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027:お姉様の入学式当日

「エルステア、支度はもう済みましたか?」


 幼児院の制服に身を包んだお姉様が、隣の部屋からやってくる。


 ポンと膨らんだ膝丈のスカートを少し摘んで、お姉様が軽く会釈をする姿がとても可愛らしく映り、思わず見入ってしまいます。


「はい、お母様。この通りですわ」


 にっこりとお母様に微笑むお姉様に、言葉が上手く出てきません!


 あぁ……なんて愛らしく素敵なお姉様でしょう……自分は堪らず両手を組んで、悲鳴に近い歓声をあげてしまいました。高まる興奮を両手を胸に押し当てて、お姉様に声を掛けました。


「おねえさま、きょうもいちだんとすてきですわ!」


 今すぐ飛びつきたい思いを抑えて賛辞を送ると、お姉様から自分を抱き締めてくれました。


「ありがとう、アリシアちゃん。そう言ってくれてお姉ちゃん嬉しいですわ」


 お姉様は抱き締めた腕に力を入れ、自分を少し持ち上げてその場でくるくると回り始め、フワッフワッと自分のスカートが靡いていくのを感じます。今日もお姉様はご機嫌ですね! お姉様に抱き抱えられて顔がすごく近くて、自分は本当に幸せものですよ。


 この至福の時をもっと満喫したい!


 そんな思いに駆られた自分は、するりとお姉様の首に手を掛け、優雅でゆったりと回る動きに身を任せました。


 ほんの数秒のお姉様との触れ合い。


 けれど、その時間は、自分には永遠に続いていくような錯覚を覚えるほど、幸福感を与えてくれたのです。


「本当に貴方達は、いつも仲がよろしいこと。お母さん、とても嬉しいですわ。そうそう、エルステア、今日はこちらも身につけてくださいまし」


 お母様の言葉と共に、メリリアが小さな箱を二つ持ってきて、一つ目の箱をお姉様の前で開けて見せる。


「まぁ、これは我が家の家紋ですのね。これは何に使うのですか?」


 お姉様の隣で箱を覗き見ると、金色に輝く金属製の紋章と、青色の魔石が埋め込まれた紋章が入っていた。金の紋章にはライオンのようなデザインが描かれていて、ちょっとカッコいいですね。


 良いなぁ、お姉様。自分もこういうの欲しいです!


「入学式に、こちらを胸に付けて行くのですよ。どこの領地で何者かを判別するのに必要ですの。エルステアは、お父様が考案したこのトゥレーゼ領出身を表すリューケンの金紋章と、領主一族を表す青紋章を付けてくださいまし」


 ふむふむ、金色の紋章に描かれているのは、ライオンじゃなくてリューケンって言うのね、覚えました!お父様がデザインしたっていうのも驚きですけど、物凄く心を擽ってくる素敵な紋章だと思います。


 メリリアに付けてもらった、金と青の紋章が光を受けて、お姉様の胸でキラリと輝く。


 制服に付けると、さらにカッコ良さが増した気がします。今日のお姉様は、カッコ良さと可愛さを兼ね揃えてとてもお洒落な感じがします!


 皆んなに見つめられて、お姉様は少し頬を紅く染めているのですが、その姿がまた可愛らしいのだ。


 んー! 堪りませんよ! お姉様、最高です!


 お姉様を眺め見て、ちょっと浮かれる自分。良いのです、こんな可愛いお姉様を目の当たりにして、浮かれない方がおかしいのですから! なんだか、ちょっとナーグローア様の気持ちが……少し分かった気がします……。


「アリシアちゃん、貴女はこちらを付けてくださいね」


 なんと! 自分にも何かくれるのですか!


 期待の眼差しで、メリリアが差し出す箱の中を覗き込む。お姉様も自分の顔に寄せて中を伺っている。


「まぁ、こちらも素敵ですのね。アリシアちゃんにとっても似合うと思いますわ」


 箱の中には、大きな樹が描かれた銀の紋章が二つ入っている。一つはお姉様の分になるのかな?


