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016:徒然なる日常

すこし時が進みます……

 ナーグローア様が自分の学院を造る話がお父様の耳にも入り、その日の午後は大人達があーでもないこーでもないとこれからの学院方針の意見をぶつけ合ったようだ。


 話の内容が徐々に熱を帯びてきたところで、お母様に退室するように促された。


 夕食の時間も、学院創設の話が中心で、メリリアやアナトが度々資料を持ってきたりと、周りも忙しそうに動いている。


 なんだか、凄い大事になりましたねぇ……。


 学院創設って、建物や土地を用意したり、設立許可とか世間の周知、先生や生徒の募集なんかもやらないといけないよね?


 どのくらいの規模の学院を造ろうと考えているのか。


 寺子屋レベルの小さいものなら簡単そうだけど、ナーグローア様がそんな物を想定しているとは思えないし。お父様もお母様も、メイノワールやメリリア、アナトさんまで動いているから、学院都市とかそんなレベルだったりして。


 うーん、自分の常識では全く見当が付かないね。


 就寝前のお乳を飲みながら、自分もまだ見ぬ学院を妄想しながら眠り着いた。


 ――それから数十日、学院創立の話ですこし周囲が慌ただしいくらいで、お姉様と自分は至って変わらず平穏な日々です。


 ナーグローア様に事務用の部屋が用意されて、午前中と夕食後は閉じこもっていますけどね。


 その日以来、近くの村に駐留していたナーグローア様の軍隊から、騎士がナーグローア様の部屋でお仕事をしに訪れるようになりました。


 おまけに、今まで見た事のない出来事にも遭遇。


 事務室の扉に小さいポストみたいなのが置かれているのだけど、そこに羽の生えた筒が、家の上部から降り立ちポストに吸い込まれていくのです。


 気になって、中を覗きに行くと、メリリアから「そこには、他者が触れてはならない極秘文書が収めれております。覗いてはなりませんよ」と、嗜めらえれてしまい、中を確認させてもらえませんでした。


「はねがはえたつつがとんできたの。あのなかにいるとおもうのです」

「あれは、伝書筒という魔道具です、アリシア様。遠方との連絡手段として普及されております」


 なんと、通信手段も魔道具ですか……この世界凄いな!


 メリリアからもう少し詳しく話を聞かせてもらったけど、ここからユグドゥラシルまでがおよそ1時間、王都までならば2時間くらいだそうだ。グレイの家には10分程度で到着するらしい。


 でも、割と高価な物なので、国とか領主、市長や富豪の商人くらいしか常備していないそうで、一般の人々は入手することすら困難だそうです。


 くっ、こんな所にも格差があるのか……解せぬ。


 幸いな事に、自分の家にはお父様とお母様の分として、数百本は常備されている。


 お母様が主に生産されているので、自給自足が可能なんだと。


 ははは、チートお母様ですもの当たり前ですよね。


 心の中で乾いた笑いが思わず出てきますよ……。


「アリシア様、私達メイドとメイノワールもお造り出来ます」


 うっうん、たぶんそうだと思ってました。メリリア達もチートですものね、最早驚きませんよ、自分。


「アリシア様が、字のお勉強が始まりましたら、お手紙を書く機会もございましょう。その時には、私からひとつお贈りさせていただきます」


 おー! メリリアからプレゼント貰えちゃうの?


 それは、字の勉強頑張らないといけないね!


 で、それは何時から始まるんだい?


