(3)
◇ ◇ ◇
「だああああ!」
「うるさいです!静かにやってください!」
「こんな、チマチマチマチマ……出来るかっ!」
「文句を言いたい気持ちはわかりますが、やってください」
六月一日正午、緊急事態と判断し、独自に小隊を編成し、周辺調査と住民救助に取りかかった。それから五分もしないうちに、各小隊からそこら中でゴブリンが暴れていることと、負傷者が多数いるという連絡が入り、次々と負傷者を含めた住民の避難誘導が始まった。とにかく付近の住民の安全を最優先に色々と動いたのだが、さすがに日付が変わる頃になると問題も出てくる。
物資はどれだけ残っているのか?他の駐屯地の状況は?全国、全世界の状況は?
自分たちの状況を整理し、防衛省に連絡を入れなければならないとなって、改めて事務方がほぼ全滅しているという事実が重くのしかかる。大切な仲間を失ったという精神的な喪失感は忙しさでごまかしていたが、情報整理・集約・連絡と言った作業が全く進んでおらず、誰かがやらねばとなったのだが、
「現場は俺たち下っ端が行きますんで!」
元気よく――勿論色々我慢した空元気なのは傍目に明らかだが――若い連中が出てしまい、
「ま、こう言うのは一番責任のある人がやるべきでしょ」
至極普通の意見により、階級が上の者が集められ、こうして書類仕事をしているのである。
勿論、こうした作業が得意な者もいて、それなりに作業は進んでいるのだが、駐屯地によっては彼のように、いわゆる脳筋が一番階級が上だったりすると、作業がそこで滞る。
「がああああ!」
「静かにしてください!」
「画面が固まった!」
「こまめにセーブしてくださいねって、言いましたよね?」
「やってられるか!俺は外に出るぞ!」
「死亡フラグっぽいのを立てないでください!」
「くっそ、あと少しだな……」
山ほど積まれていた書類も五センチほどに減っていた。
「コレを片付けたら……外に……出るんだ……」
「ハイハイ、フラグは立てないでくださいね」
「へ?」
やや疲れた顔をした隊員の手により、新たに書類が積み上げられた。二十センチほど。
「うおおおおお!」
「うるせええええ!」
作業開始からすでに八時間経過。完徹した彼らの仕事はいつ終わるのだろうか。
この先もちょいちょい自衛隊とかそう言う描写をしますが、ぶっちゃけ閑話です。




