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ついにガチャ回ですが、注意書きを。
一部の方の心を抉るような表現があります。注意して下さい。
『しかし、その身柄を拘束することは出来ません。我が国は全ての国民の基本的人権を尊重する姿勢をこれまでも、現在も、そしてこれからも崩すこと無く貫……』
会場のあちこちから野次が飛び、何を言っているのか全く聞こえないほどになった。そして野次の内容のひどいことと言ったら。
『ふざけるな!』
『一体どれだけの犠牲が出たと思ってるんだ』
『戦争だ!今すぐ日本に攻め込め』
野次が多すぎて事務総長が木槌を何度も叩いているが一向に収まらない。
「国際平和のための機関の中心で戦争を叫ぶ国が出るとはね」
「映画化しそうだな、あの国なら」
「あっちの国には今後何の支援もするなよ」
「今の状況で国際支援も何もあったものじゃないですけどね」
画面の中では野次で調子が乗ってきたのか、各国の――もちろん民間人が出席している国だが――代表が大声でわめき散らしていた。
『この一ヶ月間!世界にどれだけの被害を与えたのか、日本はわかっているのか!』
『そうだそうだ!』
『謝罪と賠償をせよ!』
『責任を取れ!』
『今すぐにでも日本に宣戦布告を!戦争の許可を出せ!』
どんどんカオスになっていく中、武内大使が大声で返す。
『貴様ら!「ふじさきつかさ」がどういう人物かわかっているのか?!タダの十八才の大学生だぞ!』
『知るか!』
知らずに言ってたのかと全員がまたため息をつく。だいたいそうだろうとは思っていたが。
『そこまで把握しているなら身柄を拘束しろ!』
一人が席を立ち、武内大使の前まで進み始めたところで、バン!と机を叩いて声を張り上げた。
『なら聞くが!どうやって世界の全ての人間に、ガチャだとかステータスだとかが出来るようにしたんだ!そこら中で湧いてくるモンスターはどういう原理で出てきているんだ?!つい二十時間ほど前に起こった、人間が異形となる事態をどうやって引き起こした!説明して見せろ!』
さすがに会場が静まりかえった。言ってる内容がもっともだと言うこと以上に、気迫だけで全員を黙らせてしまう様子に、カメラ越しに見ていた日本側もやや引いた。
「武内って……こんな奴だっけ?」
「もっと温厚な方だったと思いますが」
「さすがに腹に据えかねたか」
「まあ、あれで剣道三段、柔道五段、バリバリの武闘派体育系ですからね」
「それは初耳だな。だが、あの腹の底から出てる声は頼もしいな」
そろそろ全員が寝不足のテンションに近づいており「ま、どうでもいいだろ」という空気になっていた。
「こりゃ長期戦になるな」
総理の呟きに皆が頷いた。
「総理、明日……と言うか今日ですが、色々続きそうですから今のうちに休んでいて下さい」
言外に「この様子だと五時間はこのグダグダが続くから聞いていてもしょうがない」という含みを持たせているが、誰もがだいたいそんなことを予想していた。
「わかった。お言葉に甘えよう。だが、君らも交代で休めよ」
「「「はい」」
画面は別の国の代表がまたおかしなことを言い始めたのを映していた。長い一日になりそうだ。
「これをどうにか出来るなら、あの事務総長も大物だな」
だが、このグダグダとした会議は総理が仮眠から戻るまで延々続いた。
◇ ◇ ◇
「さて、八時を回ったので、ガチャをやろうか」
「よーし、いいの出すぞー」
司は六回、成海は五回。さっさと済ませて、ミッドDドラゴンの討伐にかかりたいところだ。
「交互にやろうか。とりあえず俺から……おりゃっ」
カプセルからはクレジットカードのような物が出てきた。
「えーと……★5、スキル進化チケット。進化出来るスキルを強制的に進化させることが出来る。使用期限二十四時間」
「ふーん」
「後回しでいいや」
「じゃ、次は私ね……えいっ……★5!……って火魔法10……あの、もう火魔法は5なんですけど」
「んー、それって足して10以上になるから進化!とか、ないかな?」
そんなことが?と思っていたら成海にアナウンスが聞こえてきた。
『火魔法のレベルが10を超えるため、進化して業火魔法5になります。最初に業火魔法の獲得をしました。称号『紅蓮の魔女』を獲得しました』
「うわああああ!」
「え?え?何っ?!」
突然ゴロゴロと転がり出した成海に司はオロオロとうろたえるしかない。
「ああ……うん、何でもない。何でもないよっ!」
「絶対なんかあったよね」
「何もありませんっ!」
「まあ、いいけど。次行くよ……★5……偽装レベル10……」
がっくりと項垂れる司にアナウンスが響く。
『偽装のレベルが10を超えるため、進化して幻影魔法4になります。最初に幻影魔法の獲得をしました。称号『幻の藤咲司』を獲得しました』
「ぎゃあああああ!」
「つ、司ちゃんっ?!」
心が!心がえぐり取られそうだっ!
「な、何があったのっ?!」
「な、何でもない。何でもないよ、うん……次は成海さんの番」
「ああ……うん」
イヤな予感がするなあと思いながらガチャのコインに触れる。
「えいっ……★5の水魔法10……って」
『水魔法のレベルが10を超えるため、進化して氷結魔法5になります。最初に氷結魔法の獲得をしました。称号『氷雪の魔女』を獲得しました』
「っきゃああああああ!!」
「うわああっ!」
またしてもゴロゴロと転がり出す成海。ガチャ開始からずっとこれが続いてる気がするのだが。
「次は俺……えーと……★5……うわっ」
「何これ」
骨格標本が現れた。
と言っても、リアリティは無く、コミカルな感じで明らかに人形っぽく、手足の関節は紐でつながっていて、なぜか額のところに押しボタンスイッチがついている。
ハラリと落ちた紙には、
「マリオネット?」
「えーと、操り人形ってこと?どこにも紐は無いけど」
「えーと、額のスイッチを押すと、三十秒間思う通りに動かすことができます。自立歩行も可能です。三十秒経過すると消滅します」
「何よそれ」
「マジックアイテム的な物ってことか?」
これ、何に使うんだ?
「よし、とりあえず後回し、次に行こう」
アイテムボックスに放り込んで、成海の番だ。
「では私……★5、風魔法10!」
「何か魔法スキルが良く出るなぁ」
「そ、そうね……うん」
スキルが進化しなくて良かった。
「じゃ次は俺、★5完全回復薬!」
「やったね!」
「んー、とりあえず成海さん、持ってて」
「え?」
「多分、ミッドDドラゴンとの戦いは成海さんの魔法がカギになる。MP使い切って魔法が撃てませんって事態だけは避けたい」
「わかったわ」
ここまで魔法が揃ってくると、司が近接で攪乱、成海が遠距離から魔法攻撃というスタイルが良さそうに思える。
「じゃ、次、私ね……★5、土魔法10!」
「順調に魔法が揃ったな」
「う……うん」
「じゃ、次……★5、泉の精チケット……?」
「何それ?」
「えーと……『使用すると泉が現れます。何かを落とすと、泉の精が素敵なアイテムと交換してくれます』だって」
「それって、「あなたが落としたのはこの金の斧ですか、それとも銀の斧ですか」ってアレ?」
「だな……使用制限、二十四時間以内だってさ」
無茶振りが酷いな。
まだガチャが続くと言うことは、読者の心の平穏が訪れるのもまだ先と言うことです。