「通常では、生まれてから三年後。アリシア様ですと、二年後に字のお勉強を開始いたします」


 きっ気の長い話ですね、メリリア。二年後から開始する話をいまから覚えていられるのか、正直不安でしかないのですけど。


 でも、メリリアの事だし、自分が忘れていても覚えていてくれるよね。


 他力本願だけど、これからいろんな事を覚えていく身体では、すっぽ抜ける可能性は否定できないのだよ……すまぬ、メリリア。


 ちょうど、メリリアと話をしている最中に、ナーグローア様の騎士であり、自分の護衛も務めてくれていたリーシャが玄関から入って来た。


 手には、細長くて頑丈そうな鋼鉄で覆われた箱を持っている。


「メリリア、あれもまどうぐですか?」

「はい、アリシア様。あれは軍隊で使用する伝書魔道具でございますよ。良くお気づきになられましたね」


 なるほど、軍隊の物は少し形状が違うようです。


 堅そうだから、外敵に取られても開けられなさそうですね。


「あれは、敵に奪われた際に、受取人以外の認証無く中を開けると、爆発する仕掛けがございます。」


 ひぇ、さすが軍隊……徹底した仕様だ。


 さっきまで伝書魔道具に興味深々だったけど、迂闊に近づかなくてよかったかも。


 君子、危うきに近寄らずですよ……。


 その後も、メリリアを連れて家中の道具をいろいろ教えてもらう機会があって、この世界の不思議に触れていった。


 掃除機やルンバはないけど、全自動箒と塵取りだったり、草むしり専用ミニゴーレムやら魔力で動くものが家中に沢山あったのだ。


 意外と力仕事や労力がかかりそうな物が、魔力を使った道具で効率化されている気がした。


 洗濯機は、洗浄魔法があるのでそもそも必要ないが、乾かすのは太陽の光を浴びさせた方が良いらしい。主に肌触りと日の匂いが違うそうだ。


 メリリアの話を聞いているうちに、やっぱり自分も「魔法が使えるようになりたいなぁ」という思いが強くなっていく。あと、魔道具も作れるようになりたいね。もっと日常が便利になるような物を作ってあげたいなぁと……。


 そう言えば、グレイは既に剣とか魔法を勉強しているんだっけな。


 くそう……会った時に自慢気に語ってきそうで悔しいぞ……。


 ――ふつふつと沸く、魔法や魔道具への思いを抱きながら、さらに数十日。


 その日の午後はいつもと様子が違った。


 慣習のお昼寝が、ゴゴォンッ! ドゴゴゴゴッ! と強烈な音と地響きで、強制的に目が覚めてしまったのだ。


 思わず跳びあがって起きてしまい、辺りを見回すとリフィアが寄り添ってくれた。


 たぶん、お母様が傍にいないから、自分が不安に思うからだと思うけど、すぐさま布団から抱きかかえてあやしてくれるのだ。


 しばらく地響きが収まると、扉のある壁から緑色の透明な膜が現れ、スーッと自分とリフィアを通り抜けていった。


 何となく、その膜からナーグローア様の気配を感じたけど、たぶん気のせいかな?


 そんな事を思っていると、リフィアが咄嗟に自分を抱きかかえて蹲った。


 えっ、何事? リフィアがお腹壊して塞ぎこんじゃった?


 心配になってリフィアの顔を見るが、いつもと変らず真面目な顔だ。


 小さい手でリフィアの頬に触れると、微笑み返してくれる。


 特に、お腹が痛い訳ではないのようですね、良かったですよ。


 安堵した気持ちで、リフィアの様子を見ていると、突如、扉の向こうから


 ドゥゥ、ドゥゴゴ!


 と、轟音が響き、再び部屋が上下左右に大きく揺れ始めた。

 

 強制的に起こされた音よりもさらに大きい音と振動だ。


 振り落とされないように、リフィアの服を強く握り締め収まるのを待った。


「リ、リフィア……なにがおきているの?」

「この威力は私は存じ上げませんが、現在、奥様とナーグローア様、エルステア様が魔法練習中ですので、そのせいかと思われます」


 リフィアは戸惑う様子もなく、しっかりと質問に答えてくれる。


 ふむー、ただの魔法練習でこんな事になるのは、これまで経験した事ありませんけど……。


 いったい何の魔法を練習しているのだろう、気になるなぁ。


「リフィア、なにがおきたのか、しんぱいなのでみにいきたいです」


 自分の言葉に、リフィアは少し考え始める。

 

