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032:シャルロット王女の異変

 暗い顔のシャーリーを連れ、馬車で見かけた庭にある噴水へ移動する。


 当然ながら、歩いて辿り着ける距離ではないので、リンナに抱かれての移動だ。シャーリーも、宮殿のメイドに抱えてもらっているので、恥ずべき事ではない。二人とも幼いので、しょうがないのです。


 実際に王様の宮殿の庭を歩くと、馬車では見えなかった物が目につく。遠くにガラスで囲われた温室や、高い生垣のある場所があり、全部回ってみたいと興味を掻き立てられた。


 自分は、シャーリーに何気なく語りかけ、説明をお願いしてみる。


「あちらのおにわは、おじいさまがつくらせましたの。はるになると、わたくしのだいすきなブランレッサが、さきますのよ。」


 彼女の気分が、部屋の中にいる時より回復し始めたようで、笑顔を見せて饒舌に語ってくれる。お姉様も自分も、彼女の話に相槌を打って話を聞いていると、どんどんご機嫌になり聞いた以上の話をするようになった。


「このちょうこくは、わるいひとをみつけると、うごいてたいじしてくれるの。めずらしいでしょう?」


 うん、家にたくさんありますとは言わず、ここは彼女のご機嫌を取る事を優先し、口を噤む。


「シャルロット王女様のお庭には、貴重な物がございますのね。私、関心いたしましたわ」


 お姉様も、シャーリーの様子を察して気分を高めるように接している。何も打ち合わせもせずに、空気を読むお姉様。さすがとしか言いようがないです。


 噴水に到着した時には、シャーリーの機嫌はすっかり良くなり、今日一番の笑顔を自分達に見せてくれた。本当に、いきなり気分が落ちてしまって心配したけど、こうして普通に話せるようになって安心しましたよ。

 

 シャーリーは、噴水に到着すると付いてきたメイドに何か指示を出している。


「エルステアさま、アリシア、こちらをみていてくださいな」


 パッと手をシャーリーが上げると、さっきまでポコポコと湧き出るだけだった噴水の水がピタリと止まった。次の瞬間、噴水の中央に立っている柱から長い水柱が天に向かって延び、続けて水面からも水柱が次々と立ち始める。


 おぉ、遊園地にありそうな噴水の演出みたいじゃないですか。それよりも規模が大きいかも?


 お姉様と自分が驚きを見せている間も、噴水から水柱は何度も打ち上げられ、空に登りきったところで霧のように雲散した。次第に水飛沫は、霧の塊を作り噴水を覆っていく。


「ふふ、ここからですの」


 噴水を取り囲んだ霧目掛けて、一筋の光の線が外から当てられる。その光を辿ると、そこにはシャーリーのメイドが魔法を使っているように見えた。


 ボフッ!


 聞きなれない音が左耳から聞こえ、冷たい水飛沫が自分の顔に触れる。一瞬、メイドさんに目がいってしまい噴水から目を離してしまった自分は、慌てて視線を元に戻した。


 そこには、さっきまで目にしていた霧の塊は消え、虹が至る所に見え、徐々にお姉様と自分を囲んでいく。


 次第に、虹と霧は空気に混ざり合うようにスーッと消えていった。


 一瞬だけど、幻想的で美しい光景。既に見えなくなってしまったが、その光景が脳裏に焼き付いて、夢を見ているような錯覚を覚える。


「シャーリー、すごいです。とてもきれいでした!」

「ふふ、とうぜんですわ。ほかにも、ここにはステキなところがございますのよ」


 少し鼻を上げ、身体を反らして自慢気に語るシャーリー。


 その様子を見て、お姉様とクスッと笑い合った。うんうん、本当に元気なって良かったよ。


 噴水の綺麗な演出を見せてもらった後は、歩いてくる途中で気になった温室にシャーリーが案内してくれた。


 温室には、赤や黄色を中心とした花々が咲き誇っていて、椰子の木のような木の上で実をつけている樹木も植えられている。シャーリーが言うには、エルフの国よりさらに南の島にある木々をここに運んできたそうです。


 リンナが、お姉様と自分にこっそり耳打ちしてくれたのだが、その木々を運んだのはお父様だとか。旅の途中で、南の島で食べた果物が美味しかったので、王様にも食べて貰うために苗木を持ってきたらしい。この木は、家にもあったけど、冬が越せなくて枯れてしまって、エルフの国ではここにしかないのだとか。


「こちらで、よくみのったくだものを、ごちそういたしますわ」


 シャーリーが手招きする方には、白いお洒落なテーブルと椅子が用意されていた。側には三人のメイドがいて、一人は果物を切り分けている。


「お招きいただき、ありがとう存じます」


 お姉様が軽く会釈をして、メイドが案内する席に着く。自分も続いて席に着くと、シャーリーはニコニコと笑顔を向けてくれた。メイドさんがお皿に取り分けてくれた果物は、梨のような、噛み砕くと瑞々しさが口に広がる物から、バナナのようにモニュっとした口当たりだけ、甘さが広がる物まで、様々だった。


 テーブルの下で、お皿に置かれた果物をライネも無言で食べ散らかしている。声を掛けても、こちらを見るそぶりすら見せず、食べることに無我夢中のようです。いや、本当にこんな熟れた果物を出されたら、言葉を失うのもわかりますけど……ちょっと反応しようよ、ライネ。