「これは、エルフ族を象徴するユグドゥラシルを模った紋章ですのよ。一つはエルステア、もう一つはアリシアちゃんに差し上げますわ」


 ひゃほー! お姉様とお揃いの紋章です!


 すぐ横で顔を寄せ合うお姉様に視線を向けると、ニッコリ笑顔を見せてくれました。内心ホッとしながら、嬉しさで心が張り裂けそうです。


「おねえさま、おそろいですね!」


 そのまま、お姉様に抱きついて気持ちを伝えると、自分の身体に腕を回して抱きしめ返してくれました。


「ええ、お揃いですわ、アリシアちゃん。私もとても嬉しいですわ」


 メリリアに紋章を胸に付けてもらい、お姉様の胸に輝く同じ紋章を見て、顔がどんどん緩んでいきます。こんなサプライズがあるなんて、今日はとても良い日になりそうです!


「ウギャッ!」


 浮かれた気持ちのまま、ライネを追いかけるように走り回っていたら、突然、床が目の前に……。


「アリシアちゃん!」

「アリシア様!」

「ピィッ!」


 お母様達の叫び声が、耳に響いてくる。


 床がゆっくりと、スローモーションで近付いて……自分は咄嗟に身体をクネらせ側面から倒れこんだ。


 危うく顔面を強打して、ドレスを血で染めるところでした。


「アリシアちゃん、怪我はないですか? 痛いところがあったら言ってくださいまし」


 お母様がすぐさま駆けつけて、治癒の魔法をかけ始める。


 スカートに足が絡まってズッコケたのか……身体のあちこちを触って怪我はしていないか確認。


「おかあさま、ごめんなさい。けがはしてないみたいです」


 自分の言葉を聞いて、お母様は安心したのか胸を撫で下ろし、心配そうな顔から笑顔に変わりました。


「アリシアちゃんは、普段はしっかり者さんですけど、エルステアの事になるとはしゃいじゃいますのね。可愛いこと、うふふふ」


 何ともない自分を見て、お母様が笑うと、お姉様もこちらに慌てて来られて様子を伺ってきました。


「もう、心配しちゃいましたわ。本当に怪我はございませんの?」

「ごめんなさい、おねえさま……」


 お姉様の問いかけに、頷いて返事を返すと安心したようで、さっきまで見せていた笑顔に戻られました。


 浮かれすぎて、皆んなを心配させてしまったようで……反省しないといけませんね。 


 あまり浮かれ過ぎないように、少し冷静な気持ちを取り戻そうと深呼吸。


 ハーッと吐く様子を見て、お母様とお姉様、メリリアがクスッと笑っています。


「アリシアちゃんは、本当に可愛過ぎますわね」


 お母様がそう言うと、お姉様もメリリアも賛同するように頷きました。狙ったつもりではないけど、何だか好評だったようで、皆んなの視線に恥ずかしく思いむず痒いです。


「さぁ、叔母様をお迎えに行きましょうね。アリシアちゃん」


 恥ずかしさから、ちょっと下を向きながらお姉様に手を引かれ、部屋を後にした。


 ーー玄関ホールで待ち受けていたお父様から、感嘆の声と賛辞を受けた後、ママ母様が待つ隣の屋敷へ移動するため馬車に乗り込んだ。


 歩いて行ける距離と簡単に考えていたのだけど、屋敷から屋敷への移動は思ったより遠かった。


 直通の通路が無いと、気軽に行ける距離では無いですね。屋敷から敷地の門までの往復は、自分の足で歩き切るのは無理っぽいです。お父様と叔父様に頼んで、作って貰えたり出来ないかなとしばし妄想に耽っていると、あっという間に叔父様の屋敷に到着しました。