 再び、こちらに視線を合わせると、


「アリシア様、演習場への立ち入りは本日は許可されておりません。アリシア様のお気持ちをリンナにお伝えしますので、ここでしばらくお待ちくださいませ」


 リフィアがキリッとした表情に、我儘が許される気がしない……。


 確かに、魔法練習の見学ができたのは初期の頃だけで、それ以降は全く同行させてもらえていないのだ。どんな魔法をお姉様が覚えているのか、夕食の席での会話でしか知らない。


 実際に使ったのを目撃したのも、旅の時だけだし……。


 魔法の使役に関して、本当にガードが堅い。


 リフィアが立ち上がってベルを鳴らすと、すぐにリンナが部屋に入ってきたので、お母様達に伝言を託して大人しく待つ事にした。


 あれから、轟音や地響きはしないので魔法の練習は終わったのかもしれない。


 扉を凝視して、お母様達の戻りを今か今かと待つが、なかなか戻ってこないのだ。


「リフィア、おかあさまたち、おそいですね。なにかおきたのではないでしょうか」

「ご安心ください、アリシア様。不足の事態が起きていた場合は、真っ先にこちらに奥様は向かってこられますから。今回の件の事後処理に時間がかかっていると思われます」


 リフィアの言う通り、何か起きたらお母様はすっ飛んでくるはず。


 彼女も状況が把握しきれていないので、推測で話をしている。


 そんな中で、自分を安心させるために言葉を選んで答えてくれていた。


 その優しさに胸が熱くなり、フィリアの胸に顔を寄せる。


「アリシアちゃん、お待たせしましたわ。遅くなってごめんなさいね。突然で驚いたでしょう、お母さん達は無事ですわよー」


 しばらく待たされたけど、お母様の姿を見て不安も一気に消えていった。


 後ろから、ナーグローア様とお姉様、メリリアが続いて入ってくる。


 誰も怪我をしていないようで、安心を覚えてた。


「ごめんなさいね、アリシアちゃん。私が上手く制御できなかったせいで、大きな音がしたでしょう。誰も怪我をしなくて良かったですわ」


 自分の顔を見るお姉様が、申し訳なさそうに語り掛けてきた。


 そんな顔をしないでくださいな。逆に、お姉様が心配だったので……無事で良かったよ。


「エルステアの魔力が予想外に高すぎましたわね。アリシア、貴女の姉は素晴らしい才能を持っているのよ。誇りに思っていいですわ」


 お母様とお姉様の様子とは逆に、ナーグローア様は胸を張って堂々としていた。


 うん、流石ナーグローア様です! その自信満々の顔が見れて、かえって安心します!


「はい! ナーグローアさま。おねえさまはすごいのです!」


 ナーグローア様に返事をしながら、心配そうに見つめるお姉様に抱き着いた。


「ありがとう、アリシアちゃん。お姉ちゃん、そう言ってもらえて嬉しいですわ」


 抱きしめる自分を上から覆いかぶさる様に、お姉様も抱きしめてくれる。


 温かい感触に包まれていると、お母様も自分達を包むように抱きしめてくれた。


「ふふ、私の自慢の娘達。貴女達が仲良く思いやる姿は素敵ですわ。もっと近くで顔を見せてくださいまし」


 お母様は、お姉様と自分の間に顔を挟んで頬をくっつけてくる。


 三人で顔を合わせ、笑顔を交わすと心がどんどん温かくなった。


「あら、貴女達だけズルいですわ。私も混ぜてくださいまし!」


 ナーグローア様も、お母様と反対側に回り込んで身体を被せてくる。


 皆んなの顔が物凄く近いね。


 しばらくの間、そのまま顔を寄せ合い笑い合った。

皆んないろいろ忙しいようですね。

でも、アリシアちゃんの日常はまだまだ

発見がいっぱいみたいです!


次回は、いよいよ夏の館へ移動です!

どんな冒険が待っているのかな?

乞うご期待です!


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いつもお読みいただきありがとうございます。

表紙も無事できましたので、キャラ設定や

挿絵も作って行こうと思います!


読んで面白いと感じていただけましたら、

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いただけますとやる気が加速します!


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