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  作者: ひじきとコロッケ
七月二日
124/176

(19)

  ◇  ◇  ◇




「そうか。情報感謝する」


 藤崎司から「憶測ですが」と伝えられた内容は、通常なら耳を疑うような内容だが、現実に隊員が三十人が姿を消し、荷物が瞬時に移動しているという事実がある。詳細を確認するまでうかつに近づけない何かがあると考えた方が良さそうである。


「どうします?」

「そうだな」


 藤崎司たちとの合流は、ただ単に三人の元へ行くだけなら、どうと言うことのない作戦だ。五月までなら車で迎えに行って終わり。交通事故だけ注意という、それこそ作戦と呼ぶのもおこがましいほど単純なもののはずだった。

 そして、モンスターの闊歩(かっぽ)する状況の今でも、武装した百名にドローンによる索敵を併用することで、それこそ怪獣クラスのボスモンスターに遭遇するアクシデントでもない限り、危険度はそれほど高くなかったはずだ。

 それがあの四人の登場で状況がガラリと変わった。

 何の根拠もない憶測だが、隊員三十人が姿を消した現象にあの四人は間違いなく関わっている。あの四人は危険だと、ドローンが破壊される直前まで送ってきた映像を見て本能が告げてきているのを無視出来ない。

 だが、何のためにあんなことをやったのだろうか?

 彼らの様子から、スマホなどを持っていないということはないだろう。ということは「この状況下で店舗などから物資を集める行為は窃盗と見なさない」「モンスターに襲われているときの刃物の使用は銃刀法違反に該当しない」などといった政府の発表は知っているはず。

 実際、彼らを見つけたとしたら、班を一つつけて、駐屯地に護送させても良いと思っていた。だが、彼らが隊員三十名をどうにかしたとなると話は別だ。

 犯罪行為として糾弾するとか言う以前に、四人と接触すること自体が危険になる。


「起こった事実を報告するのは当然だが……クソッ」


 現場で判断していいレベルを超えた。


「三十人が消えたときの状況は?」

「こちらにレーダーなどのデータを用意しています」

「よし。そのデータとドローンのデータ、そして藤崎司からの情報を至急駐屯地へ送れ」

「はっ」

「そして俺たちも一旦帰還する。隊列を組み直せ」




  ◇  ◇  ◇




「ねえ、司ちゃん」

「言いたい事はわかるけど、俺に言われても困る」

「でも、言わせて?」

「聞くだけなら」

「タワー、無いんだけど?」

「ぶっ壊されたって言ったよね?」


 ようやく到着したタワー跡地は、モンスターが周囲にいないという点では平和な場所であるが、すさまじい破壊の爪痕があるという意味では何となく落ち着かない。


「崩れてきそうなところは全部崩れてるから、大丈夫だろ」

「そだね」


 少し離れたビルに入り、安全を確保。


「とりあえず話の続きをするか」

「そうね。とりあえず猫について」

「それ、重要?」


 姉弟の会話を横に成海はネットの情報を漁りはじめた。さて、何か新しい情報は出ているだろうか?




  ◇  ◇  ◇




「拠点で出来る事はこんなにあるのか」

「農地開拓、住宅建設、水源確保……」

「何もしなくても、モンスターの発生抑制と、住民の健康向上か」

「領主系スキルの種類によって多少の違いがあるようですね」

「スキルレベルの向上でそれぞれの効果が上がるようだな」


 首都圏のいくつかの拠点で、何が出来るかの検証が始まり、報告が次々上がってくる。


「何かを作る(・・)と、そこにあった物は消失」

「瓦礫の片付けが簡単に済むのはありがたいですね」

「だが、電線や水道といった生きているインフラも消えるのはちょっとな」

「農地を作っても、田畑になるだけで、作物を植えて世話をして、というのは変わらないか」

「おそらく収穫までにかかる時間も通常の作物と同等でしょう。地面を耕す手間が省けるだけでもありがたいと」

「そうだな」


 獲得した拠点を管理する――便宜上、管理すると呼ぶ事にした――領主系スキルの持ち主も、スキルレベルにより拠点の領域――支配エリアと呼ぶ事にした――の広さが変わるので、うまい事配置しないと、支配エリアが重なり合って勿体ない。勿体ないという認識をしている時点で日本人らしさがにじみ出ていると言えるか。

