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  作者: ひじきとコロッケ
七月六日
158/176

(1)

「性別転換&本日のガチャ実行っと」

「なんだか日替わりランチみたいな扱いね」

「寿姉、毎日の日課みたいなものだからその認識は正しいぞ」

「へへ、やっぱり?」

「あと、くっつくな。暑い苦しい」

「ぶー」


 梅雨明けが近いのか、雨が降る日は減ってきている気がするが、温度湿度は順調に上昇しており、七時前だというのに既に蒸し暑さを感じ始めている。エアコンが恋しい。


「で、何が出たの?」

「★5だった。これ」

「カプセルのまま?」

「正確に言うと、ガチャのカプセルからカプセルが出てきた」

「えーと、マトリョーシカ?」

「違うぞ。一応取扱説明書も一緒に出てきた」


 ホイ、と紙切れを寿に見せる。


「ふーん……これ、もしかして?」

「万一の時は使うかもな」


 そこへ成海も来たので、情報共有。説明書の通りだと、自分たちにも影響が出る可能性があるからだ。


「へえ、こんなのがねえ」

「使わないで済むに越したことはないけどな。もしも使ったら、成海さんの魔法も影響受けるだろうし」

「そっか。わかった、覚えておく」


 理解出来たところで、成海が本題に入る。


「で、朝は何食べる?」

「そうだなあ……っと、その前に確認なんだが」

「何かな?」

「昨夜……成海さんのテントが光ってたって言うんだけど、何かあったの?」

「え?なななななな……何のことかな?」

「さっき、自衛隊の人がそう言ってて。何かのスキルを使ってるのかな?って」

「あー、あれかな。懐中電灯」

「懐中電灯?」

「そう。ほら、あのLEDでランタンみたいに出来るの、あるでしょ?」

「あるね」

「手持ちを全部出したらどんな感じになるのかなって、試してみたのよ」

「何でそんなことを」

「えっと……暗くてちょっと怖かったから」

「そっか。ならいいんだけど」

「うんうん」

「色んな色で光ってたらしいけど」

「えっと……あれよ。ミラーボール」

「ミラーボール?」

「そう、ミラーボール。テントの中でつるしたら綺麗かなって」

「それなりに極限状況なのに何やってんの?」

「えっと……気分転換?」


 馬鹿馬鹿しくなって追求をやめた。とりあえず害がないならいいやと。

 一方成海は……ホッとしていた。

 言えない。

 伝説の魔法のステッキのスイッチを押したら起きたこと(・・・・・・・・・)は絶対に言えない。

 言えない。


「で、朝メシだが、実は昨夜こういうものを作っておいた」


 いいながらアイテムボックスから出したのはキャンプ用品では定番のメスティン三つと飯盒(はんごう)


「アイテムボックスって便利だよな。作りたてがそのまま保存出来るから」

「そうね」

「で、司ちゃんは何を作ったの?」

「飯盒は普通のご飯な。で、メスティンはサバ缶と野菜におろし生姜を添えて蒸し焼きだ」

「何か本格的なの作ったのね」

「いや……作ったのは自衛隊の皆さん。便乗しただけだよ」

「へえ」


 シンプルではあるが、バランスもいいし味もよく、三人とも残さず完食した。


「よし、そろそろいいか?」


 奥澤が全員の様子を見ながら立ち上がる。


「簡単に今日の予定を」


 一言で言ってしまえば、駐屯地へ戻る。それだけ。

 だが、あの三人の襲撃が予想されるため、距離も時間も長くなるが大きく迂回するルートをとる。普通に行けば約六キロの道のりが三十キロ以上に伸びるが、仕方ない、とした。うんざりした表情の隊員も多いが、安全のためと言うことで不満は飲み込む。


