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036:魔王様のお・も・て・な・し

魔王ナーグローア様と再会したアリシアちゃん

今後はもてなされる方みたいです

 ナーグローア様がステップを踏んで前を歩く。


 自分達に会えたのが、本当に嬉しいようだ。


 折角なので、一緒にステップを踏んで行ったら喜びそうと思い、お姉様の手を取ってナーグローア様に駆ける。


「ナーグローアさま、いっしょにいきましょう」

「あら、嬉しいこと。可愛い華が両手に付きましたわ」


 ナーグローア様が、自分とお姉様の手を取って満面の笑みを浮かべた。魔王と呼ばれているけど、女の子にはメロメロの優しい人なのだ。道中で襲ってきた奴の方が、よっぽど魔王だよなぁ。


「アナト、この子達の護衛の選定は終わりました?」

「はっ!こちらに」


 後ろからついて来ているアナトさんが、手で合図を送ると、二人の女性騎士が姿を現わす。


「右がエルステア様の護衛を務めるサーシャ、左がアリシア様の護衛を務めるリーシャでございます」

「なるほど、考えましたわねアナト。其の方等であれば間違いないでしょう。しっかり支えなさい。エルフの騎士に遅れをとるのではありませんよ」

「はっ!お任せください!」


 サーシャさんにリーシャさんが護衛に付くことになった。


 二人ともナーグローア様の騎士を象徴する黒い鎧を纏っている。顔立ちは二人ともほほ同じ、身長も同じくらいに見えるので、まるで双子ですね。サーシャさんは綺麗な緑色の髪を後ろで束ねて結んでいて、リーシャさんは透き通るように美しい水色の髪を二つで結んでいる。違いが分かりやすいので、判別は非常に楽です。


「サーシャさん、リーシャさん、よろしくお願いしますね」


 お姉様の挨拶に自分も続く。二人とも微笑んで挨拶を返してくれる。ナーグローア様の騎士だから、二人ともきっといい人だと思う。


「お二人とも、この二人は双子なので、どちらかに何かがおこれば意識で繋がっているので、直ぐに連絡が取れるのですよ。今回の護衛にはぴったりでしょう」


 あ、やっぱり双子ですよね。意識で繋がれるって、これまた凄い能力だ。テレパシーとかそんな類なのかな?興味深げに二人を眺め見ていると、リーシャさんが側に来て話かけてきた。


「お嬢様はとても好奇心が旺盛のようでございますね。少しお試しになられますか?」


 リーシャさんは微笑みながら、手に絵が描かれた複数の板を渡してくれた。「これで何をするのだろう」と、不思議に思っていると、サーシャさんは後ろ向きになって耳を塞いだ。


「今から、お嬢様が選んだ絵を後ろのサーシャにお伝えしますわ」


 おぉ、マジですか!? 完全に後ろ向きになってるからどんな絵を取ったかなんて分かりませんよ。まさか、この世界でマジックショーを体験するとは思いませんでした。いや、タネがないから超能力?


「ふふ、子供の余興にぴったりですわね。アリシア、試してごらんなさい」

「じゃー、これで」


 手に取ったのはライネのような赤い絵の具で描かれた鳥の絵だ。リーシャさんはその絵を見る。


「では、サーシャ、アリシア様はどの絵をお示しになりまたか?」

「赤い鳥ライオコーンの絵ですわ、リーシャ」

「ピピィッ!」

「凄いですわ、本当に通じ合っているのですね」

「すごいです!」


 いや、本当に凄いよ。リーシャさんが、ちょっと見ただけなのにリーシャさん直ぐに答えちゃったよ。タイムラグなしで意識を共有している事になるよね。まさにソウルメイトですよ……これまた凄い人達が護衛に付いちゃった。


 その後も、リーシャさんとサーシャさんの役割を入れ替え、数回披露してもらった。すべて即断で的中してしまったので、お姉様も自分も驚きと尊敬の眼差しを二人に向ける。自分も、「お姉様とソウルメイトになれたら面白いのにね」と思ったけど、この思考を読まれると色々まずい気がしたので却下した。流石に、妹が実は男の意識持っているなんて知れた日には、きっと失望してしまうのではないかと……。


「さぁ、皆さん余興はおしまいですわ。夕食にしましょう。今日は私の料理人が腕によりを掛けてご馳走いたしますわ。ヴェルシュットシュテルンの料理は召し上がったことはないでしょう?」


 ここもやっぱり、宿の人達が料理を出すわけではないようです。この習慣はよく分からないですね。王様とか貴族だからなのかな?