 情報を整理し、今後の方針を検討しているところに、想定外の連絡が入った。


「藤咲司と合流しようとして、三十人が消えた?」

「どこかへ連れ去られた可能性もありますが……現時点では不明です」

「それで?」

「残り七十余名は駐屯地へ帰還中。今後についての指示を、と」

「詳細はこちらに」


 現時点で確認できている内容は目を疑いたくなるものばかりの上、これからどうすればいいのだろうかという問いに何と答えれば良いか。




  ◇  ◇  ◇




「四人に関しては、新型ドローンによる監視を継続する事となった」

「新型?ああ、あの」

「そうだ」


 民間の規格を逸脱した仕様の、一般には秘匿されている新型ドローン。操作可能距離は数十キロ単位。複数のカメラがドローンの下半分のほぼ全域をカバーし、暗闇はもちろん、かなり遠距離でも拡大して鮮明な画像を撮影出来ると言う、その存在が明らかにされたらマスコミから集中砲火を浴びそうな逸品だ。

 これを、三台飛ばして四人を監視する。キロ単位で離れた位置からの監視ならば、プロペラ音が聞こえるという心配も不要だろう。


「既に飛ばしている……映像はこれだな」

「なるほど」


 夕暮れどきの明るさでも鮮明に見えているのはさすがの性能だ。


「奥澤、四人はこちらで監視しておく。不穏な動きがあったらすぐに連絡するから何としても藤咲司と合流を」

「わかりました」


 四人のいる近くを通るのは危険と判断。川沿いに大きく迂回するルートで、かつできるだけ早く合流出来る場所を考える。




  ◇  ◇  ◇




「わかりました」

「スマンな、君たちのいる位置からは結構距離があるが」

「いえ、大丈夫ですよ」


 こちらは三人の移動だから、何かあっても柔軟に対応しやすい。対してあちらは何十人の移動。不測の事態に応じやすい、広い道路を使うとなると合流出来る場所は自ずと限られる。


「例の四人については遠距離からの監視をつける事にした」

「遠距離?でも、結構離れた位置にいたのに……」

「詳細は聞かないでくれ」

「わかりました」


 合流地点と予定時刻を再確認して電話を切る。


「と言う事で、明日は朝から移動だ」

「うん」

「わかったよ。あ、これ面白い」

「おお……」


 意外にも早く打ち解けた二人はネットで何か面白い情報を見つけたようだ。ま、この状況下で面白いってのは……何だろう?




【七月から】さらに新しい生活様式スレ【また新生活】 七日目


153 名無しさん

都内なんだが、でかいモンスター倒してから自衛隊が結構動いてる

ウチの周りのボスモンスターも物量で押しつぶしてるみたいだ


154 名無しさん

日本で物量作戦て

ボスを倒した後はどうしてるんだ?


155 名無しさん

アパートから見えるところにある神社には町内会の会長が連れてかれた

よく聞こえなかったけど、ここの拠点を任せるとか何とか言ってた


158 名無しさん

>>155ってことは、ボスを倒して拠点獲得したのを町内会長にしたってことか?


159 名無しさん

ボスの強さと拠点の広さが比例するのかもな

あのバカみたいにでかいモンスターのとこは大臣クラスが行ったんじゃない?


160 名無しさん

拠点獲得すると何が出来るかとか確認出来たのかも?

例のふじさきつかさから何か情報提供があったとか


161 名無しさん

ふじさきつかさちゃん、万能杉!


163 名無しさん

>>161該当スレ行ってみ

すごい事になってるから


167 名無しさん

>>163マジかよ


マジだった

万能天使扱いされてるぞ

どうなってんだ?


168 名無しさん

ちょっと外に出てつかさたん探してくる!


170 名無しさん

>>161-169

お前ら落ち着け

ふじさきつかさはともかく、政府は何か情報をつかんだのかもな

で、それを確認するために動いている?


171 名無しさん

陰謀論者が好みそうなシチュだな

でも公式発表は特にないからなぁ


172 名無しさん

一応あるぞ

自衛隊が安全確保のために動きますとか何とか


175 名無しさん

海外の状況はあまりわからんけど、日本みたいに動いてる国は少なそうだな


176 名無しさん

海外はいきなりトップが死んでるというのが多そうだ品

タダの四角いビルに逃げてた日本政府、マジ有能

七月二日、終了です

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― 新着の感想 ―
[良い点] 万能天使で幻の藤咲司ちゃんの名声が素晴らしい
[一言] 消されてしまった人達は元に戻すことができればいいんだけど
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