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022:洒落にならない街シャルードゥア

ついに王都近郊へ!

「お嬢様方、出発のお時間でございます。あちらで奥様がお待ちです」

「ありがとう、リンナ。アリシアちゃん、行きましょう」


 お姉様が席を立ち、自分に手を差し出す。


 足元には、まだガイアの子供達がいるので、踏んでしまいそうで怖い……。


 そう思い戸惑っていると、ガイアのお嫁さんがムクリと起き上がり、足元で戯れていた子供の首を掴んでどかしてくれた。


「ありがとう、ガイアのおよめさん」


 笑顔でお礼を言うと、ガイアのお嫁さんはその場で、少し目を伏せる。


 ガイアと違って奥ゆかしい感じなんだよねぇ。


 そう言えば、ガイア達も夏の館に移動するのだろうか?


 もしそうであれば、ガイア一家が加わって楽しくなりそうです。


「メリリア、ガイアたちもいっしょにいくんですよね?」

「いいえ、アリシア様。ガイアとレーネ、その子供達はここに留まり番をされます」


 えー! ガイアも行けないのか……なんか残念ですよ。


 そして、ガイアのお嫁さんの名前はレーネなんですね、しっかり覚えました。


「ガイアたちいけないのです?」


 もう一度、メリリアに問いかけるが、申し訳なさそうに首を振るだけだった。


 むー、向こうで遊ぶ仲間が減ってしまいましたよ。


 寂しい気持ちで、気分が暗くなる。


「ガゥッ!」


 ガイアとレーネが、子供を咥え自分の側に寄ってきて身体を寄せた。


 寂しくなんか、寂しくなんか……二匹の首に触れ、無意識に湧き出る感情を抑えようと踏ん張る。


「ガイア、レーネ。つぎにあったらあそんでくださいね」


 二匹に抱きついて、声を絞りってお願いすると、子供達をその場に降ろして「ウォッン!」と鳴いて返事をしてくれた。


 次に、叔父様のお家に行ける日に期待して、ガイア一家に手を振り馬車へ向かって歩く。


 メリリアに手を繋いでもらい、先を行くお姉様とリンナの背を追った。


 またね、ガイアとレーネ。


 ーー王都へ向かう馬車に同行するのは、叔父様ではなくグレイアスお兄様とママ母様だけでした。


 叔父様とランドグリスお兄様は領地内のお仕事があるそうで、二日後に出発です。


 グレイお兄様は、先日の魔力枯渇の影響が完全ではないため、叔父様達と移動を共にする事になった。


 叔父様の家から王都までは、およそ二泊三日かかるそうだ。


 境界門を抜けた街までは、およそ半日で到着でき、そこでまず一泊。


 翌日には、お母様が立ち寄ると言っていた場所に向かい、そこでも一泊。


 三日目の夜に、王都に到着し、そこから数時間後に夏の屋敷に着く。


 今回は、何事も起こらずに辿り着ける事を願うばかりです……もう既にグレイお兄様の事で少し神経使ってしまいましたし!


 そんな事を思っていると、馬車がゆっくりと動き始めました。


 旅の第一関門、王都境界門へ出発です。


 夏の館が、自分を待っている!


 王都への期待を寄せて、お母様のお乳を吸いながら、お昼寝に突入した。


 ガクンッ! と、馬車が一瞬宙に浮き、ドスンッ! と落ちる。


 浮遊感と大きな音で、目が覚めた。


「おはよう、アリシアちゃん。大きな音がしてびっくりしたでしょう。ここは王都の境界門ですの」


 いきなり起きてしまったせいもあり、少し頭がぼんやりしている。


 お母様の言葉は理解できているが、返事が直ぐに返せなかった。


「ふふ、眠たそうですのね。まだ眠っていても良いのよ、アリシアちゃん」


 お母様が自分の頭を胸に寄せてくれると、いつもの甘い匂いが強くなる。


 そのまま蕩けるように、身体を寄せて再度眠りについた。


 どうやら、王都までは何事も無く移動出来ているようです……。

 

 ーー目を覚ました時には、案の定、馬車の中はオレンジ色に灯されている。


 視線を上げると、お母様も眠っているようで、スースーっと寝息を立てていた。


 お母様は、寝顔も美しいのですよねー。こんなに間近で見られるのは、幸せ以外の何物でも無いです!


 そう思いながら、お母様が寝ている事に背筋がヒヤリとした。


 まさか! また、大精霊のせいで眠らされているのでは!