 それよりも、ナーグローア様の国の料理ですか。魔族が食べるものって勝手な想像だけど、凄くグロい感じを想像しちゃうのだけど……大丈夫?サソリの丸焼きとかワラスボとか無理ですよ?バッタの佃煮とかイカの塩辛ですら食べられないのに……思わず生唾を飲んでしまった。


「前回、其方で頂いた料理を参考に、こちらの食材を加えてアレンジしたものですので、安心して召し上がってくださいな。流行りの毒はございませんことよ」

「ナーグローア、その辺は心配しておらぬぞ。有難く招待されよう」

「そうね、我々の間では不要ですわね。では、こちらにどうぞ」


 一瞬、お父様とナーグローア様の表情が硬くなった。料理のレシピを勝手にアレンジした事かな?ほんの一瞬だったから大騒ぎするほどの事でも無いんだろうね。


 ナーグローア様とまた手を繋いで、夕食会場へ向かった。




 白い石柱がズラリと並んだ回廊の一角に夕食会場がある。その部屋は、さっきまでのギリシャっぽい雰囲気と打って変わり、西洋風の調度品が並ぶ豪華な空間だった。高い天井には、この世界の歴史を表現しているような天井画が描かれていて、吊るさた金色に輝くシャンデリアが眩く光り、さらに豪華さを演出している。


 口を開けて天井の絵を見ていると、メリリアが席に案内してくれる。思わず口が開いちゃってたけど、本当に凄いところに来てしまったのだねぇ……。「こんな所に長期宿泊なんて、お家の家計大丈夫ですか?」と思わず心配してしまった。


「では、今日は私から。」


 少し喉の調子を整えたナーグローア様は、テーブルに座る自分達を見て口を開く。


「聖柱ユグドゥラシルの導きにより、再び友が集う。最上神ハルヴェスマールの祝福に感謝を!」


 ナーグローア様は手に持った盃を少しだけ挙げると、お父様もお母様も叔父様達も続いた。少し遅れてお姉様と一緒に綺麗な装飾が施されたグラスを挙げる。「かんぱーい!」みたいな事はこの世界では行わないみたいで、皆さん大変お上品なんです。


「ナーグローア様、お料理をお出ししてよろしいですか?」

「ええ、お願いしますわ、マイオニー」


 以前に家に来たマイオニーさんも、ナーグローア様と一緒の様です。


 マイオニーさんは他のメイドさん達と手分けして、テーブルに次々と料理を給仕して周っていく。


 自分の前にも料理が盛り付けられる。「今日も皆んなと同じ料理が出るのかな」と思ったら、自分だけ少し装い付けが違った……量もそうだけど、ちょっと味が薄そうな料理に見える。


「あら、ナーグローア。アリシアちゃんに気を使ってくれたのですね」

「ふふ、当然ですわよ、ユステア。ヴェルシュットシュテルンの味付けのままですと、アリシアちゃんが食べられませんもの」


 ふむ、皆んなのお皿の中をチラッと見ると、黒いソースが掛かっている。自分の料理には掛かっていない……という事は、あれが子供には刺激なのだろう。こんな小さい子にまで気を回すなんて、ナーグローア様はやっぱり優しいですね!でも、どんな味がするのかちょっと興味があるなぁ。


「アリシアちゃん、このソースはね子供が口にしちゃうと、直ぐにぶくぶくになっちゃうから食べさせられないの。ごめんなさいね」


 なるほどと思い、お姉様のお皿を見るとソースは掛かっていなかった。子供が口にすると直ぐ太る食材って、なかなか恐ろしい物がナーグローア様の国にはあるのですね。この後の料理にも、驚きの作用がある食材が出て来そうで、楽しみなような怖いような……。


 予想通り、次から次へと出てくる料理には、子供が食べてはいけない食材が必ずひとつ入っていた。食べると髪の毛が全部抜けちゃう果物や、出っ歯になってしまう野菜、八重歯が大きくなる肉やら……ゲテモノ料理ではなく、自分がモンスターにでもなってしまいそうなヤバイ食材達だった。


 正直、料理は別だから、聞く分には驚きが合って楽しかったですよ。激ヤバ食材をこれでもかって食べたら、どんな風になるのか逆に気になったくらいだ。一応、間違って食べてしまっても解毒剤があるので、一ヶ月飲み続ければ元の姿に戻れるらしい。でも、食べてから直ぐに解毒しないと……戻れない事もあるとかないとか。何とも恐ろしい話です。


 羽の生える食材だったら食べてもいいかも! と考えていたら、そういった食材もあるそうだ。だけど、空が飛べるわけでは無いらしい……世の中、そんなに都合良く出来ていませんよね。がっかりです。


 面白い食材の夕食を食べて、しばしティータイムです。


「ユステア、以前に紹介していただいた温泉に、昨日行って来ましたのよ。見てくださいまし、このお肌。すべすべのツルツルになりましたの。さらに驚くことに、ほらっ! 私の傷ついて抜けていた羽が、新しく生えて来ましたのよ。教えてくれて、ありがとう存じます」


