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39:強襲

 恐怖心に駆られ号泣したその日、お母様の胸の鼓動を確かめながら再び眠りに落ちた。


 何日も眠っていたせいで、お腹の中はスカスカだ。


 目覚めると共に、お母様のおっぱいにむしゃぶりついてお乳をひたすら飲み続けた。


 右手は口元の添え、左手でもう片方の胸を確かめるように触れ、にぎにぎとさせて感触を確かめる。お母様の温もりを肌で受け、生きている事を実感した。


 瀕死の重傷を負ったはずだが、外傷も後遺症もないようです。頭もいつも通りの思考だし、完全に回復したと思っている。


「おはよう、アリシアちゃん。もう、すっかり良くなったみたいですね。お母さん、安心しましたわ」


 お乳を必須に吸い上げようとする自分を、お母様は優しく声をかけ、髪の毛を梳くように撫でてくれた。お母様の指が肌に触れる度に、心が穏やかになっていく。自分は、お母様のおっぱいと撫でてくれる指に、全神経を向け幸せなひと時を満喫した。


 今日は、宮殿でのお勉強はお休みになった。けれど、シャーリーに無事な姿を見せて安心させたいと言って、宮殿に連れて行ってもらう。お姉様は、自分がまだ病み上がりなので、宮殿に連れて行くのはよろしくないと心配されたけど……お母様から離れない、抱っこされて移動すると約束を交わして、何とか納得してもらった。


「もう、アリシアちゃんは人の気も知らないで! シャルロット王女様より、私はアリシアちゃんが心配ですのよ。今回は特別ですからね!」


 ぷりぷりとした表情を見せるけど、お姉様は自分の我儘を許可してくれる。本当に優しいお姉様です。自分には勿体無いですよ……お姉様の優しさに心が、ふわっと温かくなり、抱きしめたい衝動に駆られる。


「おねえさま、ぎゅーです! ありがとうぞんじます。やくそく、ぜったいにまもりますね!」


 突然自分に抱きつかれたお姉様は、自分の言葉を聞いて表情を緩め、抱き返してくれた。


「絶対ですよ、アリシアちゃん。無茶してはいけませんよ」


 お姉様は、抱き締める腕に少し力が篭り、自分の顔をジッと見つめる。優しく穏やかな表情を見せるけど、少し不安を感じている視線。自分は、お姉様の透き通る翡翠色の目を見つめ返し、首を縦に振った。


 馬車に乗り込むまで、お姉様が見送ってくれる。宮殿までは、お父様と叔父様、エルグレスお兄様も護衛として同行し移動した。宮殿での騒動は、自分が寝ている間に片付いているそうだけど、まだ油断できる状況ではないそうだ。


 礼拝堂の最深部に現れ、自分に撃退されたモルデフォードの消息が、依然として確認できていないらしい。幼児院の教師寮にある、専用の工房から忽然と姿を消したそうだ。犯人が捕まっていないのは、不安材料として申し分ない……今、この瞬間に襲撃されてもおかしくない。


 まぁ、今日はお父様も叔父様も、お母様だっているから、どっからでも掛かってこい! って、感じですけどね!


 自分は……先日の事があったので、武装に関する装備は一切持たされていないですが……。あっ、物理と魔法反射のネックレスだけお母様に付けていただいてますね。


 はは、しょうがない……また死にそうになりたくないし……。


 そんな自分の思いを他所に、馬車は何事もなく無事に宮殿に到着。お父様達がいたお陰で、宮殿の門は顔パスでノンストップで通過できたのだ。


 二人とも騎士団では上位的な存在らしいから、知らない騎士はいないって事だね。


「ユステア! そのまま馬車の中にいろ! 中の様子を見てくる!」


 宮殿の玄関に到着したのに誰も迎えに来ていない……お父様と叔父様は異変を察知したのか、エルグレスお兄様を残し、扉をこじ開けて入って行った。


「ロアーナ、バハムート様に至急伝令を! 騎士団を宮殿に向かわせるのだ! 急げ!」


 エルグレスお兄様の声から焦りを感じる……その声を聞いて、何だか胸の辺りがザワッとして、気分が悪くなった。


 そうだ、シャーリー! シャーリーが中にいる! 大丈夫なのか? 堪らず顔を見上げて、お母様に視線を向ける。お母様は、お父様が入って行った扉を凝視し、静かに様子を伺っていた。


 自分の視線に気づいたお母様は、そのまま身体を抱きしめ小さな声で囁く。


「大丈夫ですよ、アリシアちゃん。お友達は、きっとお父様がここに連れて来てくださいますわ」


 王様のいる宮殿なのに、こんな物騒な事が立て続けに起こるって……うちの家の方がよっぽど頑丈なんではないだろうか……。魔王様でもボコボコにしちゃうゴーレムがたくさん置いてあって、戦闘にも参加するメリリアやリリアもいる。何だかんだと、トゥレーゼ家はすごいのだよ、ははは。


 不安な気持ちを隠すように、違う事を考えて見たけど、シャーリーの安否が確認出来ず、胸が締め付けられて苦しい。お父様、無事にシャーリーを見つけて保護してください……お願いします。


 自分はお母様の膝の上で手を組み、瞳を閉じてただただ祈り続けた。


 ――お父様達が宮殿に入ってからしばらく。


 ロアーナが、バハムートさんを先頭に大勢の騎士団を連れて現れる。バハムートさんは到着するや、馬車の外からお母様に向かって、この場から離れないように告げると、宮殿の中に入っていった。