 バッと視線を見回し、隣に座っているママ母様、背中で座っているはずのお姉様とメリリアを確認した。


「アリシアちゃん、大丈夫ですよ。お母様は少しお疲れのようで、少し眠られてるだけですの。ねぇ、メリリア」

「はい、エルステア様」

「あら、ユステアが眠っていると心配ですの、アリシア?」


 お姉様が、自分の様子を察して声を掛けてくれたお陰で、一番心配していた事は解消され安堵した。


 メリリアも静かに返事をしてくれたので、問題が起きていない事を確証する。


「大丈夫よ、アリシア。ユステアは、明日が楽しみで、少しはしゃいで疲れてしまっただけですのよ、ふふふ」


 ママ母様が、意味深な笑いで自分を見つめる。


 いつもの優しい顔に、期待感が含まれている笑顔です。


「私も、明日が楽しみですのよー。ねぇ、エルステアもそうでしょう?」

「はい! フレイ叔母様! 私も初めて行くので、とても楽しみですわ」


 ママ母様とお姉様が、視線を合わせ微笑み合っている。


 お母様といい、ママ母様やお姉様も期待する、明日訪れる場所とは何なんだろう……。


「ママははさま……」


 ママ母様に、皆んなが楽しみにしている場所を聞こうとした矢先、お母様が自分をギュッと抱きしめた。


「アリシアちゃん、おはよう。少し眠ってしまいましたわ、寂しくありませんでしたか?」

「おはようございます、おかあさま。みんなおきてましたから、だいじょうぶでした」

「そう、それはよかったわ。お母さん、安心しました」


 馬車の移動は大人でも疲れると思いますし! それに、ずっと自分を抱えたままで座ってるので、姿勢が辛いと思うのですよ……本当にお母様には頭が上がりませんね。


「ユステア、もうすぐ王都三十三番街へ着きますわ」

「あら、思ったより早かったのですね」


 お母様とママ母様は、そのまま二人で会話を始めてしまい、明日行く場所を聞くタイミングを失ってしまった。


 馬車が止まった先にある、お洒落な宿に着くと、夕食と湯浴みをして直ぐにベッドに入る。


 布団に入ったら最後……お母様とママ母様のダブルおっぱいに包まれ意識が遠のいていく……。


 もう、明日になれば分かるし! 今日はお休み!


 聞くのは諦め! と、思い眠りに就いた。


 ーーお家となんら遜色のないふかふかベッドのお陰で、体調万全で起床!


 朝から、お母様達もご機嫌な様子で、自分もその雰囲気に飲まれ、嬉しく感じます!


「今日は、ここからシャルードゥアの街へ向かいますのよ、皆さん支度はよろしくて?」

「はい! お母様。いつでも出られますわ」


 お姉様のご機嫌も大変よろしいようで、朝食からニコニコ笑顔を自分に向けてくれます。


 不思議な事に、お父様とエルグレスお兄様は、嬉しそうな雰囲気ではないようですが……。


 女性陣と男性陣で、若干温度差を感じますね。どういう事でしょう。


 そんな事を気にしながら、朝食を手早く済ませて、シャルードゥアの街へ出発です。

 

「ユステア、我々は、道具屋で備品の補充を行なってくる。其方等は自由に時間を使って構わぬからな」

「お気遣いありがとう存じます、ディオス。少し長くなるかもしれませんが、よろしいのですか?」

「あぁ、問題ないぞ。其方が心待ちにしておる事を、我は邪魔したくないのでな」


 お父様は、頭をボリボリと掻き、お母様を見ている。


 ちょっと照れてますよね、お父様。大きくてゴツゴツした身体なのに、可愛く見えますよ。


「あらあら、仲のよろしい事。ディオスのためでもありますものね、ほほほほ」


 ママ母様が口に手を当てて、ニンマリとした笑顔をお父様に向ける。


「フレイ、そっそのような事をここで言うのではない」


 お父様は慌てた様子でママ母様に言葉を投げると、踵を返し馬車から離れた。


 ママ母様がにこやかにお父様を見送ると、お母様が「もう、フレイは意地悪しないでくださいまし」と、ちょっと顔を紅くしてママ母様を嗜める。


 お母様の表情もなんだか、すごい乙女な感じです。


 シャルードゥアの街……お母様達だけでなく、お父様達まで浮かれ気味。


 一体、何があるというのか。訳を知らない自分も、期待で胸が高鳴ってきました。


 馬車に乗り込んでから、昼前にはシャルードゥアの街の東門に到着。


 もっと時間がかかるものだと思っていたので、拍子抜けです。


 今日は、この街で一泊する予定ですけど、午後が丸っと時間が空いたのではないだろうか。


 馬車の窓から街並みを見ると、歩いている人達はほとんど女性ばかりです。


 男の人と言えば、沢山の荷物を持たされている執事や従者ばかり。


 今まで見てきた街の風景とは、ちょっと様子が違う気がしました。


「わぁ、お洒落なお店ばかりですのね、お母様」

「そうですわよー、エルステア。この街は、サントブリュッセルだけでなく、世界中の女性の憧れの街ですもの」


 なるほど! 道理で女性ばかりいる訳ですね!


