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04:戻りかけた日常

家族+魔王の団欒が戻ってきました

 エルフ族、獣族、竜族、そしてナーグローア様との話し合い。


 お母様のおかげで、何とかボロを出さずに済んで安堵する。


 初めての王様達の話合いだったけど、一度面識がある人が多かった事もあり、ガチガチに緊張する事はなかったかな。この世界の王様は、物凄い威厳を感じるけど容姿が人ではない。興味の方が強くなってしまって、緊張感が薄れていたからかも?


 とは言え、前世では縁もあり、国会議員やちょっと有名な代議士、大手自動車メーカーの社長さんやら、アラブの石油王などなどと、商談を行なった経験もある。場数はそこそこ踏んでいるので、王様との話し合いで遅れを取る事はそうそうないのだ。


 こういう所で、前世の肝っ玉が役に立つとは思ってなかったけどね。


 側から見れば、一歳と半年くらいの女児が、無邪気な顔で、一生懸命に話をしているようにしか見えないだろうけど。


 この成りじゃ……説得力も発言の信頼性もないよねぇ。


 皆んな、どこまで自分の言葉を信じてくれたのか……リアクションからすれば、皆んな信じてくれたような気もするから大丈夫だよね?


 ちょっと長い話し合いで、脳みそも身体も休憩をご所望しているようだ。


 話し合いの最中に飲んだミルクで、お腹はちょっとたぷたぷしてる。


 これは、寝起きのお乳と合わせて、そろそろおしっこが出る可能性は否定できない。


 と、考えただけなのに、もよおして来る。この身体は飲んだり食べたりすると、物凄く素直に排泄の動きが始まって、自分で制御出来ないのが辛いな。


 スカートの真ん中を握って堪えていると、お母様に気付かれてしまった。


「いいのよー、アリシアちゃん。ちゃんとちっちしましょうねー」


 お母様の優しい言葉に甘えて、大人しくおしっこをおむつにぶち撒ける。


 正直……おむつ生活一年と数ヶ月。


 おむつへの盛大なお漏らしは、割と開放感があって気持ちが良い。


 これが癖になったらおむつが取れた時にマズイよなぁ……と、冷静な自分も現れて……背徳感を感じる。


 お母様に添い寝してもらいながら、しばし夢の中へーー。




 ーー次に目覚めた時には、今度はちゃんとお母様は横にいた。


 ちょっと嬉しくなって、思わず確認するように、胸の中に潜り込んで温もりを堪能する。


「ふふふ、甘えん坊のアリシアちゃん。おはよう」


 自分の身体にお母様の腕が回り込み、温かさと甘い匂いが包み込む。


 はぁ、幸せ過ぎるぅ。


「ユステア、私もアリシアを抱きしめてあげたいですわ」


 お母様の身体に身を任せていると、背後からナーグローア様の声がする。


「アリシアちゃん、ナーグローアが呼んでますわよ」


 のそりと、後ろにいるナーグローア様に身体を向けると、満面の笑みを浮かべていた。ここで断ってはいけないのだ。ナーグローア様には二人だけの秘密の事があるので、敵にしてはならない。