 馬車だと早いですね、馬車だと……。


 叔父様の家の前には、既に馬車が横付けされており、外で叔父様の執事のウェインが待っていました。


「トゥレーゼ御一行、お成り!」


 ウェインが声を上げると、屋敷の扉が開きママ母様とランドグリスお兄様、グレイお兄様が姿を見せた。


「お待たせしましたわ、フレイ。今日はよろしくお願いしますわね」

「ふふ、楽しみにしてましたのよ。まぁ、エルステアもアリシアも、今日は一段と可愛らしいですわ」


 ママ母様は、お姉様と自分の姿を見て、感極まったのかハンカチで目元を拭う。


 そこまで喜んでくれるとは思っていなかったので、自分も胸を打たれてしまい涙ぐんでしまった。


「叔母様、ありがとう存じます。私の入学式に参列いただき嬉しく思いますわ」

「エルステアは、本当にしっかりしてきましたのね。貴女の成長を喜ばしく思いますの」


 ママ母様にしっかりとした御礼を述べるお姉様に、自分も感心し憧れの目で視線を送った。


 うーん、自分もお姉様みたいになるには、どのくらい時間がいるのだろう……もっと立ち振る舞いの勉強を頑張らないといけないですね。お姉様の凛々しい姿を見て、自分、ちょっとやる気出ちゃいました!


 ママ母様の後ろに控えていたランドグリスお兄様と、グレイお兄様からも祝辞をいただき、幼児院へ向けて馬車が走らせます。


 貴族の屋敷をいくつも過ぎていき、雑木林が並ぶ道へ差し掛かりました。


 幼児院へ繋がる道には、同じ目的と思われる馬車が何台も連なっています。徐々に馬車の速度も落ちていき、ちょっとずつ前に進んで行きました。


 途中で、おむつを交換してもらい、馬車の心地良い揺れとお母様の温かい胸に顔を埋め、しばし仮眠です。


 すでに朝から体力を消耗しているので、今のうちに回復しておくのだ。


 お母様に起こしてもらった時には、馬車は正門を越えて、幼児院の中に入っていました。


 慌てて、涎が垂れていないか心配になって、お母様の胸元に視線を向けて確認すると、どうやら垂らしていないようです。お母様のドレスを汚さなくて、安心しましたよ。そう思いながら、自分の口元と胸元も確認して、汚れていない事が分かり安堵した。


 せっかくのお姉様の入学式ですからね、汚い服で妹が参加しているなんて言われたくないのですよ。


 身の回りの確認を終えて、お母様に抱かれた状態で辺りを見回す。


 ちょっと高い視点から眺め見ると、沢山のエルフの家族が集まっていた。どの家族も、お姉様やグレイお兄様くらいの大きさの子供を連れていて、思い思いに会話を楽しんでいるようです。


 中には、ちょっと緊張しちゃったのか、涙目な子がいたり、ソファでおむつを交換してもらっている子もいました。うーん? 五歳でおむつ履いてるのかな? 自分もおむつ履いているので、妙に仲間意識を感じてしまう。


 でも、幼児院でおむつだと交換はどうするのかな……素朴な疑問を感じたけど、きっと誰かお供でも連れていくんだろうと軽く流した。


「入院生の生徒は、こちらへ。父兄の方は、こちらの扉より中へお入りください!」


 片眼鏡をした若い男のエルフが、マイクのような道具を口に当てて声を出すと、集まった人達は一斉に動き始めた。眼鏡? この世界にも眼鏡があるんですね! ん? でも、身体強化したら視力も変えられるよね……あれ、意味あるのかな? またしても疑問が生まれたけど、聞きに行ける雰囲気でも無いので心に閉まっておく。


 うーん、幼児院って何かすごく面白い物がいっぱいありそうですね……ここで探検したら楽しそうです。


 集まる人に気を取られていたので、この幼児院に置かれている物に目がいってなかった。


 ぐるりと天井や壁を見ると、何に使うのか分からない道具が沢山置かれている事に気づく。あの天井からぶら下がっている箱は何ですか! カメラでも無いし、拡声器? 壁際には黒い板が埋め込まれているけど、黒板では無いよね……キョロキョロと辺りを見回して、今まで目にした事のない物をどんどん探し出していった。


 くー! ここは、なかなか興味をそそりますなぁ!


 お母様やメリリアにお願いして探検させてもらえないかな……そんな期待を胸に秘め、お母様と共に父兄用の入り口へ向かって行った。

幼児院にはアリシアちゃんを刺激する

面白そうな物がいっぱいあるようです。

そして、いよいよお姉様の入学式の

セレモニーが始まります!


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