 外には、エルグレスお兄様とランドグリスお兄様が待機している。以前に祈念式で護衛をしてくれた騎士達の顔も見えた。


 ジロジロ見てはいけないと言われていたけど、ちょっとだけ……知っている顔だけ確認して、再びお母様の胸に顔を埋めジッとする。


「どけどけ! 王妃様と王女様が通られる! 道を開けろ!」


 叔父様の大きな声が外まで響き渡る。王女様! シャーリーは無事保護されたの! 胸に埋めていた顔を上げ、期待の目で馬車から外を眺め見る。


 大きな体の男性が扉から、ドレスを着た女性と女の子を抱えて出てきた。


「シャーリー!」


 あの女の子は間違いなくシャーリーだ! くるくるした巻き髪が男の肩から揺れているのが見え、自分はシャーリーと確信する。


 居ても立っても居られない自分は、馬車の扉の前に駆け寄り、外に出ようとしたが、メリリアがサッと手を伸ばして阻んできた。


「おかあさま! シャーリーがいました! はやくむかえにいかないと!」


 焦る自分は、悲鳴にも似た声を上げお母様に視線を向ける。


「アリシアちゃん、もうすぐこちらに運ばれますの。すぐに回復魔法を使いますから、お母さんの側にいらっしゃい」


 お母様は、逸る自分を見て両手を広げて見せる。扉とお母様を交互に見て、大人しくお母様の膝に飛び乗った。


「お利口さんですよ、アリシアちゃん。大丈夫、アリシアちゃんが作ったゴーレムが守ってくれているはずですもの。怪我はしていないと思いますわ」


 そう言えば、シャーリーにお母様が魔改造したゴーレム目覚まし時計を渡したよね。確か、すごい頑丈な障壁が出るんだっけ? その事を思い返して、自分は逸る気持ちが少しだけ落ち着いてきた。


 ちゃんと発動していたら、シャーリーも王妃様も無事なはず! 前向きな事を考えて、馬車の扉が開かれる瞬間を待った。


「ユステア、開けるぞ! 王妃様と王女様を中へ」

「メリリア、お願いします」


 お母様の指示でメリリアが扉を開けると、馬車の前には大きな身体をした……叔父様が立っていた。側には、アンヌ王妃様と、シャーリーが少し青い顔をして並んでいる。


「シャーリー! ぶじでしたのね!」


 少しやつれたような顔を見せているが、外傷もなく無事な姿を見せるシャーリーに、喜びの声を上げた。


 自分の声を聞いたシャーリーは、何故か目を丸くして見返してくる。


 えっ? なんで? そんな驚いたような顔に?


「アリシア、あなたどうしてここに? おからだは、もうだいじょうぶですの?」


 あー、そう言えば、自分の状況は誰も伝えていなかったんだっけ……驚くのも無理はないですね。


「ええ、このとおりです。シャーリーこそ、なにかたいへんなことに……」


 シャーリーに無事を伝え、逆に心配した事を伝えようとする。


 ドゥォォォォォンッ!


 言葉を遮るように、宮殿から耳を劈くような爆発音が響き渡った。


 お母様はすぐに王妃様とシャーリーを馬車に招き入れ、御者席にいるリンナに指示を出す。馬車は、二人を乗せるのを確認し、一気に加速し宮殿から離れようと駆け出した。


「懲りない人のようですのね。王妃様、王女様、お怪我はございませんでしたか?」

「ご心配おかけしましたわ、ユステア。いただいた御守りのおかげで、このとおり傷ひとつ追いませんでしたの。一度ならず二度までも、助けていただいて何と言って良いのやら。ありがとう存じます」


 王妃様は、お母様に少しだけ身を屈めてお礼を告げる。シャーリーも、それに続いて自分達にお礼の態度を示した。


「アリシア、あなたのおくりもののおかげでした。とつぜん、ヘンリックからくろいきりがでて、わたくしにおそってきたの。でも、ゴーレムが壁をつくってまもってくれました」


 シャーリーは少し興奮した面持ちで、ゴーレムの活躍を説明してくれる。


 そっかー、お姉様と造った目覚まし時計が活躍したかー。本当に、大事なところで役に立ってよかったよ。


 さっきまで感じた不安は、シャーリーの満面の笑みでかき消え、無事な姿の彼女の言葉に黙って耳を傾けた。


「アンヌ王妃様、王は、ディオスと共に?」

「ええ、黒い靄との戦闘に参加しております。彼が駆けつけて来なければ、王の命も危ういところでした。近衛兵は、黒い靄に襲われて壊滅したと聞いてますの」

「元凶の物がまだ……全て排除しきれなかったのですね……アンヌ王妃様、ドネビア王妃様とシューレ王妃様はご無事ですの?」

「お二方とも、例の香の毒素を抜くため治療院で静養中ですので、こちらにはおられませんの。この様な事に巻き込まれず幸いでした」


 お母様は、王妃様に宮殿にいた人達の安否を確認し始める。近衛兵って王様の側近だよね、それが壊滅って……自分が撃退出来たのは、運が良かったとしか思えなくなってきた。


 お父様は無事何だろうか……祈念式の時みたいに大怪我をしてしまったら……。不安な気持ちがどんどん心に積み重なってくる。


「おかあさま、おとうさまをたすけないと……このままだとたいへんなことに……」


 胸を押さえて、お母様に願いを告げる自分。


 そんな自分をお母様は、優しく抱き寄せる。


「アリシアちゃん、お父様を甘く見てはいけませんよ。ふふふ」


 ハッと顔を上げお母様を仰ぎ見る。


 余裕のある表情で自分を見つめお母様。


 そのまま視線を合わせ、クスッと笑って優しく微笑んだ。

一難去ってまた一難。

少しお父様を舐めてたアリシアちゃん?

この後……どうなるの?


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