 ナーグローア様は、さっきまで小さかった羽を大きくさせ広げてみせた。いいよねー! 大きな羽。自分も羽が欲しい、第二の人生だったよ……。こればっかりは文句言ったらダメですね。優しい両親にお姉様、メリリア達がいる恵まれた環境なのに罰が当たっちゃいます。贅沢言ってすいません神様。このままで全然文句ありません! 心の中で神様に謝罪した。


「ナーグローアの喜ぶ顔が見られて良かったですわ。本当に潤った肌ですわねー。とても素敵ですわよ。」


 お母様は、ナーグローア様の腕を触りながら感触を確かめていた。触れられているナーグローア様が恍惚と次第しているのですが、このままほっといていいのだろうか……。頬が紅潮し始めてますよ? お母様?


「ユステア、一緒に温泉行きましょう。貴女もこのお肌になるべきですわ。エルステア、祈念式に出るのでしょう。このお肌と私の装備で、エルフ族最高の美女として舞台に立つべきですわ!」


 ナーグローア様が鼻息を荒くして、お母様とお姉様に詰め寄っている。うわぁ、温泉の話になったらテンション上がりっぱなしじゃないですか。少し落ち着かないとアナトさんに睨まれちゃいますよ?と、思っていたらアナトさんの鋭い手刀がナーグローア様の首に決まった……。


 ええっ!? 武力行使ですか? ナーグローア様、大丈夫ですか!


「あら、ちょっと盛り上がり過ぎちゃったかしら。しょうがないですわね」


 アナトさんの手刀で、ナーグローア様はだらんと項垂れている。というか、意識を失っている。側にいるお母様は平然とした顔で微笑んでいた。どういう光景でしょう、誰もナーグローア様を気にした様子がないのです。


「アナト、そろそろ起こして差し上げて。このままじゃ温泉に行けませんわ」

「はい、ユステア様」


 お母様に促されて、アナトさんがナーグローア様の背中に……掌底を打ち込む! いや、普通に起こせば良く無いですか? 一々過激な何ですけど?


「ゴホッ! ゴホォッ!」


 当然そうなりますよね。ナーグローア様、全然淑女っぽく無い咳き込み方してますよ。


「ちょちょっと……興奮していたようですね。失礼しましたわ」


 口元をハンカチで拭い、ケロッとした顔でこちらを見渡した。


 あれだけの事が有っても平然とした顔でいられるなんて、さすが魔王様ですね。自分が同じ事されたら、間違いなく首と体が離れてますよ。


「それでは皆様、温泉に入りに行きましょうか。まずは、十五番温泉からですわ! その次はそのまま十四番も行きましょう。帰りに美味しい美食何処に寄るのも良いわね」


 ナーグローア様のテンションがまた上がっていく。このままだと、またアナトさんの手刀が入ってしまう!危険な状態であると察した自分は、ナーグローア様に話しかける。


「おいしいたべものがあるのですか? ナーグローアさま」

「ええ、十四番温泉の隣に、ふわふわで中トロトロの甘いお菓子があるのですよ。アリシアちゃんなら、きっと気に入ってくれますわ」

「そうなのですね。はやくいきたいです!」


 子供らしくナーグローア様に話を振って先を促した。ナーグローア様の興奮は下がらなかったけど、さらに上がる事なく平行線を維持する。このまま一気に温泉まで直行すれば、手刀を叩き込まれずに済むはず!


「ナーグローア、支度はできているようですよ。早速、温泉に入りにいきましょう」

「ええ、ユステア。行きましょう。貴女達、私についてらっしゃい」


 ナーグローア様は唇の端を上げて微笑むと、お姉様と自分の手を取る。先ほど夕食会場で手を繋いで歩いたのがよっぽど嬉しかったのか、また手を繋いで温泉に向かうことになった。


「ふふ、貴女達、ナーグローアのお気に入りになっちゃいましたわね。いっぱい遊んでもらうといいわよー」

「ユステアの子供は私の子も同然ですもの。いっぱい可愛がってあげますわー」


 お母様の言葉で満面の笑みを見せるナーグローア様。


 温泉街の幻想的な街明かりの中、十五番温泉を目指した。

いたるところに子供が楽しめる要素を

隠し披露する魔王ナーグローア様

温泉でも彼女のもてなしが披露される!?


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いつもお読みいただきありがとうございます。

かなり続報をお待ちくださる方が増えてとても嬉しく

思っております。


引き続き、応援いただけますと幸いです。


読んで面白いと感じていただけましたら、

是非、ブクマもしくは評価をいただけますと

幸いです。


現在、ランキングサイトにもやっと登録し始め

ました。一人でも多くの方に読まれるように

頑張りますので、どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

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