 そのまま、身体をナーグローア様に寄せ、抱き着くと彼女の腕が回ってきて。その豊満な胸で顔が埋もれた。


 今日は、薔薇のような重い匂いではなく、清涼感のある匂いがして心地良い。


 視線を上に向けると、ナーグローア様が笑っていた。


「アリシアちゃんは、なかなか敏感ですのね。今日は、ユステアが持っている香水をお借りしましたのよ」

「あらー、違いがわかったのですね。アリシアちゃんは、良いお鼻をしてますわねー」


 ナーグローア様の匂いに気付いただけで、二人は嬉しそうな声で話している。ついさっきまで難しい話ばかりで、こんなたわいも無い話は、随分と久しぶりな気がする。


 少しずつ日常が戻りつつある事を感じて、自分も嬉しくなった。


 こんな生活を続けるためにも、始祖様から与えられた使命を果たさないといけない。


 二人の微笑みと巨乳に挟まれながら、ぼんやりと思った。


「奥様、ナーグローア様。お夕食のお時間でございます」


 メリリアの言葉で、ぼんやりとした思考は断たれる。


 夕食の席で、お父様に聞いてみたい事があったのを思い出した。


 お母様やメリリアに聞いても答えは出るだろうけど、折角の機会なので、お父様との会話を楽しみたいのだ。


 メリリアに促されるままに着替えて、お母様とナーグローア様と食事に向かった。


 夕食の席には既にお父様にお姉様、ライネにお爺様とお婆様もいて、微笑ましく会話をしている。


 特に、お父様とお姉様の声の調子が高く、驚きと喜びが入り混じっているように見えた。


「よく眠れたようだな、アリシア。こちらへ来るが良いぞ」


 お父様は、何か良い事があったような表情で自分を手招きする。


 何か面白い事でも教えてくれるのかな? と、ちょっと期待しながら、お父様の手招きに応じた。


「アリシア、喜べ! お爺様がエンペラードラゴンの所在を教えてくれたぞ」


 エンペラードラゴンってなんだっけ?


 首を傾げて、お父様を見ると、意味が通じてなかった事を理解して、少し落ち着いた口調で語りかけてきた。


「ふむ、其方が以前に望んでいた幻獣である。これも運命やも知れぬな!」


 最後はちょっと分からないけど、確かに自分の幻獣が欲しいって言いましたね! ほードラゴンを使役出来るかもしれないのかぁ……なんか凄い話だよ!


「ディオス、話を進めるには早急じゃ。まだ全てを話してはおらぬぞ」

「うっうむ。申し訳ございませぬ、お父様。少々、気が高ぶり過ぎました」


 お爺様に窘められるお父様は、シュンとした表情で肩を落とす。


「ぷふっ」


 喜怒哀楽が相変わらず激しくて、表情を伺うだけで楽しくなってしまい思わず声が出てしまった。


「あらあら、ディオス。アリシアちゃんに、笑われちゃいましたわよ。本当に愉快なお父さんですわね、アリシアちゃん」


 お母様の言葉を聞いて、夕食の席は再び笑顔が満ちた。


「おとうさま、わたしのためにおしえてくれて、ありがとうぞんじます」

「我が必ず、其方の幻獣、エンペラードラゴンを連れ帰って来るからな。期待しておるが良いぞ」


 自信満々の表情に変わって、自分の胸をドンッと叩くお父様。


 娘のためなら何でもやってやる! と言った様子に、心がぽわっと温かくなるのを感じた。


「所在は教えたが、卵があるかはまだ分からぬのじゃ。まず、様子を見に行ってからじゃな。ヴェルファイズの条件次第じゃが……」


 お爺様が言うには、エンペラードラゴンの卵を親から譲り受けるには、必要な手順があるようだ。


 最初に古代竜ヴェルファイズに、古代竜王ジェーネグレンドスとの面会を仲介してもらう必要がある。そこから、古代竜王ジェーネグレンドスに、エンペラードラゴンの住処へ侵入する許可をいただく。


 エンペラードラゴンの生存については、現在不明だそうだ。ましてや卵となると、歴史上の竜であるためつがいでいるのかすら分からない。


 限りなくゼロに近いが、可能性のある話を聞いて、胸が高鳴った。


「神に最も近いと語られているエンペラードラゴンじゃ。卵を譲り受けるには、場合によってはアリシアが赴き認めさせる必要があるじゃろうな。ディオス、迂闊に行き力任せに奪ってはならぬぞ」


 お爺様に釘を刺されたお父様は、「うっ」と言う声を上げて身体を仰け反る。


 あーらー、図星突かれましたね。さすが、お母様のお爺様ですね。お父様の行動を察していたようです。


「まずは情報集めからですわね。アリシアちゃんもまだまだ小さいですし、行かせられませんもの。エルステアくらい大きくなってから、考えましょう」


 お母様はそう言いながら、自分を抱きかかえて席に連れて行く。


 行程の長さから考えても、自分が着いて行くのは難しいよね……お母様の話はごもっともといった感じだ。


「うむ。ユステアの言う通りであるな。ここは、アリシアの成長を見て事を成そう。約束するぞ」


 再びお父様は、皆んなの前で胸に手を当てて誓った。


 その後も、エンペラードラゴンの話で夕食の席は盛り上がりる。


 情報収集に関してお父様は、近々、古代竜ヴェルファイズに叔父様を連れて挨拶する予定を組んでいたそうだ。その際に、お爺様に聞いた話を古代竜ヴェルファイズに聞き、交渉を進める事か始める事に決まった。


