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029:お姉様の入学式

入学式本番です!

 部屋いっぱいに光が広がっていき、徐々に数十本の光の筋を作っていった。


 その光は徐々にステージを目指して集まっていく。


 天井で誰かが操作でもしているのかと仰ぎ見たが、光が眩しすぎて目視出来なかった。


 一瞬目が眩み、ステージから目を離し、瞼を擦る。


 お母様が心配してハンカチを貸してくれたので、目を覆ていると、突如、ステージのある方向から大きな音が聞こえてきた。


 ゴゴゴッ! ゴンッ! 


 最後に力強い音が聞こえると、今後は背中の方から歓声がドッと上がった。


 今度は後ろですか! 何事なの?


 目を拭っていたハンカチを降ろし、まず、ステージへ視線を向けた。


 あれ? ステージの後ろに壁があったような? 


 最初に目にしていた光景と変って、ステージの奥に壁が無くなっていたのだ。


 なるほど、何か分厚い壁が上か下に移動した音だったのかな?


 そんな事を推測していると、ステージの奥から五人ずつ子供が、姿勢をビシッと正してステージ上に現れる。女の子は皆んな、お姉様と同じ制服を纏っていて、男の子は、ジャケットにズボン、あとマントも羽織った装いだ。

 

 騎士団のように訓練されている訳ではないので、ちょっと動きにバラツキがあるけど、制服姿で揃うとそこそこ様になっている。


 後ろから聞こえる歓声は、これを目の当たりにしたからなんですね。


 という事は、あの中にお姉様がいるはずだけど……どこかな?


 目を細めて、ステージを眺める。


「アリシアちゃん、エルステアはあちらですよ」


 お母様の視線を追っていくと、なんと目の前から少し左の最前列にいらっしゃいましたよ。


 おぉ、なんてこった、ほぼ目の前ではないですか……自分の視野の狭さに驚きです!


 でも、まぁ、お姉様が見つかったので良しとしましょう。 それにしても、まさか、こんな近くでお姉様の入学式が見られるなんて、自分、かなり運が良いようですね!


 お姉様のいる場所を把握し気持ちに余裕ができたので、一緒に並んでいる人を勝手に比較し始める自分。こういう事って、あまり良くない事なんですけどね、どうしてもお姉様の事になると歯止めが利かないというか……。


 ちょっとだけ後ろめたい気持ちで、お姉さまの周囲を眺め見る……。


 ふふふふ、うむうむ、やはりお姉様の存在感は抜きん出てます! 


 可愛さは断トツですね!


 隣の女の子達には申し訳ないけど、お姉様のせいで霞んじゃってる気がします。


 まぁ、自分が並んでも霞むので……しょうがない話なんですよ。


「おかあさま、おねえさまはりっぱですね。わたくしほこりにおもいますの」

「今日は、アリシアちゃんも見ているから、お姉ちゃんは張り切ってますわね。しっかり様子を見てあげるのですよ」


 お母様の言葉を耳にしながら、背筋をピンッと伸ばし真剣な表情で立つお姉様の姿を目で追った。お姉様の胸に金と青の勲章。そして、お揃いのユグドゥラシルを象った銀の紋章が見える。


 その輝きに気付いた自分は、咄嗟に胸についた紋章を握りしめ感触を確かめると、自然と嬉しい気持ちが湧き上がってくる。


 あちらに見える麗しい女の子は、自分のお姉様……。


 お姉様の顔を見つめれば、見つめるほど頬が熱を帯びていくのが分かる。


 あぁ、今日と言う日に感謝です。神様、ありがとうございます!


 両手を組んで、しばしお姉様を仰ぎ見ていた。


「あちらにいるのが……」

「ええ、あの子ですわ」


 生徒のほとんどがステージに並び終わったようで、自分と同じように、父兄の人達が他の子供に目を向け始めているようです。自分の背中の方から、ひそひそと話す声が幾つも聞こえてきます。


「あれが、祈念式にいた全ての者を癒した、噂の聖女なのか?」

「そうですわ、私も助けられましたもの」

「まぁ、あんな小さな子が……」


 あーそうか、ここにいる父兄の中にも、祈念式に同行していた人がいても不思議ではない。


 でも、聖女って誰の事を言っているのだろう。自分の事を知っている人は、ここでは限られているはずだし……。王様にだって教えていないのだ。横目でひそひそ話す人を見て、指でさし示す方向を追っていった。


 つつつ……っと追った先にいる子供……うんうん、予想はしてましたけど、お姉様のようですね。


 なるほど! 確かにあの日に必死に回復魔法を使っていたのは、お母様とお姉様だけでした。


 お母様は途中でお父様の方へ向かったから、残されたのお姉様とリリアが奮闘していたはず。ふむふむ、お姉様が聖女と言われるのも納得です!


