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40:王女の保護

 王妃様とシャーリーを乗せた馬車は、宮殿の門を抜け貴族街へ。


 お母様にどこまで行くのか確認すると、このまま自分の家まで向かうと教えてくれた。確かに、夏の館も冬の館並みにゴーレムが庭にゴロゴロ置かれているし、お父様のカラクリやトリックも満載だ。関係ないけど、最新のトレイまで完備され、空き部屋も沢山あるから、身を隠すには丁度いいかも。


 冬の館で魔族の王ナーグローア様をもてなせたくらいだから、エルフの王族が滞在しても問題ないでしょうね。シャーリーがどんな反応をするのか読めないけど……。


 宮殿の門を抜けるまでの間、何度も馬車の後方から爆発音が響いていた。


 その音が聞こえる度に、ビクッと身体が震えたが、門を抜けてからは静かなもので、馬と車輪の音しか聞こえない。貴族街に住んでいる人達には、宮殿の騒動は知られていないようです。


 お父様や叔父様、騎士団の皆んなが何とかしてくれる……。


 お母様も言ってたし! きっと、黒い靄と戦う術を、お父様は編み出したと信じたい。 


 黙ってやられる人じゃないもんね!


 さっきまでの不安な気持ちは、お父様を信頼する事で少し和らいだような気がする。余裕が出てきた自分は、王妃様とシャーリーの様子を伺い見る。突然の襲撃のせいもあってか、二人とも表情が暗かった。


 自分と同じく、戦闘に参加している王様の様子が気掛かりなのだろう……。今の自分には、二人にかける言葉が見つからず、視線をお母様の胸に移して黙っていた。


 こう言う時にどんな言葉を掛けたらいいのだろう……自分の言葉で大丈夫と言っても、信憑性も裏付けも無いから気休めにもならないよと自問自答。


 結局、何の答えも見つからないまま、家の玄関前に馬車が着いてしまった。


 玄関前には、学院に行っているはずのお姉様とリリアが出迎えてくれた。


 あれ? 今日は普通に登校してるはずだよね? 体調が優れなくて帰って来たとか? 今日は朝から身も心も騒騒しいです……。


「お母様、お知らせいただきありがとう存じます。皆さんに何事もなく安心いたしましたわ」


 お姉様は、自分達の姿を見て安心したのか、笑顔で迎えてくれた。側にいるサーシャを見て、思わず「あー」と、声を出して納得。ナーグローア様が残してくれた双子の護衛騎士達が有能過ぎですよ!


「アンヌ王妃様、シャルロット王女様、どうぞご案内いたしますわ」


 お姉様が、王妃様とシャーリーを家に招き入れるのに続いて、お母様と自分も続いて入っていった。


「まぁ、アリシアのおやしきは、ずいぶんごうかなたたずまいですのね。きゅうでんのおへやとかわりませんの」


 談話室のソファに腰掛けるシャーリーは、部屋の様子を見て驚きの声を上げていた。


 ふふふ、そうでしょう、そうでしょう。


 お父様かお母様か、どちらのセンスが活かされているのかは分からないけど、ワインレッドのふかふか絨毯、草木模様の乳白色の壁紙、自然光を多く取り入れられる様に設計された大きな窓、テーブルや椅子の嫌味のない彫刻と、ゆったり快適に過ごせる空間が演出されているのだ。


 自分も、この部屋で皆んなと過ごす時間が、お母様とお姉様と共にする寝室のベッドの次に落ち着きますし!


 部屋の片隅には、ランドグリスお兄様からいただいた、巨大ぬいぐるみも鎮座している。


 シャーリーはソファに座りながら巨大ぬいぐるみが気になるのか、何度も視線を向けていた。


 ふふ、シャーリーもあのもふもふの虜になっちゃいますか? あれに魅了されたら、そう簡単には抜けられませんよ、くくく。


「シャーリー、あちらでわたくしとおはなししませんか?」


 シャーリーの隣に座り、ぬいぐるみを指して耳元で囁くと、彼女はこちらを見てパァっと表情が明るくなった。いい反応です、シャーリー。やっぱり小さい女の子ですし、あのぬいぐるみに包まれたいですよね!


「いいかんがえですわ、アリシア。こどもだけのはなしもありますものね」


 うんうんと、首を縦に振り、仕方がないといった表情を作るシャーリー。自分は、テーブルにいるお母様に視線を向けぬいぐるみに言っても問題ないか確認する。お母様もシャーリーの様子を理解していたのか、ニコッと微笑み頷き返してくれた。


 お母様の許可を得たと判断して、シャーリーの手を取りぬいぐるみまで一目散に駆け出す。勢いを緩めず、もふもふを一身に受けようとそのまま体当り! 


 パフッ!


 自分とシャーリーは絡み合うように、巨大ぬいぐるみのもふもふに包まれ、笑顔を向けあった。


「このかんしょくははじめてですの。ふわふわしてきもちいいですわ」

「ふふ、そうでしょー。ここでこうしてつつまれると、ねむってしまいそうになりますよ」


 ぬいぐるみを背にして、身体をズズズッと沈めて見せると、シャーリーも興味をそそられたのか同じような姿勢になり身体を埋めていく。


「いいですわー。アリシアがうらやましいですの」


 二人で、巨大ぬいぐるみに埋もれながらはしゃいでいると、それを見ていたお姉様も加わり、さらにライネも参加し巨大ぬいぐるみに身を任せた。突然の出来事で張り詰めていたシャーリーは、もふもふに囲まれたおかげか、表情が緩みいつもの表情を見せる。


