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034:非戦闘員の休息/グルガイス領

境界門の騒動がひと段落、しばしの休息です。

 森の拓けた場所に二十人くらいの騎士が集まっている。


 増援に駆けつけてくれた騎士の一部と、お父様、叔父様、ランドグリスお兄様だけではなく、騎士団長のツヴァイスタ様にルードヴィヒ様もいる。


 後、鎧を纏っていない貴族の人が何人かいた。


 後で知ったけど、グルガイス領の領主様だそうだ。自分の領地を緊急で横断する王都の騎士団にただ事ではないと、駆けつけたらしい。マッチョな人はおらず、どちらかと言うと事務職系な雰囲気の人達だ。


 集まった騎士達で、境界門の争乱の後始末を話し合うそうだ。これからバンテリアス領を通過する人達の安全確保、新領主の目的、隣接する領地への侵攻していないか、いろいろ分担するみたいですね。


 子供はその会議に出られる訳もなく、遠目でお父様達の様子を見ているだけ。

 あまりお行儀の良いものではないらしいので、その場からメリリアに離れるように促された。

 ルードヴィヒ様がこちらに気づいたけど、こっちは気づかない振りをしておいた。


 だって、彼奴、変態っぽいし、怖いじゃん。


 ブレイスール領の人達は、境界門で戦っていた男衆と合流したので、早朝にテントを片付けてユグドゥラシルに出発していった。お姉様によると、昨日挨拶をして楽しく話をしていた子達は、ユグドゥラシルの麓にある都市に行くみたいだ。「温泉街に泊まれたらよかったのに……」と、お姉様は残念そうに呟いていた。


 お姉様の側には、自分とかグレイしか歳の近い子供はいない。同世代の子供と話が出来て、嬉しかったんだろうね。お顔につまんないって出てるけど、またその顔も実に可愛らしかった。普段見られないお姉様の顔を見られてお得な気分です。


 でも、お姉様がこれからお友達が出来ちゃうと、自分の相手をしてくれなくなったら寂しいなぁ。そんな気持ちにもなって複雑な気分ですよ。


「おねえさま、まだじかんありそうです。あそんでください」

「ピピッ!」


 ライネも同調してくれて、お姉様に声を掛ける。そうそう、自分とライネでお姉様の残念に思う気持ちをいっぱい埋めてあげますよ! さぁ、遊びましょう!


「ガウッ!」


 お父様達に混じっていたガイアもこちらに参戦です。自分達の周りがちょっと賑やかになってくると、お姉様の表情もいつの間にか笑顔に変わっていました。うんうん、お姉様は笑顔が一番ですよ! 馬車の近くに黄や青の小さい花が一面に咲いている場所で、皆んなで遊んだ。グレイのような男の子はいないので、遊ぶといったら花を使った冠やら腕輪を編んで作るくらいですけどね。


 ふふふ、お姉様と遊ぶようになって、自分、花冠を綺麗に作れるようなっているのだよ。


 これが成長って奴ですね。得意げにガイアに作った冠を付けてあげたら、凄い喜んでくれたのか花畑を駆け回りだした。ガイアが走り回ると、後を追うように花びらが宙に舞い降り注いでくる。


「わぁ、花が舞って幻想的ですわね」

「きれいですね、おねえさま」


 ガイアの暴走が思わぬ良い結果になった。これを意図してやったのであれば、相当な奴だと思うけど、絶対違うだろう。


「ガウッッ!」


 えっ狙ってやった? ガイア、嘘はいかんと思いますよ?


 ガイアは、フンッと鼻を鳴らして顔を背ける。


 いくらなんでも……無理があるぞ……。


 ライネもガイアの真似をして、花畑をふわふわ丸々の身体でよちよち歩き出した。小さい羽で花を叩いて空に舞い上がらせようとしている仕草が可愛すぎた。ガイアのようにやりたかったけど、上手くいかず、お姉様に訴えるように鳴いて戻ってくる。獣たちの愛らしい動きを、お姉様と笑い合って見ていた。


「はいっ、アリシアちゃん。こちらをどうぞ」


 舞っている花びらに気をやっていると、お姉様が頭に花冠を付けてくれた。


「ふふふ、お花の妖精さんみたいですわ。似合ってますよ、アリシアちゃん」


 お姉様に褒められて、何とも気恥ずかしい……。被せてくれたお姉様を上目で見て口を開く。


「おねえさま、ありがとうぞんじます。わたしも、これどうぞ」


 上手く作れた物の中から厳選した花輪をお姉様に渡す。


「まぁ、可愛い花輪ですわ。青色の花の周りに、黄色の花がアクセントで付いていて、素敵ですわね。アリシアちゃん、ありがとう存じます。」


 お姉様ほど上手には出来てないけど、喜んでくれて嬉しかった。早速、花輪を腕に付けて見せてくれる。うん、もう少し上手に作れるように頑張らないといけないかな……。編み方が少し粗く見えていけませんね。


