038:第十五番温泉の悲劇
温泉魔王の続きです!
「魔王様、問題ないようです。どうぞお入りください」
「ありがとう、アナト。では、皆さん温泉に入りましょう」
アナトさんが浴場からタオルも纏わずに出てきたのには、さすがに目を伏せてしまった。
巨乳とまでいかないが、アナトさんは綺麗な胸の形をしていて、美乳系と一瞬で判断。鍛えられた筋肉と相まって、腰のくびれがキュッと締まり、張りのある足腰、見事なプロポーションです。
身長も高いので、ハリウッドスターのように美しいのだ。
ええ、いくら女性の身体に見慣れてきたとは言え、とても目のやり場に本当に困りますね……。
「アリシアちゃん、お母さんと一緒に行きますわよー」
お母様の声に従い、抱っこされて浴場に入る。ライネもお姉様に抱かれて入って行き、メリリアとリリアが後に続いた。リフィアは、脱衣所で待機して着替えの準備をするそうだ。浴場の入り口にはリーシャが待機していて、奥にはサーシャさんが見張りとして担当する。
浴場に入ると、石で囲われた大きな湯船があった。
周囲は木で囲まれていて視界を遮っている。
視線を上に上げると、当然、温泉なので天井は無いと思ったら、大きな屋根が付いていた。
なるほど、空が飛べる種族がいるから上からも見えないように配慮されているのですね。
納得しました。
「まずは、エルステアとアリシアちゃんを洗いましょうね」
「せっかくなので、私も参加しても良いかしら。二人をいっぱい洗って差し上げたいですわ」
「ええ、もちろんですわ。ナーグローアが良ければ洗ってさしあげてくださいな」
おぉぉぉ? お母様? それは、ちょっとまずい事になりませんか?
ナーグローア様の目が怖いですよ……あの目は獲物に飢えた狩猟者の顔ですよ。
危険な時はちゃんと止めてくださいね!
「先ずは、エルステアから洗いましょう、こちらにいらっしゃい」
「はい! ナーグローア様。本当によろしいのですか?」
「もちろんですわ。貴女達を洗ってあげられるなんて、私、この瞬間を感謝しておりますの」
アナトさんはナーグローア様の補助で側に付いている。何かあれば、きっと彼女が止めてくれるよね!
ナーグローア様は手にいっぱい泡を付けてお姉様の髪の毛を洗っていく。繊細な指使いで頭皮をゆっくり揉みほぐしているようだ。お姉様もとても気持ち良さそうにしている。
さすが、女性の扱いに慣れているナーグローア様? 気持ちいいツボを押さえているようです。
髪の泡を洗い流してもらったお姉様は、とても満足そうだった。
「ナーグローア様は髪を洗われるのがお上手なのですね。とても気持ちが良かったですわ」
「あら、良かったですわー。貴女にも、私の髪の洗い方を伝授しても良いのですよ」
「教えたいただけるのですか? 私、覚えたらお母様の髪を洗ってあげますわ」
「それは良い考えですわね。では、後でユステアの髪を洗いながら教えてあげましょう」
「ありがとう存じます、ナーグローア様。ぜひ、お願いします」
秘伝! 女性が気持ちよくなる髪の洗い方を学ぶ事が決まったお姉様。
自分もちょっと興味あるので、一緒に教えてもらおうっと。
お姉様はそのままナーグローア様に身体を洗ってもらう。泡まみれになっていくお姉様が、時々くすぐったい感じで身を捩らせている。
お姉様の身体をナーグローア様の繊細な指が這っていく……うん、まぁ変な事はしていないのは分かるけど、洗うって感じに見えないのですけど……。
バシャっとお湯をかけて泡を洗い流してもらうと、ツルツルに輝くお姉様の肌が露わになる。洗われる前と比べると子供の肌なのに、明らかに肌艶が良くなっている気がする。
ちょっと頬が紅潮してるのが気になりますけど……温泉の暑さのせいですよね?
「次は、アリシアちゃんですわー。こちらにいらっしゃいませ。ちょっと勢い出てきましたわ!」
ナーグローア様の洗髪! お姉様もかなり気持ち良さそうにしていたので期待大です!
その指使いをしっかり堪能させていただきますね!
アナトさんに洗髪用の泡を髪につけてもらう。
お姉様ほどまだ髪が長くないので、泡の量は多くない。
「アリシア、まずは髪を洗いますわね。しっかり洗って綺麗にしてあげますわ」
「おねがいします、ナーグローアさま」
ナーグローア様の指が髪を掻き分けて入っていくのが分かる。と、同時に頭皮が指で揉みしだかれていく。頭蓋骨まで揉みほぐされているような感覚……すごく気持ちがいい……まるでカリスマ美容師にシャンプーしてくれているような感じだ。頭の血行も良くなってきている感覚さえする。長旅の疲れも一気に消えていく……。
そうだよね! そういえば、まともにお風呂入れたのは今日が初めてだ。
「ナーグローアさま、すごくきもちがいいです」
「ふふ、そうでしょう。あの堅物のアナトですら絶賛しましたもの。女の子の髪を洗う腕は世界一ですわ。もっと気持ちよくなって良いのですよ」
そう告げると、ナーグローア様はさらに頭皮から髪の先まで指を滑らせ洗っていく。
どんどんと頭が軽くなっていくような錯覚させ覚え、意識が遠のいていきそうになる。
「はい。これで、お終いですわ! 全て洗い流してしまいなさい! いけ! アナト!」
ナーグローア様の指示で、頭から水をぶっかけられる。
おっおぉぉ、危ない! 落ちるところでしたよ!