 で、何で女性憧れの街なのですかね……。少し、嫌な予感が頭を過ぎります。


 そう思った時には馬車が止まり、お母様達が順に外で降りて行きました。


「ここからは、歩きになりますの。アリシアちゃん、どうぞいらっしゃい」


 お母様が手を広げて、馬車の中にいる自分を招いている。


 そのまま、飛び出すようにお母様に抱きつき、抱えてもらった。


「最初は、あちらのお店ですわね。フレイ、よろしくて?」

「ええ、シーモぺは私も気になってましたの。今日は、シャルリズにも寄りますの?」

「そちらも伺いたいですわ。エルステア、貴方もこの機会にちゃんと見識を深めるのですよ」

「はい! お母様」


 お母様達の会話に、全くついて行けず目を右往左往させてしまった。


 シーモぺ? シャルリズ? 何となくお店とかブランドの名前なのかな?


 この世界でも、女性はお洒落とか流行が好きなのかも。


 ぼんやり、皆んなの嬉々とした会話を黙って聞いていた。


「ユステア様、御一行お成り!」


 目的地と思わしき、シーモぺの前で立ち止まるお母様。


 西洋風の建物に、黒字で金の文字で書かれたお店……ガラス越しに見える売り物に……自分の目は点になった。


 このお店って……。


 道理で、お父様もエルグレスお兄様も付いてこない訳だ。


 このお店には男は入れないし、自分も入りたいと思った事もない。


「ふふふ、さぁ、皆さん入りますわよ、付いていらっしゃい。そうそう、エルステア、貴方もここで下着をいくつか試着して御覧なさい。リリア、貴方の分も私がお支払いしますわ。しっかり探しなさいね」


 試着? ちょっと、自分はこの中に入るには覚悟が……。


 ズラリと並ぶ下着に思わず、顔を手で覆い隠す。


 どっどうする、こんな場所だとは。


 お姉様達が試着をするらしいけど、この様子では自分も……ちらりと指の間から見る下着に胸がドキッとしてしまう。ここにある下着は、現世で目にしていた物と変わらないデザインだ。


 お母様やお姉様が纏っている下着と、明らかに作りが違う……。


「お母様、ありがとう存じます。リリア、良かったですわね。私と一緒に探しましょう、さぁさぁ、行きますわよ!」


 お姉様はリリアに満面の笑みを向けて、手を握りお店の奥へ進んで行こうとした。


 ただ、リリアはその場から動かず固まっている。


「奥様、私目にそのような……」

「リリア、お嬢様を一人で行かせるのですか? 奥様の好意を無駄にしてはいけませんよ」


 お母様の後ろにいたメリリアが一歩出て、リリアに優しく言葉を掛けた。


「お母様、私……」


 リリアの目に涙が溢れてくる。理由はちょっと分からないけど、何か葛藤しているように見えた。


 メリリアの事をお母様と呼ぶのは、初めて目にしたかもしれない。それぐらい彼女は動揺している。


「リリア、いつもエルステアの事を支えてくれてありがとう。貴方が居なければ、私の娘達の命は無かったかもしれませんでした。日頃の感謝の気持ちもありますの、快くまでお洒落を楽しんでくださいまし」


 お母様の言葉を聞いてメリリアが、リリアの肩をそっと押して、お姉様の側へ移動させる。


 リリアの耳元で、メリリアが何か囁くとコクリと頷き、お姉様の手を取った。


 お姉様とリリアは、笑顔を向け合いお店の奥へ入っていく。


 何とも微笑ましい光景に、心が温かくなった。


「フレイ、あの子達も探しに向かわれましたし、私達も始めましょう。よろしくて?」

「勿論ですわ。マチルダ、メルティ、貴方達も来ますわよ」


 お母様、ママ母様、メリリアにマチルダ、メルティが揃って、お店の人に案内され奥へ進んでいく。


 ちょ、待って! 自分は、お父様達と一緒で良いです!


 ここに居ては、精神が持ちません!


 部屋の奥へ入れば入るほど、手の隙間から見える下着に心拍数が上がる。


 動揺する心で、胸が熱くなり抵抗する言葉が出ない……。


 自分は、そのまま為す術もなく、ご機嫌なお母様に試着部屋へ連れて行かれた。

アリシアちゃん遂に?

お母様達と入る試着部屋で何が起こるのか!

現世風の下着にアリシアちゃんが着替えたら?


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いつもお読みいただきありがとうございます。

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