 わちゃわちゃと騒いでいる内に、シャーリーは眠そうに目を擦りだし、数分と待たずに瞳を閉じ眠ってしまった。幸せそうに眠るシャーリーを見つめ、その様子に何故か安心を覚える。騒動が早く収まって、何の憂いもなく無邪気に遊べる日が来る事を願いながら、自分も誘われるように眠りに落ちていった……。


 ――家の中に響く怒号で目が覚める。


 目の前には、シャーリーが気持ち良さそうに寝息を立てて眠っていた。そういえば、宮殿でもこんな感じで一緒に寝ていたような……と、彼女を見ながら思い返す。初めての友達とこうして仲良く寄り添えている事に、幸せを感じてしまった。


そのまま身体を少し起こしてベッドの上を見渡すと、いる筈のお母様の姿は見えない。幸せな目覚めから、一気に深い闇の中に叩き落とされ、不安な気持ちがドッと押し寄せて着た。


 ベッドの向こうを見て必死にお母様を探す自分に、待機していたリフィアが駆けつけ様子を伺う。


「アリシア様、奥様は旦那様がお帰りになりましたので、下の階でお迎えに行っております。シャルロット王女様がお目覚めになりましたら、お連れするように申し使っておりますので、ご安心ください」


 丁寧で落ち着いた様子でリフィアが話しかけてくれたが、さっき聞こえた大きな声とお母様がいない事に不安に思い、耳に入ってこなかった。


「リフィア、さっきのおおきなこえは? おねえさまや、おうひさまは?」


 矢継ぎ早にリフィアに質問を投げかける自分。心のざわめきが収まらず、気持ちが落ち着かない。


「お二人共、奥様と一緒でございます、アリシア様」

「おおきなこえは?」


 リフィアは、下で騒ぎになっている声について、言及を避けようしているように見える。だけど、起こされた原因なのだから、ちゃんと教えてほしいのですよ!


「私もその場におりませんので、お答えが難しいのです。恐らくですが、旦那様と騎士達の声ではないかと思われます」

「ここでなにかがおきている……?」 

「否定も肯定も出来かねます。真相につきましては、王女様がお目覚めになるまでお待ちくださいませ」


 横目でシャーリーをチラリと見る。可愛らしく幸せそうに眠っているので、叩き起こすのは忍びなかった……。


 お父様や騎士団が家に来ている。直ぐに様子を見に行きたいが、この場から身動きできない事に苛立ちを覚える。せめて、お母様かお姉様だけでも居てくれたら……。


 不安と焦りで胸のざわめきが一層激しくなり、胸が熱くなり涙が溢れてきた。こんな幼い身でなければ、直ぐにでも駆けつけられるのに……苛立ちが悔しさに代わり、溢れる涙で布団が濡れていく。


「アリシア? どうしてないているのです? いたいところがありますの?」

 

 無邪気な顔で、シャーリーが自分の様子を見て問いかける。


「シャーリー! おとうさまたちがもどられたそうなの! はやくしたにいきましょう!」


 起きたばかりで、意識がはっきりしていない様子のシャーリー。自分は逸る気持ちのまま、シャーリーを布団から出そうと無理やり手を引いた。


「アリシア、いたいですの。すこしおちついてくださいまし」


 シャーリーが苦痛で表情を歪める。自分は、彼女の顔を見てハッと我に返り彼女の手を離した。


「ごめんなさい、シャーリー。どうしてもきになることがあって……」

「れいせいなひとだとおもってましたけど……アリシアもわたくしとおなじですのね。ふふふ、ゆるしますの。したくしておむかえにいきましょう」


 小さい手で自分の頬にそっと手で触れ、優しい笑顔を見せるシャーリー。自分は、その手を取り、温もりを確かめるように頬を押し付けた。


 シャーリーのお陰で逸る気持ちが少し落ち着きを見せ、ドレスを着せてもらい、髪を整え始める。下の階にどれだけ人が集まっているのか分からない。王族のシャーリーはもとより、貴族の家の自分も身嗜みを整える必要があった。


 こんなところで時間を取られるなんて……世間体という面倒な言葉を投げ捨てて飛び出したかった……。


 支度が整いリフィアが自分とシャーリーを抱えて下へ向かってくれる。


 部屋を出て直ぐに、お母様やお姉様、王妃様の切羽詰まった声が聞こえ始めた。その声が徐々に鮮明になるにつれ、異臭が鼻をついてくる。


「アリシア、とてもいやなにおいがしますわ」


 シャーリーと自分は、その臭いに堪らず指で鼻を押さえた。家の中で、こんな腐った肉が燃えるような臭いを嗅いだ事はない。どうして家の中で……お父様達の身に何が起きているのか……不安で胸が締め付けられていく。


 はやく、はやく、お父様の下に……。


 掴んでいたリフィアの服に力が篭る。彼女はそれを察してくれたのか、歩く速度を上げて下へ向かってくれた。


 階段に差し掛かったところで、一階の様子を一望する。


 そこには、この家では起こりえない惨状が広がっていて、胃の中の物が喉まで競り上がってきそうになった。


 お洒落だった壁は、血で汚れ赤黒く染まり人が寄りかかっている。通路には、壊れた鎧を纏った騎士が倒れるように横になっていて、苦痛で顔を歪めていた。


 まるで、戦争映画の野戦病院のような光景……。


 現実で起こっているとは思えず、頭が認識を拒否する。


 視線を向け続ける事に耐えられなくなった自分は、リフィアに抱きつき背を向けた。

もふもふの刺客によりシャーリー撃沈。

しかし、眠りから覚めたアリシアちゃんの家には……

お父様は? お母様は? お姉様は?


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