 もうちょっと綺麗に編めるようになりたくて、お姉様に聞きながら何度か花輪作りを試みた。


 結構集中して花輪を作っていたので、時間が過ぎるのがあっという間だ。メリリアに呼ばれて、お昼を取りに戻った。今日はまだ、満足いく花輪は作れなかった……こだわり出すと際限ないですね。お姉様が身に着けても遜色のない物が作れるまで時間と修練が必要。お姉様の腕についている、ちょっと残念な自分の花輪を見てそう思う……。




「あらぁー! 小さな花の妖精さん達が戻ってきましたわー。んもぅ、貴女達は本当に可愛いですわねー。そう思いません事、リリア?」


 戻って来たお姉様と自分を見るや、口に手を当てて黄色い歓声を上げ、お母様の後ろにいるリリアに尋ねる。リリアも自分達を見て微笑んでいた。昨日までの事が嘘のように、皆んな明るい表情をしている。


 過ぎてしまった事だし、原因も詳細に分からないから、くよくよ考えてもしょうがないですよね。


「とってもお似合いでございます、奥様。私もお嬢様方を拝見して花の精霊が舞い降りて来たように感じました。」

「そうでしょう、そうでしょう。リリア、貴女分かってますわね!」


 リリアの言葉にいちいち頷くお母様。もの凄く満足そうにして、自分達をうっとり眺めている。


「奥様、馬車に支度が出来ておりますので、アリシア様とお向かいください。」

「アリシアちゃん、お外で遊んだからおむつを替えましましょうね。こちらにいっらしゃい。」


 そうでした、皆んなが褒めるから忘れてかけど、既にお尻はおしっこでぱんぱんなのだ。

 誤魔化しても歩き方でバレていたのだろう、頷いてお母様に付いて行った。


 いつも通り、スカートを捲られ、下着の紐を解いて脱がしてもらう。そのまま、おむつカバーの紐が解かれると下半身が露になるので風が通って気持ちが良い。温められた布で汚れているところを拭いてもらうのだけど、これがまた最高に良い。拭かれている時はくすぐったいけど、後の爽やかさは格別なのだ。


 緊迫した旅路のおかげで、今日は例の粉、シッカロールもどきを股付け根に付けてもらった。ぽんぽんと叩いて付けてもらっていると、尿道が圧迫されておしっこが出そうになる。


「おかあさま、おしっこでそうです。」

「あら、それはいけませんわね、はいっここにちっちしてくださいな。」


 お母様はそう言うと、新しいおむつを股間にあてがう。あれ? 便器は? 使わない……この方が効率的……という事ですか。


 お母様におむつをあてがわれたまま、おしっこを出すのは物凄く後ろめたさを感じる。


 手の感触がさらに背徳感を煽る。


 でも、このまま出さない訳にもいかないので、お母様も見ないようにおしっこを布に掛けた。しっかりと出し切ってお母様に報告する。もう、自分はいろんな意味でお母様には逆らえない状態になった……。


「ちっちちゃんと出来ましたねー、アリシアちゃん。それじゃ、綺麗に拭いてあげますわねー。」


 当のお母様は至って上機嫌だ。子供なんだから、あまり気にしちゃいけないって事だね。うんうん。お母さんってやっぱり偉大だなぁ……。申し訳なさと尊敬の念を感じながら、ジッとおむつを替えてもらうのを待った。


「はい、おむつ綺麗になりましたよー。動かないで待ってて偉かったですわー。」


 何事もなくおむつ交換は終わりました。さすがに今日のような事は……もう、起さないようしたい……。


「奥様、昼食が出来ておりますので、ご案内いたします。」


 メリリアに促されてお母様と昼食の席へ向かう。昨日夕食を食べた場所ではなく、外に長いテーブルが用意されていた。というか、このテーブルはどこから用意したの? 昨日はこんなに長いテーブル無かったよね? えっ、そこに木は沢山あるって……。メリリアの解説に黙らされた。無ければ作ればいい精神ですかね……それにしたって万能すぎやしませか、皆さん。


 テーブルや椅子全部が、生い茂る森の木を伐採して加工した物だ。今すぐここで自給自足の生活に切り替えられるのではないだろうか。驚きを通り越して呆れてしまったよ。


 取り合えず、皆んな凄い! って事だけ理解して、席に着く。テーブルにはいつもより多くお皿が並んでいる。お父様と叔父様にランドグリスお兄様が座るとすれば、四人分のお皿と椅子が余分にある。何となく察したけど、いま会議している人達を招待したのだろう。騎士団長は来ると仮定すれば、後は他の領地の方だろうね。


