいこだろう。


 見張りを交代した古田と歩きながら話す。


「で、こっちはどうだったんだ?」

「マジで驚いたよな。焦って階段から落ちた……って奴もいたぜ」

「そうか」


 古田が俺も知っている名前を挙げていく。そうか、と答えておく。短い期間ではあったがそれなりにバカ話で盛り上がれる仲だっただけに心が痛む。

 その後はなんとかゴブリンを倒しつつバリケードを作ってなんとか事態を収拾、付近の住民も少し受け入れて現在は周囲を警戒中。


「確認したいんだが……ガチャの結果ってどうだった?」

「ペットボトルに缶コーヒー。あとはノートと腕時計にスマホの液晶クリーナー」

「全部★1か」

「まあな。フジは?」

「★2が二つ。一日一回、コンビニ弁当とミネラルウォーターが召喚出来る」

「お、いいじゃん」

「それぞれ一つずつだぞ。イマイチ微妙だ」

「はは」

「ちなみに大学内の連中は?」

「★3でスキル持ちが何人かいる。詳しく知らないけどな」

「へえ」


 あの説明を聞いて、二十四時間ギリギリまで待つ奴はほとんどいなかったんだな。ギリギリまで待って、うっかり時間を過ぎましたなんてのも間抜けな話だから気持ちはわかる。


「それじゃ、だいぶ被害も大きかったんだな」

「夜中までゴブリン退治だったからな。俺も三十は倒したぜ」


 大学構内には二千人近くいたが、現在残っているのは近所からの受け入れも含めて二百人ほど。死んだ者達は体育館に集めているらしい。近づきたくない場所だ。


「ある程度学食とか購買に食いもんがあるけど、明日まで持つかどうか微妙でな」

「そうだろうなぁ」

「午後から何人かチームになって食料集めに行こうって話になってる」


 チームを作るのは良いだろうな。俺も複数のゴブリンに囲まれたらさすがにキツい。

 だが、大学周辺の店はあらかた片付けてしまったので、食料集めは難航するだろう。少し戻しておいた方が良いかな?アイテムボックスを圧迫するようならそれも考えるのだが、今のところ収納力には困ってないが、このままスルーってのもな。


「フジはどうするんだ?」

「俺は実家に帰ろうと思ってる」

「実家?どこだっけ?」


 俺が実家の県名を口にすると古田の顔が強張(こわば)る。そりゃそうか。結構遠いからな。


「どうやって行くんだよ?」

「一応原付がある。こんな状況だし、ガソリンは入れ放題だろ」

「そりゃそうだろうけど」

「んで、ロッカーに入れっぱなしの荷物を取りに来ただけ。すぐにここを出るよ」

「そうか」


 他にもいろいろなことがわかった。電話は通じたり通じなかったりだが、何人かの職員、学生は実家に連絡が付いて無事が確認できているらしいが、実家に向かう手段が無い。電話が通じないのは電話の問題か、それとも……はわからない。


「お前の両親、無事なのか?」

「わからん。でもきっと無事だと思う」

「なんで?」

「あ、言ってなかったっけ?俺の親父、消防士なんだ」

「へえ」

「だからきっと生きてる、と思ってる」

「そっか」


 何となく無言になったところで、遠くから古田を呼ぶ声がする。


「多分、チームわけのことだな。行ってくる」

「おう」

「フジ」

「何だ?」

「気をつけてな」

「お前も。生きろよ」


「じゃあな」と互いにコツンと拳を突き合わせて別れると個人ロッカーの部屋へ。別に貴重品が有るわけじゃ無いが、ロッカーに行くと言った手前、荷物は回収して、背中のバッグに詰める。そして、階段を駆け上がり、図書館のある階へ。数名が机に突っ伏していて起きる様子は無いので、そのまま棚ごと本を収納していく。専門書が色々豊富なので、何かと役に立つだろう。寝ている連中が起きたら相当驚くだろうけど。

 一通り回収を終えるとさらに階段を登り、PC室へ。これもごっそり収納した、机ごと。

 そして空いたスペースに米袋を積み上げる。その横に業務用カレールー。タマネギ・ジャガイモ・ニンジンにカボチャ、ナス、ズッキーニを段ボールで山積みに。さすがに季節柄、肉を置いていくのはマズいな。タンパク源としてサバ缶を置いていこう。サバアレルギーの人、ごめんなさい。これでしばらく食いつなげるだろう……カレーばっかになるけどな。

 そして一階の階段横に「PC室を見ろ」と貼り紙を残す。ある程度日持ちする物ばかりだが、何日も放置出来る物でも無いし。

 あとは何食わぬ顔で門まで行き、見張りに軽く挨拶をして外へ出る。

更新頻度、しばらく一日一回にします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 電気が生きているのだから、設置位置的に防犯カメラも生きていそうだけど。
[気になる点] 無人でも無いのに本など盗んでてびっくりしましたw 代わりに食料置いていきましたけど…もやっとしちゃいます
[気になる点] 主人公を強くしすぎて、普通の行動が人間のくずに見えてしまうなろう罠にはまってますね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