 ひとりで納得して頷いていると、シャーリーが何かぼそぼそと王様と話をしている声が聞こえる。


「おうとうさま、あのかたがせいじょですの? わたくし、あのかたとおはなししてみたいです、だめですか?」


 ひぁー、シャーリーのおねだりがめっちゃ可愛い! そんなおねだりしなくても、家に来ることがあれば、何時でもお話できますよ! と、教えてあげたい気持ちがふつふつと沸いてくる。


 さっきまで、しっかり躾の行き届いた王女様と思っていたけど、存外、可愛い事を仰りますね。ますます、シャーリーに対する自分の好感度が上がっていきます!


「ディオス、可能であるか?」


 王様が、お父様にぼそぼそっと相談を持ちかける。


「うむー。王女を外に出すのは危険ですな。学院の無い日にそちらへ伺いましょう。日取りは、執事達で調整させましょう」

「あぁ、すまんな。よろしく頼む」


 お父様と王様のやり取りを、隣で聞いていたシャーリーは声を押し殺して喜んでます。


 希望が叶いそうで良かったですね、シャーリー。


 ふふふ、こちらにも何やら面白い話が転がってきましたよ。王様の所へ、お姉様を連れて行かれますか? でしたら、自分も是非とも同行を!


「おかあさま、わたくしも……」


 そう言葉を出そうとすると、お母様は口に人差し指を付けて、喋ってはいけない合図を見せる。


 聞き耳を立てたのが良くなかったのかな……それとも、ここで話す事ではないから黙っていろって事なのかな? いずれにせよ、言葉で表してはいけない空気を感じたので、そのまま口を噤んだ。


 お母様は、自分が黙る様子を見て、そっと頭を撫でてくれる。


「大丈夫ですよ、アリシアちゃん。貴女の希望は叶いますから」


 その言葉を聞いて、パッと目の前が明るくなり、すかさずお母様に視線を向ける。「お母様、ありがとう!」と、言葉には出さず笑顔を送ると、お母様は、ぽんぽんと優しく手を頭に置いて、髪を梳くように撫で続けくれた。


 そのまま、自分は幸せな気分を噛みしめながら、お姉様に視線を外さず入学式の進行を見続ける。


 学院長のお爺さんの話を聞いているうちに、眠気が襲ってきて歯を食いしばって耐えようとした。


 シャーリーは、自分より早く落ちかけていて、既に船を漕ぎ始めている。


 どこの世界も、校長の話は退屈で眠くなるんだね……これを堪えろと言うのは、幼児の身体では無理がありますよ。


 学院長の話が終わると、周りも気が抜けたのか会話を始め、部屋の中がざわつく。


 シャーリーは既に夢の世界に入りかけていたので、王様がメイドを呼んで運ばれていった。自分は、辛うじて耐えきったが、寝落ちするのは時間の問題。


「アリシアちゃん、無理はしなくて良いのですよ。こちらにいらっしゃい」


 お母様は腕を広げて、受け入れの姿勢を見せてくれたので、のそのそと膝の上に移動した。


 あー、この温かさとこの匂い……そして、お母様の心臓の音。


 抱かれて数分後には、意識が飛び夢の世界へ誘われていった。


 お姉様の入学式を最後まで見ていたかった……不甲斐ない妹で申し訳ないです……。


 ――意識を閉じて再び目覚めると、見た事の無い天井が目に入る。


 頬にむにっと柔らかい感触。鼻で呼吸をすると、お母様から香る甘い匂いが感じられる。視線を天井から甘い匂いのする方へ移すと、お母様の微笑んだ顔が見えた。


 お母様が側にいる事が確認できたので、ここがどこだろうが気にする必要はない。


 と思ったけど、人前だとお乳貰えないよな……胸を弄る前に確認する事にした。


 天井は、黒い木が格子状になって埋まっていて、照明器具が付いている。家にあるような、シャンデリアは無く、質素な感じがした。


 入学式はもう終わっているのか……でも家ではないから、学院の空いている教室かな?お母様に揺り籠のように抱かれていて周りが見渡せないので、少し姿勢を変えようと、ごそごそと動き始める。