「片付けて九時に出発だ。各自、準備をするように」




  ◇  ◇  ◇




「どうだった?」

「遠回りのルートを行くような話をしていたな」

「どの辺だ?」

「ここから、こう言って……こう、だったかな?」


 中井が隠蔽スキルでギリギリまで近づいて聞いてきた情報を地図で見ながら予定ルートを確認。あとは待ち伏せる場所を決めるだけ。


「なあ、斉藤」

「ん?」

「どうしてもあいつら……藤咲司と戦うのか?」

「何度も言わせるな。ランキング一位から引きずり下ろす」

「わかった」


 中井も落合も、ランキングから引きずり下ろす必要性はあまり感じていないのだが、斉藤の言うことに逆らうつもりはない。スキルの正体がわからない以上、機嫌を損ねて殺されてはたまらない。

 ではこっそり逃げればいいかというと、さすがにその選択はない。何しろ斉藤がモンスターを瞬殺出来るというのは安全と言うことも意味している。


「よし、行くぞ」

「おう」

「うん」




  ◇  ◇  ◇




「そうか。今日中に駐屯地へ着くか」

「はい。その後、ヘリで空港まで移動し、一旦藤咲司たちの両親の元へ向かう予定です」

「わかった」


 政府としては、自衛隊に色々と貢献している三人に可能な限りの便宜を図ろうと色々と動き始めていた。


「そう言えば、この赤畑成海だが」

「はい」

「家族の安否は?」

「今のところ、どこの避難所にも家族の情報は入っていません」

「そうか」

「こればっかりはどうにもなりませんね」

「だが、できる限りのことはしよう」

「はい」


 そしてもちろん、その後に色々と協力してもらえないか打診する。藤咲司の「同行者」になれば一気にレベルが上がり、戦力増強が図れるし、三人の戦闘力はランキングトップ三だけあって非常に高い。拠点の獲得に是非とも欲しい人材だ。


「それと、これが追加の情報です」

「こんなにか」


 日本のあちこちに「どう見てもあれはヤバい」という拠点があり、現状では周囲を封鎖するしか手がないが、それもあの三人なら何とかなりそう。と言うのを察したらしい各国から、「ウチの国の○○を何とかして欲しい」という連絡が途絶えることがなく、これもまた悩みどころだ。


「それはそれとして、日本人の帰国プロジェクトは?」

「一番早いのがロンドンですね。あと一時間ほどで輸送機が到着します」

「それから三十分ほどでニューヨークとパリに。それから」


 まだ先は長いようである。




  ◇  ◇  ◇




「では出発」


 有名観光地の城から駐屯地はほぼ真東で、一直線に進めるような道路もあるのだが、全く違う方向、南へ進路をとる。


「最初の隊列、先頭は第六班、最後尾は第八班が担当だ」

「周辺の拠点は獲得済みだが、警戒は怠るな!」


 周辺警戒用にドローンを飛ばし、半数以上がいつでも撃てるように自動小銃を構えて進む。そしてもちろん、


「探知……問題なし」

「寿姉はさすがだな」

「もっと褒めなさい!」

「言い方!」


 緊張しっぱなしと言うのも疲れるから、ユルい感じでいるが、実のところ探知から隠れるスキルをあの三人が使っているとしたら、どんなに警戒しても足りない。


「出来るだけ広い道路を行く」

「障害物のない、開けた場所を行く」


 ビルを崩壊させるようなスキルではあるが、それほど遠くまで届かないだろうという予測。最低でも五メートル以上は建物などから離れるように意識して。どうしても避けられない障害物はドローンを先行させて確認して進む。




  ◇  ◇  ◇




「来たな」


 覗いている双眼鏡でもまだ小さな点だが、結構な人数がトラックも連れて歩いているのは間違いなく藤咲司たちと自衛隊だ。


「やるのか?」

「ああ。予定通り、ここでやる」

「わかった。じゃ、俺らは」

「それぞれの場所で待機ね」


 斉藤がゆっくりと襲撃場所へ向かい、中井と落合がサポート出来る場所へ向かう。


「さて、殺るか」

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