 もう無茶はしないと誓ったし、叔父様も一緒なので安心らしい。


 夕食後は、お父様に近寄って質問を投げかけてみた。


「おとうさま、なつのやかたってなんですか?」


 自分から質問を受けると思っていなかったので、お父様は少し驚いてこちらを見る。


 少し驚いた後に、口をニッとさせ笑いながら説明をしてくれた。


「夏の館は、夏の館であるぞ。ふむ、そうであるな。エルステアとアリシアが産まれた館は、冬の館。我が領民が冬の間に困った事があれば、直ぐに知らせを受けられるように建てられた家である。」


 冬の館は理解できたけど……夏の館は説明になってない気がするのだけど……。


「アリシアちゃん。夏の館はね、王都にあるのよ。夏の期間は、領主様のお仕事はお休みして、王都のお仕事に就くのです。エルステアは、産まれたばかりの頃に一度行きましたけど、多分記憶に無いと思いますわね」


 なるほど、お母様の説明は分かりやすい!


 で、いつかはそっちに移るって事なのか。


 夏の館は王都にあるのね。


 ふむ、王都ってどんな感じなのか……これまで見てきた街より凄いんだよね、きっと!


 ちょっと、楽しみでは無いですか!


「おねえさま、おうとにいけるそうですよ。わたしたのしみです」

「ええ、アリシアちゃん。私も楽しみですわ。小さい時だったので、記憶に無いみたいですから、どんなところでしょうね?」


 お姉様と手を取り、王都に期待を寄せながらはしゃいだ。


「ふふふ、お二人とも楽しそうですわね。エルステアは、王都でお勉強もされるのでしょう?」

「ええ、レホヌスタの月から王都の幼児院に通いますのよ。」

「そうなのですわね、てっきり私達と同じように、聖霊院に通われるかと思ってましたわ」


 お母様とナーグローア様の会話に、聞いてみようと思っていた幼児院の名称が出てきた。


 この話に乗るしかない!

 

「おかあさま、ようじいんってなんですか?」


 お母様に身体を向けて、質問してみる。


「幼児院はですね、五歳から入学できる勉強を頑張るところですよ。お姉ちゃんは、五歳になりましたので、夏の間はそこで色々な事を勉強するのです」


 なるほど! 五歳からと言うことは、幼稚園と小学校の間みたいなもの?


 いや、幼稚園が何歳から入れるかは知らないけど、小学校が六歳だよね。


 この世界に、小学校そのものが存在するのかどうかも分からんが……。


 幼児院は制服とかあるのかな? お姉様であれば、何を着ても美しいだろうけど、ちょっと見てみたいかも!


「おかあさま、おしえてくれて、ありがとうぞんじます」


 何となく想像はついたので、お母様に御礼を述べて去ろうした。


「エルステアもアリシアも優秀ですわね。私、二人に聖霊院で学ばれる事を勧めますわ、ユステア」


 お母様はナーグローア様の言葉に、少し首を傾けて困ったような顔をしている。


「そうですわね。ナーグローアの考えも一理ありますわ。ただ、今は少し時間が欲しいの。分かってくださいまし」


 ナーグローア様は、ハッとするような表情でお母様を見た。


 その反応を見たお母様は、静かに頷くだけだ。


 聖霊院が何であるのかを聞こうと思ったけど、何だか聞ける雰囲気では無い。


「この話は終わりにしましょう、ユステア。つまらない事を聞いてごめんなさいね。お詫びにお風呂では、私が貴女を洗って差し上げますわ」


 ナーグローア様がスッと席を立つと、お母様に手を差し伸べる。


 あれ? お詫びになってなくない? それって、ナーグローア様にしかメリットないですよね?


 突然のナーグローア様の言葉に、口が半開きになってしまった。


 お母様は、「しょうがない人ね」といった顔で、ナーグローア様の手を取り立ち上がった。

エンペラードラゴンの所在地判明!?

だけど生死不明は変わらず。

いつの日か、使役できるその日まで……

アリシアちゃんの成長は止まらない!


次回、我が家に!


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いつもお読みいただきありがとうございます。

誤字報告も非常に助かっております!

五月には表紙も出来上がると思いますので、

お楽しみ頂ければと思います!


読んで面白いと感じていただけましたら、

ぜひ、ブクマおよび評価、レビューなど

いただけますと幸いです。

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