ナーグローア様の洗髪、マジヤバかった。
さっきまで薄れ掛けた意識が覚め、正気に帰れた。なんて恐ろしいテクニック……これで身体も洗われたらどうなってしまうのだろう……身震いしてナーグローア様を見ると、手には既に泡が準備されていて、口の端をちょっとあげてこちらを見つめている。
あぁ、ヤル気満々ですね、ナーグローア様……。
耳の後ろから丁寧に、泡のついた指で撫でるように洗われていく。首筋に指が触れビクッとするが、ナーグローア様の動きは止まらない。どんどんと鎖骨から肩、腕に脇の下と指をなぞらせて洗う。脇の下から脇腹に来た時に、くすぐったさから身を捩る。もう慣れたものだと思っていたのに、想像以上にくすぐったい! 胸のあたりはこれでもかというくらい丁寧に洗われたけど、特に何も感じなかった。
だが、流石に股の間を洗われた時には、思わずナーグローア様の指を掴んでしまった。
ここは流石に洗ってもらうには恥ずかしすぎる……このままあの指使いで洗われでもしたら……。
間違いなく粗相してしまうかもしれない。
流石に子供とは言え、それはいけない……。
自分の尊厳にかけても、痴態を晒すわけにはいかないのだ。
「あら、アリシア。恥ずかしがらなくても良いのですよ。私に任せておきなさい」
大人の力に幼児が勝てるわけもなく、ナーグローア様に手を払われ下腹から洗われていく。
くすぐったい感触が膀胱を刺激されていく。
「んんっ!」
身体が震えるのを、歯を食いしばって耐える!
これは、本当にまずい!
「あぅっ!」
と、思った時にはもう遅かった……。
「あっあぁ……ぁ……」
ナーグローア様の手にぴちゃぴちゃ音が当たる。
あぁ、ものすごく泣きたい。
この歳でこんな事をしてしまうなんて……しかも人様の手に……。
感情の制御はもはや不可能だ。中と外の意識がシンクロし、恥ずかしさで目から涙が溢れそうだ。
「あら、アリシア我慢してらしたのですね。気がつかなくてごめんなさい。でも、大丈夫ですわよ」
ナーグローア様は耳元で謝罪の言葉を述べると、バシャバシャっとアナトさんがお湯をぶっかけてきた。
アナトさんは、自分とナーグローア様まとめてお湯を数回掛けてくる。
さっきまで、自分が耳にしていた痴態の音は、掛けられたお湯の弾ける音で消えていった。
「綺麗に洗い流せたみたいですわね。アナトよくやりました」
掛けられたお湯で、涙も全部流されていった。けれど、崩れた顔は治らない……。
この精神的ダメージは相当大きいのだ。
「本当にごめんなさいね。私も少し調子に乗りすぎましたわ」
ナーグローア様は、そう言って自分をそっと抱きしめた。胸の柔らく温かい感触に顔が包まれギュッと挟まれる。頭の上に手が置かれ優しく撫でてくれた。さっきまでの痴態はアナトさんがお湯と共にかけ流してくれたので、周りに事実は知られていない。
「ナーグローアさま、ありがとうぞんじます。わたしのためにしてくださったことですから」
「謝るのは私の方ですよ、アリシア。貴女は本当にいい子ですわね。ありがとう」
しばらく、ナーグローア様は自分を抱き締めて、何度も頭を撫でてくれた。
だんだんと、羞恥心は薄れていき、逆に申し訳ない気持ちになってくる。
「もうおちついたのでだいじょうぶですよ、ナーグローアさま」
「では、私が身体を洗ったら一緒に入りましょう。入ってくれますか、アリシア?」
「ええ、ナーグローアさまとおんせんにはいりたいです」
不安そうな顔を見せるナーグローア様に、笑顔で応えてあげた。ちょっとやり過ぎてしまう事は誰にでもあるし、そもそも自分のせいでもあるので、ナーグローア様を責めてはいけないのだ。
それに、こんなに良い魔王様ともっと一緒にいたいですし!
「ありがとう、アリシア。では、直ぐに洗わせるので待っててくださいな」
ナーグローア様は、アナトさんとエリエスさんに命じて身体を洗わせる。
「アリシアが冷えてしまいますわ、急いでくださいまし」
その言葉を聞いた二人は、ものすごい勢いでナーグローア様を洗い始め、瞬く間に泡だらけにしたと思ったら直ぐにお湯をぶっかけた。
綺麗に洗われたナーグローア様は、濡れた髪を後ろ流してこちらを見る。滴るお湯が、ナーグローア様をさらに色っぽく見せる。思わずその姿に見惚れてしまった。
「お待たせしましたわ、アリシア。さぁ、一緒に温泉に浸かって、スベスベつるつるになりましょう!」
色気を発するナーグローア様に抱っこされて、湯船に向かった。
何か起こるとは思っていたけど、まだ温泉巡りひとつ目でこんな事になるとは……。
「アリシア、今日の事は私達ふたりのひみつですわ」
「はい、ひみつです。ナーグローアさま」
恥ずかしい思い出を、二人の秘密として誓い合い、スベスベつるつるの温泉に浸った。
我慢できないものはしょうがない!
魔王の指先に今後は注意しましょう!
魔王様と行く温泉巡りはまだ続きます。
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いつもお読みいただきありがとうございます。
少し読みやすくなるように分割してみましたが、
逆にボリューム上がってしまったようで......。
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