「お母様、叔父様とランドグリス様以外に、こちらにご招待されたのですか?」

「ええ、せっかくなので慰労も兼ねてご招待させていただきましたの。」


 ですよね……。身内以外と一緒に食事をするのは初めてかも。


 粗相のないように気を付けないといけないね。


「いやー腹が減ったぞ、メリリア、準備は出来ているか?」

「はい、旦那様。こちらにどうぞお掛けください。只今お持ちいたします」


 大きな声でお父様がやってきた。側には叔父様以外にガタイの良い男性が三人いる。その後ろにはルードヴィヒ様もいた。


「お招きいただきありがとうございます、ユステア様。こうして、無事な姿を拝見でき安心いたしました。」

「ツヴァイスタ、ご助力ありがとうございました。豪華な食事はご用意出来ませんでしたが、まずは感謝の気持ちとして召し上がってくださいませ。」

「お気遣い無用と言いたいところですが、ちょうど腹も空いておりました。ユステア様のご厚意をありがたく受け取らせていただきますぞ。」


 騎士団長のツヴァイスタ様は、お母様に御礼を述べるとメイノワールに席に案内される。続いて、ミドルス領とアルザス領の領主様がお母様にご挨拶をして席に着いた。最後にルードヴィヒ様も挨拶を交わして席に案内された。


 ルードヴィヒ様は、特に挙動不審な態度をしなかったので、もしかして、初めてお会いした時にお姉様をすっとばして、自分に挨拶してきたのは何か理由があったのかもしれないと思い始めた。ほら、緊張して間違っちゃう事ってあるし。


 昼食の席では、ミドルスとカルザスの領主が、傷ついた人達を助けてくれた事に感謝の言葉を送り、いつか持成しをさせて欲しいと言っていたり、お父様と叔父様と騎士団長が昔一緒に戦った時の思い出話に花を咲かせていた。ルードヴィヒは、皆んなの会話に混じるそぶりを全く見せず黙々と食事をしている。この人は基本、寡黙なのかな?変に興味を示すのは良くないので、知らぬ振りをしておいた。


「では、この後は皆、違う場所になるのだな。道中、まだ油断はできない故、気を付けてくれ」


 ミドルスとカルザスの人達も温泉街ではない場所で、祈念式まで停泊するそうだ。ミドルスにも子供がいたので、一緒に遊べたら面白かったのにね、残念でならないよ……。そんな自分より、お姉様の方ががっかりしている感じだった。


「我々騎士団は、各領地に通じる境界門と街道を護衛しながら、バンテリアス領の討伐隊を結成し逆賊を捕らえに参ります。」

「頼んだぞ、ツヴァイスタ。何かあれば何時でも呼んでくれ。ユグドゥラシルから戻った後の報告を楽しみにしているぞ。」

「はっ!戻られる際には全て片付いておりますので、ご安心ください。」

「私からもお頼みしますわ、ツヴァイスタ。どうぞ、よろしくお願いいたします。」


 お父様とお母様の言葉を聞いたツヴァイスタ様は、真剣な顔になり頷いた。


「では、我々は出立し、境界門に残した騎士と合流いたします。皆さまに始祖ユグドゥラシルの加護があらんことを」

「ツヴァイスタ、任務の無事を祈る。この国の不穏な影に目を光らせてくれ」


 ツヴァイスタ様は、お父様を一瞥しマントを翻して去って行った。


 あれ? ルードヴィヒ様はツヴァイスタ様と行かないの? 席に座ったままなんですけど。お仕事始まりますよー?


「ルードヴィヒさまは、いかれないのですか?」


 もしかして食事が美味しすぎて、お仕事があるのわすれちゃいました? 実はちょっとお間抜けさんなのかな。ほらほら、早く席を立っていきましょうね。ツヴァイスタ様いっちゃいますよ。


「アリシア、言い忘れていたが、ルードヴィヒはこちらに残り我々を護衛をしてもらうのだ。なかなか筋が良いのでな、祈念式が終わるまで同行させる」

「あっ、そうなのですね……」


 げぇ、本当に大丈夫? この人で……確かに寡黙で強そうなオーラ出てるけど、緊張してまた変な事したりしないかなぁ……。ちょっと不安なんですけど……。

騎士団の方針が決まり平定の動きへ

アリシアちゃん達は、いよいよ温泉街へ!

だけど、何故こいつが?


次回、魔王様とひさびさの再会です。

どうぞ、ご期待ください。


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いつもお読みいただきありがとうございます。

いよいよユグドゥラシル編の佳境へ突入します。

引き続き応援いただけますと幸いです。


読んで面白い!と思っていただけましたら、

ブクマもしくは評価をいただけますと幸いです。


どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

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