(8)
アクセス数がいつになく伸びて評価もたくさんいただけているので、更新頻度を上げてみようかと考えた。
「はあ……」
大きく息をついてから、ゆっくりと窓の外を見る。
現在高度一万メートル、快晴。こんなことでもなかったら、眺めも良く、気持ちのいいフライトだったろうに。
全く、どうしてこうなったと心の中で呟いてからタオルで手を拭く。あちこちに飛び散った血のせいで手が真っ赤だ。せめてもう少し拭き取っておかないと、いざというときに手が滑りそう。
「こんなことなら船にすればよかったかな。船なら墜落しないし」
「船は船で大変らしいですよ」
「え?」
何気ない愚痴に小倉が応じた。
「んー、そりゃ自動車よりは大変そうだけど……ほら、飛行機みたいに上下の動きはないし?」
「ああ、そうですね」
「それに墜落しないし」
「確かに船は墜落しませんね。沈没はしますけど」
「私、泳ぐの得意だから」
「なるほど」
「それに飛行機って……止めたら堕ちちゃうでしょ?船は止めればそこに止まるから」
「船って、ブレーキがありませんからね。止めたくてもすぐには止まりませんよ」
「え?ホントに?」
「ええ。大きな船になればなるほど、止めるのは大変だと聞いたことがあります」
スクリューを止めても船は惰性で動き続ける。これは自動車や飛行機も動力を切ったりしても動き続けるところから想像はしやすい。だが、自動車はブレーキをかければ比較的すぐに止まるし、飛行機も操縦桿を倒せば比較的機敏にそちらに機体が傾くように出来ている。
だが、船の場合は勝手が違う。
動き始めるとき、スクリューを回しても水の抵抗は大きく、なかなか進まない。そして、進み出してしまうと船の重さによる慣性が大きく働き、スクリューを止めてもかなり長い間そのまま進み続ける。何しろ、船の形状は水の抵抗をいかに小さくするかを追求しているのだから、なかなか止まらないのも当然だ。何とか止めようとすると、スクリュー逆回転しかないのだが、それでもかなりの距離を進む。外洋を進む大型タンカーなんかはスクリューを止めても半日以上そのまま進み続けるというから実にスケールがでかい話だ。
そして、この操縦に対する鈍さは着岸させるときの難しさでもある。
「新幹線にすれば良かったかぁ」
「あはは……世界一安全な鉄道ですからね」
「航空会社の人的には複雑な感じですか?」
「それはもう」
旅客運送業という括りではライバルなんだろうけど、目的用途が違うよね、とは言えなかった。