 お姉様もシャーリーも、呆れる自分を見て微笑んでいた。


 ライネの事はそのまま好きにさせ、果物を口にしながら、シャーリーに温室にある花を紹介してもらい、聞き入った。この温室だけで、数百種類の花が植えられていて、希少な花もいくつかあるそうです。まぁ、王様のお城ですからね……当然といえば当然か。


「アリシアは、どのようなおべんきょうをされているのかしら?」


 唐突に、シャーリーが質問を投げかけてきて、果物が喉に詰まった。リンナが慌てて駆けつけ、背中を摩ってくれたお陰で、喉の支え直ぐに取れ、出された水を一気に飲み干し事なきを得た。


「わ、わたくしは、おさほうとことばのおけいこをしてます」

「あら? それだけですの? ちりやじかん……えーっと、さんじゅつと……、えーっと、いろいろべんきょうしないですか?」


 おほ、さすが王族の教育……地理に時間? 後、算数かな? 全く教えて貰ってませんね……そもそも字を書くまでに至っていないので。


「まだ、おしえてもらってません」

「そうなのですね。わたくしのともだちになられたのですから、べんきょうがふそくしているのは、きになりますわ」


 そうは言っても、勉強漬けになると遊べなくなるよ? この人生でも勉強ばかりで過ごすのは、ちょっと抵抗感がありますし……受験勉強のように、朝から晩まで机に向かうのはもう懲り懲りなのだ。


「シャルロット様、アリシアはゆっくりと着実に覚えていっておりますので、ご安心くださいな」


 お姉様が自分を気遣うように、シャーリーを宥めようとするが、彼女は手を顎に付け首を傾げるようにして考え事を始めた。


 うーん、幼児の浅知恵はちょっと怖いのですけど……。


「そうですわ、アリシア。あなた、ここでわたくしといっしょに、べんきょうをしなさい。ふふ、めいあんだとおもいませんこと?」


 はぁ? シャーリー? そんな事が簡単にできる訳がないじゃ無いですか。そもそも身分が違い過ぎるし、お母様やお姉様と離れるのはご免被ります。


「おかあさまとおねえさまと、はなれるのは……」


 そう言いかけると、お姉様が遮るように口を開いた。


「そのお話は、私共では判断出来ませんので、お父様とお母様に相談してもよろしいですか?」


 あぅ、お姉様……少し悲しくなり、お姉様を見つめる自分。


 お姉様は、自分の顔を見ると、笑顔を向けるのでは無く、眉を下げて首を横に降った。その表情には、どうにも出来ないといった悔しさが見受けられる。これ以上、この話でお姉様を困らせる訳にはいかないと思い、袖を掴んで黙って頷いた。


「ふふ、たのしみですわ。アリシアがいっしょでしたら、わたくしこわいものなんて……」


 シャーリーは、思わず口が滑ってしまったのか、途中で口に手を当てて喋るのを辞めてしまった。


 怖いもの? 何だろう、怖いものって?


「シャーリー、こわいの?」


 彼女が噤んだ言葉が気になり聞き返すと、また彼女の顔が青ざめていった。その様子は、ここにドネビア王妃様と会った時よりも青くなっていて、身体が震えているようにも見える。


「シャーリー、だいじょうぶ? ふるえてるよ?」


 お姉様と自分は心配になり、シャーリーの側に駆け寄った。自分達の咄嗟の動きに、シャーリーのメイド達も慌てて駆け寄り、彼女の背中を摩り始める。彼女の目は、既に焦点が合っておらず、歯をカチカチさせて震えていた。


「大丈夫よ、シャルロット王妃。私達が付いてますわ」


 あれだけ気丈に振る舞っていた彼女の突然の変化に、お姉様も自分も狼狽えてしまったが、震える手を取り何とか励まそうとした。


「アンヌ王妃様をここへ」


 一人のメイドが叫ぶと、別のメイドが駆け出し温室を出ていった。


 メイドが呼びに向かってから、直ぐに王妃様がシャーリーの下に現れ、彼女を抱きかかえる。


「もう大丈夫ですよ。貴女を苦しめる者はここにはおりませんの。よしよし」


 アンヌ王妃様は、シャーリーの背中を優しい手つきで摩りながら宥め続けた。お母様は、その様子を見てシャーリーの額に人差し指を付け何かを告げる。


 その瞬間、シャーリーの震えは止まり、瞼がスッと落ちて寝息を立て始めた。


「ユステア、ありがとう。このような事に巻き込んでしまって。貴女が居てくれて助かりました」

「アンヌ王妃、問題ございませんわ。それよりも、シャルロット王妃の様子が気になりますの。私で良ければ力になりますので、何なりとお申し付けくださいませ」


 お母様が王妃様から少し下がって、膝を曲げて傅いた。


「ここではお話は……少し場所を移させてくださいまし。ユステア、私では……」

「ご安心ください、王妃様。私やディオス、それにこの子達も付いておりますので、そのような顔をなさらないでくださいませ」


 王妃様は、お会いした時と全く違う、目が下を向き、自信の無い表情を見せている。


 そんな王妃様の顔を見られないように、彼女に近づき顔を袖で隠し、部屋へと案内してもらうようにお願いをした。自分達も、緊迫した雰囲気に釣られ顔が強張っている。


 王妃様とお母様の後ろに付いて、導かれるままに温室を後にした。

シャルロット王女は何を恐れているのか?

そして、アリシアちゃんお城デビュー?

王都編の中盤ですが、何やら慌しい予感です。


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