「ふふ、アリシアちゃんは何を探しているのかなー? お姉ちゃんかなー? お姉ちゃんでしたら、もう直ぐ教室から出てきますわ。一緒に待っていましょうねー」


 探し物は特にないのだけど、ここでお乳をいただけるのか確認を……と口を開こうとしたら、空いた口にお母様のお乳がハマった。


 あっ、ありがとうございます、お母様。


 そのまま、鼻で息を吸ってからお乳にありついた。少し空腹を感じていたので、黙々とお乳を飲み続け、お腹が満たされていく。うーん、何時でもこのお乳が飲めるって素晴らしいですね。しばし、周りの事を気にせず至福の時を過ごした。


 空腹感が無くなり、お乳から離れようとしたところで、お姉様がリリアとライネを伴い部屋に入ってきた。ライネも一緒に行っていたのは驚きだ。この子、ちゃんとお行儀良く出来たのだろうか?


 そんな疑問を持ちながら、ライネを見ると、今日は家にいる時と比べ物にならないくらい大人しい。


 何か変な物でも食べちゃたかな? と、じろじろ見ていると、ライネが気が付きこちらにペタペタと歩み寄ってきた。


「ピイッ! ピピピッ!」


 えっ、何? 拾い食いはしてない? 


「ピィッ! ピッピッ!」


 ふむ、今日はお姉様の言う事を聞いて、大人しくしてた?

 

「ピッ!」


 まん丸の胴体から首を少し逸らせて、ライネは自信満々の態度を見せた。


「アリシアちゃん、お待たせしましたわ。ふふ、ライネはね、教室でとてもお利巧でしたのよ。側から離れずに騒ぎ出す事もありませんでしたし、他の獣に威嚇されても相手にしませんでしたの」


 ほぇー、ライネ凄いじゃん! お姉様の言う事を理解して行動できるんだ。いつの間にそんな成長しちゃったの……まだ踏ん反り返っているライネを見て、感心してしまった。


「ライネ、おりこう! えらい!」


 お姉様に恥をかかせずに、同行できた事は誉めて上げないとね! で、何でライネは付いていったんだ? 他の獣がいたって事は、学院では同行が必須なのかな?

 

 せっかくのお姉様の入学式で寝てしまったせいで、分からない事がいくつか浮かんできた。


 ちゃんと起きていたら、自分も付いて行けたかもしれないのに……惜しい事を……。少し、ライネに嫉妬してしまい、ジトッと見つめる。


 自分の視線を受けたライネは、こちらをチラッと見て視線を外し、鼻で笑うように息を吐いた。


 うわっ、なんかガイアにそっくりになってきてる! そこは真似して欲しくないよ、ライネ……。


 ライネに追い打ちをかけられて、ちょっとへこまされた気分です。


 お母様に抱き着いて、しばし黙って心を慰める事に徹した。


 耳だけは傾け、お姉様が教室での話をお母様やママ母様に報告しているのを聞く。


 祈念式で顔を合わた何人かの子供と一緒の教室だったとか、王族の姪であるマルグリッド様が隣の席で、挨拶を交わしたとか……受け持ちの担当の教師が厳しそうな方であると……。


 沢山の情報がお姉様から次々と出てきて、傷心気分がいつの間にか消えていた。


 それよりも、お姉様の話を聞き洩らしたくない思いが勝り、気が付くとお母様の膝の上ではなく、お姉様の隣に移動しているほど興味深かった。


 これからほぼ毎日、お姉様はここに通って、新しい話を持って帰って来てくれる。


 まだ通えないもどかしさはあるけど、待つ楽しみが出来るだけでも有難く思う事にした。

 

 シャーリーとも友達になる約束を交わしたし、王都での生活が思った以上に楽しくなりそうです!

お姉様の学院生活、そして王女様との出会い。

王都生活が今までと少し違ってきました。


夏の間、アリシアちゃんはどれだけ成長するのか

ご期待ください。


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